はさみ
つい最近、俺はいいことをした。
頭のわっかを落として困っていた、ちびっ子天使を助けたのである。
腹が減ったので、コンビニに行った時だ。
裸のちびっ子が真夜中にひーひー泣いてたから、何事かと思って駆け寄ったんだよ。
何でも、真心を分けてもらえないと、わっかは再び頭の上に乗っからないらしい。
なんだそれは。
よー分からん理屈だな。
そう思った俺だけど、ちょっとだけ面白そうな気がしてね、真心を分けたのさ。
ありがとうといって泣き止んだ天使は、天に帰っていった。
ふと足元を見ると、はさみが一本落ちている。
はさみなんざいらねえよって思ったんだけどさ。
なんかに使えるかもって思ってさ、持ち帰ったんだよ。
次の日からおどろいたね!!
なんか変なひもが見えるようになってんの。
赤いの黄色いの青いの緑色の。
このはさみ、天使の落し物だ!
すげえもん手に入ったぞ!!
テンションの上がった俺は天使のはさみでジョキジョキ切りまくった。
ふとみると、俺の足元に、透明なチューブ?
なんじゃこれ。
じょっきんと切ってやったら、目の前に天使がきた。
「すみません、はさみ返して下さい。」
「これは俺がもらったものだから、もう俺のだね。」
「じゃあ何かと交換して下さい。」
「あんたの命と交換してやるよ。」
「了解しました。」
天使がひざまずくと、俺の周りに光があふれて・・・あれ・・・・
「あなた自分の運命切っちゃったんですよ。」
「運命のなくなった人は存在できなくなっちゃうんですよね。」
「私の命をもらったところで、運命がないですから。」
「ただ漂うことしかできなくなっちゃいましたね。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「天使の命は限りがないもの。貴方は永遠に漂うだけの存在になったのです。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「はさみは返してもらいましたか。」
「はい、この通り。お返しします。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「おや、命がなくなっていますね、どうしたんですか。」
「この存在が、はさみと交換を望んだので差し出しました。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「それでは、貴方は生まれなければなりませんね。」
「ええ、お世話になりました。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「けれど、この存在がしでかした不始末を片付けなければいけませんね。」
「まだ生まれることができないということですか。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「真心がわずかしかない人から根こそぎ真心を奪った貴方の責任は重いのです。」
「見抜けなかった私が馬鹿でした、すみません。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
「真心のない存在が躊躇することなくぶった切った縁をすべてつなぎなおすまで生まれることは許されませんよ。」
「わかりました…。がんばります。」
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。
俺はふわりふわりと、ただ漂うばかり。




