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ベルドナ王国の王都はベルドナードと言った。
大きな街だが、街全体を囲うような外壁は無い。
近付くにつれ段々と建物が増えていき、いつの間にか街になっている感じだ。
中央付近の貴族や王族が住む区域は壁で囲まれているが、その壁もそんなに高くないし、所々にある門も開いていて、門番は居るけれども誰でもフリーパスで通れるみたいだ。
不用心な感じもするが、途中で通って来た街も大体こんな感じだった。
大体、王都の中心にあるのは『お城』ではなくて、あまり防御力とかはない『宮殿』だそうだ。
何故なら、王都が有るのは平野のど真ん中で、攻められたらひとたまりも無く、元々ここでの籠城戦とかは考えていないらしい。
いざと言うときには、王様たちは山の方にあるお城に立てこもるそうで、ここは平時の政治や経済の中心としての為の街だそうだ。
人の出入りを自由にしているおかげで、この王都は商業的に発展してきたらしい。
私達は大通りを進み、門を一つくぐって、貴族の屋敷が立ち並ぶ辺りに来た。
エドガーさんに書いてもらった地図を頼りに、一軒の屋敷の前に到着した。
それほど大きくはないが、王都の一等地に建っているだけあって、かなり立派に見える。
「気後れしちゃうなあ」
私はそう言って、二の足を踏んでしまう。
他二人はともかく、私は田舎の猟師スタイルで、背中に鍋なんか背負っちゃっている。
「私、外で待ってるから、二人で行って来たら・・・」
リュックから手紙を取り出して、リーナに渡そうとする。
「何言ってんの、てんこちゃんがリーダーみたいなもんでしょ」
そう言って、彼女は受け取らなかった。
え?リーダー?私が?いつの間にそんな事になったの?
「呼び鈴鳴らすよ~」
カレンが門のところにあった呼び鈴を鳴らす。
すぐに門の脇の勝手口みたいなところが開き、見るからに執事って感じの人が出てきた。
「当ベリーフィールド家にどのようなご用件で?」
こうなるともう仕方無いので、覚悟を決めて私が応対する。
「あ、あの、エドガーさんから手紙を預かって来たんですけど」
そう言って、手紙を渡す。
一通目のお母さん宛の手紙には、エドガーさんが気を利かせて、裏面にこれを持ってきた人たちを手厚くもてなせと一文が書いてある。
その筆跡を確認した執事さんは、ちらりと私達を見て顔色を変えずにうやうやしく一礼した。
「ご苦労様でございました。どうぞ中に入ってお待ちください」
そう言われて、屋敷の中に通される。
綺麗なテーブルとソファーが並ぶ応接室に通された。
メイドさんがちゃんとしたティーカップに紅茶を注いで出してくれる。
飲んでみると美味しい。
元の世界で飲んでいたちょっと高いティーバッグくらいの味がする。
こっちの世界の一般庶民用の雑な味に慣れてしまっていたかと気付いて愕然としてしまった。
「お待たせしましたわ」
扉が開いて、シックなドレスに身を包んだ上品そうな女性が現れた。
「エドガーの母のエリシアです。このたびは息子がとてもお世話になったとか、お礼を申し上げます」




