表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
2章
16/215

2-6

 

 翌日、朝食をとり、宿屋を出る。

 家に戻るまえに、少し街を見物をして行こう。

 夜までに戻るにしても時間の余裕はある。

 昨日の革細工屋さんがあった区画が、他のお店とか集まった商店街になっている。

 昨日は時間が無くてあまり見て回れなかったから、今日はその分いろいろと見て行こう。

 八百屋や精肉店などの品揃えは、量は多いものの村の雑貨屋さんや農家の人たちと物々交換している品とあまり代わり映えはしない。

 ただ、乳製品は村で作られているヤギ乳の物だけじゃなく、牛乳で作った物も売られていた。

 ヤギ乳も嫌いではないが、せっかくなので牛乳のチーズとバターを買っていく。

 他には瀬戸物屋さん、ガラス製品屋さん、木工品屋さん、金物屋さんなどがある。

 特に買い足すものは無いが、見て回るだけで楽しい。

 後は、服屋さんに寄った。

 村の雑貨屋さんにも服は幾らか売られていたが、圧倒的に種類が少なかった。

 神様製の服一着だけだとお洗濯も出来ないので、予備の服を一揃いと下着を幾らか買ってあるが、あんまりお洒落じゃなかった。

 まあ、お洒落とは無縁のジミ系女子だったけど、流石に無地のダボッとした麻製のシャツとズボンって言うのはね。

 お店は高級店とかではなく庶民向けらしく、半分古着で残りが新品を扱っている。

 昨日買い取ってもらった革の代金でお金に余裕はあるので、ここは新品を何着か買う。

 店の奥まったところに下着も売っていたので、ついでにそれも。

 革の代金の半分以上を使っただろうか、結構な散財だが、満足できる買い物だった。

 この世界に来て以来、ほとんど物々交換でやってきていたので、実は神様から貰ったお金は少ししか減っていない。

 ほくほく顔でお店を出る。

 そろそろいい時間なので、家に戻ろうか。


 街を出て街道を進み、村への分かれ道のところまでやってきた。

 ここで村と街の中間位だ。

 この辺で休憩して、お昼ご飯にしようか。

 移動するときには非常食としていつも持ち歩いている少量の燻製肉と街で買ってきたパン、それとチーズを少し食べようかと考える。

 分かれ道のところには大きな木が一本生えているので、そこの木陰で休もうかと見ると、根元に一人先客が居ることに気付いた。

 と言うか、俯き加減に座り込んでいて、動かない。

 うえっ、もしかして行き倒れかな?

 近づいてみると、女の人だというのが分かった。

 一応呼吸はしているらしく、お亡くなりになっている訳ではなさそうだ。

 どうしよう、助けるべきか?

 漫画の主人公とかなら迷わず助けるのだろうけど、私はそうじゃない。

 冷淡だとか利己的だとか思うかもしれないが、ジョージさん一家みたいに知り合いとかならともかく、赤の他人とは積極的に関わり合いたくはない。

 死んでるわけではないし、へたり込んでるけど少しすれば治るかもしれないし、声を掛けるのは余計なお世話かもしれないし、と言う考えが頭の中をグルグルする。

 ふと、ある事に気付いた。

 違和感?・・・ではない、逆に親近感?

 雰囲気がこの世界の人とは違う気がする。

 そう、私が元居た日本の人のような匂いがする。

「もしかして、あなたも転生者?」

 私の声に、その人も顔を上げてこちらを見た。

「え?誰?」

 彼女も私を見て同じような感想を持ったようだが、クラスのジミ眼鏡だった私のことを思い出せないようだ。

 かく言う私も、見覚えはあるのだが彼女の名前が出て来ない。

「ええと、てんこです。春日部天呼」

「ああ、春日部さん。眼鏡かけてないから分からなかった」

 そうか、今眼鏡してないもんね。

「お久しぶりね、私は夏木梨衣菜」

 彼女はそう名乗った。


 思い出した。

 夏木梨衣菜は私とは正反対で、明るくてクラスの女子の中心にいるような子だった。

 あまり話したことはないし、もちろん友達ではない。

「それで、夏木さん、何でこんな所に?」

 そう聞くと、

「それが、向こうの街に行こうとしてたんだけど、ここでお腹空いて動けなくなって・・・」

 弱弱しく、またへたり込んだ。

 私はリュックの中から、干し肉とパンを取り出した。

 チーズの塊から、一食分くらいをナイフで切り出す。

 友達ではないと言え、流石に元クラスメイトを放って置くわけにはいかない。

「どうぞ」

「あ、ありがと」

 そう言って、彼女は受け取った。

 水が入った水筒も差し出す。

 私も隣に座って、昼食にとることにした。

 夏木さんはパンとチーズを一口ずつ食べ、水を飲んだところでようやく落ち着いて、ゆっくりと自分のことを話し出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ