かぐやルート11
「はあ……結局来ちまった」
昼休み。
俺は食堂の一角に設えられた、かぐやの"VIPルーム"の席に着いていた。
というより着かされていた。
俺をジッ~と睨んでくる黒服たちによって。
「良く来たわね!」
正面の席では、かぐやがにんまりと嬉しそうに笑う。
「正確には来ようとしたら拉致られたんだよ!?」
「来ようとしてくれてたんなら別に良いじゃない?」
「良くねーわ!? 何処に連れてかれるか肝が冷えたんだぞ!」
「うるさいわね。ほら、お昼にしましょ」
「ないよ」
「……はい?」
かぐやは小首を傾げる。
「何が?」
「弁当」
「は? 何でよ?」
「だーかーらー。八重橋さんのところの人たちが急に連れてきたから忘れたのッ!!」
「準備くらいしときなさいよ!? 手紙出したでしょ!?」
「あれは果たし状だ!」
やんや、やんやと結局言い合いになってしまう。
このままでは昼休みが消えてしまう。
俺は溜め息を吐いて立ち上がる。
「何処に行くのよ?」
「弁当取ってくるの。一緒に食べるんでしょ?」
「別に良いわよ。うちのシェフに作らせるから」
かぐやが傍に立っていた黒服に専属シェフを呼ばせようとしたので俺は止める。
「良いよ。母さんが作ってくれたのが勿体ない」
「母さん……ね」
シュンと明らかに落ち込み出す。
不思議に思ったが、彼女の生い立ちを思い出して納得する。
「そうよね。普通の家にはシェフなんて居なくて、母親が毎日早起きして作ってくれるのよね」
かぐやにはフランス人の母親が"居た"。
元々病弱だったらしく、彼女が幼い頃に亡くなった。
これは『さつかそ』でも明らかにされていた。
裕福で皆が憧れるような広い家。
数多くの使用人たちに囲まれたお嬢様。
だけど父親は仕事ばかりで帰ってこない。
友達は多いが、彼女自身が高嶺の花のせいで深い関係を築ける親友と呼べる存在がいない。
だからこそ『さつかそ』のかぐやは平々凡々な主人公に惹かれて好意を抱くようになる。
だから、ごめん。
俺は主人公じゃないから君の心を癒せない。
でも、放ってはおけないのは彼女がヒロインだからか?
『さつかそ』のヒロインたちには幸せであってほしい。
それが『さつかそ』を愛した俺の願いでもある。
だけどどうしたら?
さくらちゃんのときは結局、主人公らしい奴は居なかったし。
………………ん?
なら、かぐやが誰かを好きになるように俺が彼女の背中を押せば良いのでは?
そう!
かぐやが平々凡々な奴を好きになれば良いんだ!
そうすればソイツが主人公だ!
主人公が居ないなら無理矢理作ってしまえば良い。
俺は席に戻る。
「どうしたの?」
「いや~、たまには八重橋さん家の料理も食べてみたいな~って。お弁当はあとでも食べられるし」
「あら、そう? じゃあ呼ぶわね」
「ねえ、八重橋さん」
「何?」
「好きな人って居るの?」




