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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
3章
25/215

3-6


 秋元可憐。

 彼女も元クラスメイトで転生者だ。

 確かバスケ部に入ってた女子だ。

 ジミ眼鏡のくせに無駄に背の高かった私に一緒にバスケ部に入らないかと聞いてきたことが有ったので覚えている。もちろん断ったけど。

 夏木梨衣奈とは同じ中学だったはずだ。

「あ~、カレン殿の知り合いかな?」

 例の隊長さんが聞いてきた。

 どうやら、隊長さんと秋元さんは知り合いらしい。

「あ、はい。えーと・・・」

「同じ遠くの国からやってきた仲間です」

 私がリーナを村の人に紹介した時と同じ説明をする。

「そうなのか、それじゃあ、カレン殿にはこの二人の案内を頼む。他の者も全員合格だ、第三魔法隊の野営地はあそこだから、今日はそこで休んでくれ」

 隊長さんがそう言って一旦解散になる。

 隊長さんがさっきなんか言いかけたのは、うやむやになってしまった。

 別に大したことではなかったのかな?


「久しぶり、リーナ。それで、えーと、そちらは?」

 秋元さんがそう言う。

 やっぱり眼鏡が無いからか私のことは分からないみたいだ。

 クラスで私が存在感を消してたってのもあるのかもしれないが。

「てんこちゃんよ、覚えてない?」

「春日部天呼です」

 改めて自己紹介する。

「ああ、春日部さん。二人はこっちに来てからずっと一緒だったの?」

 そう聞いてくる。

「んーん、色々あってね、カレンちゃんは一人?」

「あー、私も色々あったんだけど、とりあえず後で話すわ。今ちょうど晩御飯の時間だから、貰いに行こう」

 そう言って、炊き出しの列に並ぶ。

「基本ここの食事は麦のお粥でね、あんまり美味しくは無いんだけど量だけはいっぱい食べれるから。あ、食器は持ってる?」

 もちろん、ここに来るまでにも同じように食事をしてきたので、自前のお椀やスプーンなどは持っている。

「たまに、麦だけじゃなくてお肉か豆なんかも入ってることがあるんだけど・・・、あ~、今日は麦だけか」

 秋元さんが、炊き出しの鍋を覗き込んで、そう言う。

 私とリーナは顔を見合わせた。

「それじゃ、てんこちゃん、あれにしようよ」

「そうだね」

「あれ?」

 秋元さんが聞き返す。 

「とりあえず、三人分まとめてこの鍋に入れてもらおう」

 私は、背負っていた鍋を下して、そう言った。


 土魔法で地面を竈状に変形させ、その上に貰った麦粥が入った鍋を置く。

 リュックの中からここに来るまでに大分減ったお肉の塊を出し、ナイフで削り取って鍋に投入する。

 麦粥は粉にしていない粒のままの麦を水と塩で茹でたもので、少し味見してみたら、ちょっと塩気がきつい感じがした。

 リーナに水魔法で水を足してもらう。

 川がすぐ近くにあるが、対岸には敵が陣取っているので近づくのは危ないそうだ。

 竈の中に火魔法で長時間持続する火を入れる。

 鍋が煮立ってきたら保存用に乾燥させた野菜とスパイスを混ぜたものを入れる。

 それぞれのお椀によそったら、最後にバターを一欠け加えて完成だ。

「いい匂い、お肉なんて久しぶりだわ」

 そう言って、秋元さん、いやカレンは食べ始める。

 私だけ秋元さん呼びもアレなんで、カレンと呼ぶことにした。

「うん、美味しい、これ何のお肉?」

「鹿」

「へえ、鹿かあ、初めて食べるけど、美味しいね」

「ふっふっふ、ただの鹿肉だけじゃここまで美味しくならないのよ」

 何故か不敵に笑って、リーナはそう言う。

「これ、野生の鹿肉だから脂身が少なくって、そのままじゃ物足りないのね、だからバターを入れて油分を足してるの」

「へえ、だからしっかりと食べ応えが有るんだ」

「あとこのスパイス、色々研究してここらへんでも安く手に入るものをうまくミックスしてあるんだ」

「あと、乾燥したのを戻してあるけど、この野菜もいいね。ここで野営し始めた頃はそこら辺に生えてる食べられる草とか入れてたけど、今はもう採り尽くしちゃってるから」

 そう言いながら、カレンは肉入りの麦粥を頬張る。

「私たちがここに来るまでの間も支給されるのは麦と塩だけだったからね、途中でいろいろ美味しくなる様に工夫したんだ」

 そう言って、リーナは胸を張る。

「て言うか、リーナってこんなに料理上手かったっけ?」

「ははははは、もちろん、てんこちゃんがほとんど考えたんだけど」

「なんで、あんたが胸を張るのよ」

 そうやってみんなで笑い合いながら食事をとった。

 

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