かぐやルート18
陽が沈む前に目を覚ました俺とさくらちゃんは一度だけキスをして別れた。
そして俺は自分家の扉を開ける。
「あ、おかえり」
「ただいま~」
麻衣と玄関でばったりと会う。
「もう大丈夫?」
「ん? ああ、さくらちゃんは大丈夫だよ」
「それもそうだけど、お姉ちゃんの方だよ」
見詰めてくる不安げな瞳。
いつも麻衣に心配かけてるな、俺。
……正直に話そう。
これからは麻衣にも危険が及ぶかもしれないし。
「一年生の二階堂 天って知ってる?」
「ん? 知ってるけど。有名人だし……悪い意味で」
悪い意味?
「何かしたの?」
「え~とね、噂だよ? あくまで噂なんだけど」
私が言ったんじゃないよ、と前置きをしておいて、麻衣は天について語る。
「泥棒猫って言えば良いのかな?」
「泥棒猫って。他の人の彼氏と付き合ったりしてるってこと?」
「うん。そんな感じ。彼女がいる人を好きにさせて、自分に乗り換えたら、二階堂さんはその人をフルの。それを何度も繰り返している」
「それはなんて言うか、質が悪いな」
簡単に乗り換える男もそうだが、それ以上に天は酷いことをしているようだ。
ていうか、そんなにモテるんだな。
やっぱり『さつかそ』のヒロインの一人だからか?
さくらちゃんもかぐやも学校では人気者だから、天もそうなのかもしれない。
だとしてもやり方がなー。
「結構な恨みを買ってるんじゃないの?」
「それがそうでもないの。フラれた彼氏も、別れさせられた彼女の方も"二階堂さんだから仕方ない"って。そんなこと普通あり得る?」
「いやー無理があるだろう」
明らかに悪いことをしているのに誰も咎めないなんておかしい。
だからこそ思いつくのは天の瞳の能力。
相島 立花の《絆の結晶》を奪った力が関係している気がしてならない。
「二階堂にはあまり近付かない方が良いよ」
俺が注意すると、麻衣からとても深い溜め息が返ってくる。
「近付かないよ。あの子とは気が合わなそうだし」
真面目な麻衣からしたら天は毛嫌いの対象になるのだろう。
「それならそれで良いよ。だけど一つ気を付けて欲しい」
「何を?」
「詳しくは私も分からない。だけど、さくらちゃんのときと同じことが麻衣にも起こるかもしれない」
「さく姉のときの?」
始めは何のことか分からず小首を傾げていたが、思い出したのか表情がハッとする。
「お姉ちゃんが倒れたのって、二階堂さんがさく姉みたいな現象を起こしたからってこと?」
「その可能性が高い」
「アイツ……!」
俺が頷くと麻衣の瞳がつり上がる。
しまった!
これだと麻衣が怒りのあまり天に接触しかねない。
「麻衣、お姉ちゃんと約束して。二階堂には近付かない。声をかけられても絶対に目を合わせない。良いね?」
「でも!?」
「良・い・ね?」
麻衣に念を押して釘を刺す。
そうでもないと今度は麻衣が傷つく。
そんなの俺が堪えれない。
「分かったよ。だけど、お姉ちゃんが傷ついて悲しくなるのは私も同じだから、忘れないで」
「ありがとう、麻衣」
「二人ともいつまで玄関にいるのー?」
「「今行くッ!」」
母さんに呼ばれたので俺と麻衣はリビングで過ごした。




