表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
3章
27/215

3-8


 軍の野営地から少し離れた森の中を私とリーナとカレン、それとエドガーさんが歩いている。

 荷物運びに男の人をお願いしたのだが、何故か隊長さんがそのまま来た。

 狩猟のスキルが有る私が先頭で弓を持って歩いているが、カレンも弓矢を装備している。

 夕べお互いのスキルを紹介し合ったが、彼女のスキルは、


秋元可憐

 弓術:7

 風魔法:7

 水魔法:3

 治癒魔法:2

 短剣術:3

 料理:3


 狩猟:2

 解体:1

 野草採取:2


 と言っていた。

 それを聞いたリーナが、

「あ、なるほど、弓術と風魔法を組み合わせれば、矢の威力を風で強くしたり、軌道をコントロールしたりできるんだ、画期的じゃん」

 そう言った。

「そう思うじゃん、ところが、この世界じゃ弓矢に風魔法を組み合わせるのなんて常識みたいなもんで、風魔法が使える人は大体やってるそうなんだ」

 そうか、ここは元から魔法が有る世界だから、私らが考えるような事は既にやってるのか。

「まあ、両方レベル7で取ったから、そこそこ強いらしくて、周りからは一目置かれてるけどね」

 そう、カレンは言っていた。

 彼女の弓は私のとは違い結構立派で、中央付近に魔石が嵌め込まれている。

 この魔石で強力な魔法を撃ったりするのだろう。

 部隊に配属されたとき、私とリーナも一個ずつ魔石を貰った。

 低レベルの攻撃魔法しか使えない私は必要ないんだけど、報酬の前渡しも兼ねているらしいので、とりあえず持っている。


「ところで、隊長さん・・・」

 私は森の中を歩きながら、後ろに聞いた。

「今更ですけど、敵と睨み合っているのにこんなことしてていいんですか?」

 実は私達だけじゃなく、他にも猟師の経験がある人何人かが狩りに出ている。

 軍全体からすれば少ない数だが、臨戦態勢なのに他の事に人を割くのはどうなんだろう?

 いつ敵が川を渡って攻めて来ないとも限らない。

「ああ、その事だけど、上層部は敵の侵攻は三日後以降だと見ているんだ」

 エドガーさんがそう話し始める。

 どうやら、敵ワーリン王国軍は緒戦で我が国の軍を破った後、部隊を大まかに三つに分けて、食料を略奪しながら進んで来たらしい。

 本来の目的がそれなのだから、当然だ。

 それで今、川の向こうに居るのは三つの内の二部隊分だそうだ。

「斥候によると、最後の一部隊がここに到着するのが三日後と見られている。敵は全軍合流した後、侵攻してくるだろう。それまではまだ猶予がある」

「相手の数が少ないうちにこちらから攻撃しないんですか?」 

 私がそう聞く。

 到着した時に見たが、自軍の方が敵より幾らか多く見えた。

「それは難しいだろう。緒戦で負けてしまったので、我が軍の士気は低い。それに川を渡って攻め込むより、逆に迎え撃つ方が有利なのだ」

「なるほど、敵が揃うまでに、こちらの士気を回復して、同時に少しでも多くの兵隊さんを国内から集めているという事ですね」

「うむ、そういう事だ」

「あと、敵がこれまでに略奪した食料で満足して、このまま帰ってしまうというのはないですか?」

「それは無いだろうな、国境がきな臭くなってから、国境からここまでの村々には早めに麦を刈って持てる限りの食料を持って、山奥か向こうのフラウの街まで避難する様に通達している。なので、敵は十分な食料は手に入れていないはずだ」

 フラウの街はここに到着する一つ前の街だった。

「という事は、敵としては最低でもその街までは侵攻したいと・・・」

「そういう事だ。しかし君、ただの猟師にしては中々戦略眼が有るね」

 エドガーさんがそう言う。

 しまった。

 父親の影響で戦国時代とかの歴史上の戦に興味があったもんだから、ついつい話し込んじゃった。

 気付けば、リーナとカレンは話に加わっていない。

 二人に私がオタク歴女だとバレてしまう。

 いや、そうじゃない。

 この世界の一般人が普通持ってないような知識を持っているという事がバレると、なんか面倒なことになりそうな気がする。

「え、えーと、私たちが居た国ではこれくらい普通でしたよ。いや、全員が戦略に詳しい訳ではなくて、それぞれ趣味で自分の好きなことを学べるというか・・・」

 何とか誤魔化さなくては。

「ふむ、面白い国だね」

 あれ、逆に興味を引いちゃった?

 そうだ、話題を変えよう。

「そう言えば、昨日私の魔法を見て何か言いかけてましたけど、アレって何だったんでしょう?」

「ああ、アレか・・・」

 よし、話が変わったか。

「あの時、火魔法の後にすぐさま水魔法を撃っていただろう。中々器用だと思ってね」

 器用?

「え?普通出来ないんですか?」

「そうだな、魔法の発動にはある程度精神集中する時間が必要だから、あんなに短い間隔で発動できるのは珍しいと思ってね」

「あ、あれ、コツが有るんですよ。普通魔法を使うときは体内の魔素を呼び水にして大気中や魔石の魔素に働きかけるでしょう。私の場合二発目の魔法は体内からじゃなく一発目の魔法の残り火みたいなのを呼び水にしてるんです。だからすぐに次が撃てるんです」

 これで理解してもらえただろうか?

 熊のモンスターを相手にした時もこの要領で水魔法と土魔法を連続で使えた。

 あの時は何となくで使ってたけど、理屈にするとこんな感じだ。

「なるほど、その理論は聞いたことが有る。王都の魔法学院の教授からだったか。しかし、理論上はそうだが制御が難しく実際に使える人は数えるほどしかいないとも言っていたが」

「そ、そうなんですか」

 話をそらしたつもりが別の地雷を踏んだか?

「でもほら、私、低レベルの魔法しか使えませんし・・・」

 そう私がシドモドしていると、リーナが助け舟を出してくれた。

「ところで、エドガーさんとカレンちゃんは付き合っているんですか?」

 ぶはっ!!

 隊長さんと秋元さんが同時に噴き出す。

「つ、付き合ってなどいない!」

「リーナちゃん!なんでそうなるの?」

 二人が大声を出す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ