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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
3章
32/215

3-13


 エドガーは自軍に戻ると、軍の上層部に報告と作戦の進言をした。

 彼の作戦に難色を示す幹部もいたが、時間が無いことを強調し、また婚約者の父であるファーレン伯爵が後押ししてくれたため、承認された。

 作戦は単純だ。

 敵の別動隊が背後に現れる前に正面の敵を叩くというものだ。

 その為には別動隊が到着する前に戦端を開かせる必要がある。

 なので、別動隊が現れるであろう地点で、天呼達に偽の合図を打ち上げてもらった。

 敵部隊内で取り決めている合図の種類は分からないが、前回の戦闘で伏兵が現れた時に敵本陣から火魔法が上空に打ち上げられていたという目撃例が有ったので、それと同じものを使用してもらった。

 別の合図に切り替えている可能性もあったが、天呼の打ち上げた魔法に呼応して敵軍が渡河を始めたので、どうやら上手くいった様だ。


 戦端が開かれると、エドガーはすぐさま第三魔法隊を率いて、敵の迎撃に当たった。

 渡河して来る敵めがけて、魔法を放たせる。

 敵も渡河中の攻撃は予測しているので、頭上に盾を構えたり、防御魔法を張ったりしながら川を渡って来た。

 自軍の柵の前まで敵兵が迫ると、魔法隊は下がらせ、分厚い鎧と槍や剣を装備した歩兵隊に代わってもらう。

 以降は魔法隊は援護に回る。

「隊長さん!言われた通りにやってきましたよ!」

 そこへ、私達が合流した。

「ご苦労だった、引き続き敵への攻撃を行ってくれ。リーナ殿は負傷者が居たら回復も頼む」

 そう指示を出す。

 三人で押し寄せてくる敵兵に攻撃を放った。

 私は鍋ヘルメットをかぶり、柵の陰から敵兵に魔法を放つ。

 弓矢で攻撃もできるが、それはカレンの方が強力なので、持っている矢は全部彼女に預けた。

 私の魔石は使い切ってしまったので、今は連射は出来ない。

 なるべく味方の援護になるように3点バーストで敵兵を撃つ。

 威力が弱いので牽制にしかならないけれど、今日はもう十分働いたからいいよね?


 暫く自軍の柵の前で、敵兵との戦闘が行われた。

 川沿いに細長く敷かれた防衛線はどこも突破されることなく敵の攻撃を受け止めている。

 このまま、膠着状態が続くかと思われたが、川向こうの敵陣から銅鑼の音が響いた。

 攻撃開始の時の合図とは違う。

 その音を聞いて、敵兵は一斉に川の向こうの自陣に撤退し始めた。

 こちらの背後に別動隊がまだ来ていないことに気付いたみたいだ。

 それとも、別動隊からの伝令が届いたか?

 どちらにしろ、さっき私が打ち上げたのが偽報だとバレたっぽい。

 逃げていく敵兵を見て、私を含め味方達は胸を撫で下ろす。

 しかし、

「このまま敵を追撃するぞ!」

 エドガーさんがそう号令を出す。

 味方の兵士達がざわめいた。

 逃げていく敵をわざわざ追わなくてもいいんじゃね?と言う雰囲気だ。

「敵の別動隊が後方から迫りつつある!このままでは我々は挟み撃ちにあってしまう!」

 隊長のその言葉に、味方の顔色が変わった。

 物は言いようだな。

 私達が見た別動隊の数は200人程度だった。

 味方は一万人は居るから、奇襲されないように幾らかそっち方面に回せば何とかならないことも無い。

 しかしそれでは、また膠着状態になるだけだ。

 ここで一気に勝負を付けようと思ったら正面の敵を撃破するしかない。

 なので、あえて敵別動隊の数を言わず、挟み撃ちになるという事実だけを伝え、味方に危機感を持たせたのだろう。

 緒戦で一度敵の伏兵にコテンパンにされた人たちには、エドガーさんのこの言葉はテキメンに効いた。

 やらなければやられると言う恐怖心と覚悟が湧く。

「行くぞ!付いて来い!」

 隊長のその言葉に続いて、味方は逃げる敵めがけて走り始める。

 他の分隊の隊長たちにも作戦は伝わっているらしく、全軍が追撃を始めた。

 

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