かぐやルート13
さくらちゃんを慰めて二人で校門に向かう。
「ん?」
この音。
「どうしたの?」
「え? ああ、ピアノの音が」
そう。
ピアノだ。
ピアノの旋律なんて久し振りに聞いた気がする。
「八重橋さんかな? ピアノのコンクールがあるはずだから」
かぐやの演奏?
「あッ!」
脳内に『さつかそ』をプレイしてたときの記憶が蘇る。
そうだ。
かぐやはピアノが上手かった。
そして『さつかそ』のオープニングでかぐやはピアノを弾いているのだ。
ぶっちゃけ名曲であり、俺がギャルゲーを始める切っ掛けにもなった。
だけど今弾いている曲は何か分からない。
コンクール用の課題曲か何かだろう。
普通に考えてギャルゲーの曲なんて弾くわけがない。
でも、あの懐かしい思い出の曲を
「いつか聴けたらな~」
「ん? 聴きに行く? 確か第二音楽室の方だったと思うよ。ほら、小さい方の音楽室」
「いや良いよ。邪魔しちゃ悪いし」
それに俺に付いた香水の匂いの原因はおそらくかぐやだし。
さくらちゃんにバレたらまた泣かせてしまう。
「ほら、帰ろう?」
「うん」
さくらちゃんが俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
「相島先輩!」
声をかけられて振り返る。
そこに居たのは、にっこりと笑う天。
「落とし物ですよ」
差し出された手には白いハンカチ。
でも、俺のじゃない。
「私のじゃーー!?」
右目を閉じた天の瞳に刻まれた三本爪のマーク。
それを見た瞬間、背筋が凍った。
胸に激痛が奔る。
心臓を抉り取られたと思ってしまうほどだ。
「ーーちゃん? りっちゃん!?」
「!?」
身体を揺り動かされて飛びそうになった意識をなんとか捕まえる。
「大丈夫ですか!?」
倒れそうになっていた俺の身体を支えてくれていたのは、さくらちゃんと"天"。
「私に、何を?」
まだ心臓が暴れている。
呼吸が……苦しい。
「どうしたの、りっちゃん? まさか私の力が……!?」
俺が胸を押さえたので、さくらちゃんが勘違いしてしまった。
誤解を解かないと。
「大丈夫、さくらちゃん。ちょっと胸が痛んだだけだから」
「でも汗が凄いよ?」
「大丈夫、だから。少し休めば」
天から早く離れないと、さくらちゃんにも危害が。
「なら保健室行きましょう! まだ先生が居るかも!」
天の提案で俺は二人に支えられながら歩き出した。




