かぐやルート9
「す、凄かったね」
「八重橋さんはいつもあんな感じだよ」
ぐったりとした身体で教室のスライドドアを開ける俺と苦笑するさくらちゃん。
どうして俺たちが疲れているかというと、登校した途端に数多くの生徒たちがかぐやを取り囲んだのだ。
かぐやが八重橋重工の娘ということもあるが、実は彼女のファンクラブも存在するほど学校では人気者なのだ。
この世界ではツンデレ至上主義なんだろう。
ということで俺たちはそこから避けようとしたのだが、かぐやがライバル視している相島 立花こと俺と、学校でもう一人の人気者であるさくらちゃんが一緒に登校するもんだから大騒ぎ。
チャイムギリギリまで質問攻めにあっていた。
「はあ。俺の優雅な朝が~」
ガックシと席に着く俺。
仕方ない。
今日は一時間目にラノベを読むか。
「相島 立花」
「うおッ!? ビックリした!」
いつの間にかにかぐやが隣に立っていたので飛び上がるほど驚いてしまう。
「この前の仕返しか!?」
「はあ? 何言ってるのよ。声をかけただけでしょ?」
「それでも驚くわ! 何でおまーーじゃなくて八重橋さんがこのクラスに居るの?」
かぐやは隣のクラスなので、うちのクラスに居る理由が分からない。
「教科書貸して。次、ここ数学じゃないでしょ?」
「………………忘れたの?」
かぐやの言う通り、今日の一時間目は数学じゃないし、俺は置き勉しているので全ての教科書を持っている。
だけど、
「隣の席の人と見れば良いんじゃないの?」
「教科書を忘れたなんて恥ずかしいじゃない」
まあ、成績も良くてプライドの高いかぐやからしてみれば教科書を忘れただけでも評価に関わるから嫌なのだろう。
「別に貸すのは良いけど、私じゃなくても良いんじゃ?」
かぐやは人気者なんだからお願いすれば誰でも貸してくれそうだが。
「アンタのじゃないとダメなのよ」
「………………は?」
「借りるわね!」
俺が渡そうとしていた数学の教科書を奪うように持っていってしまうかぐや。
本当に嵐のような奴だな。
それに俺のじゃないとダメってどういうことだ?
まさか落書きとかされないよな?
まあ、彼女の性格からしてそんなことはしないと分かっているが。
しかし、本当に謎の生態だ。
ツンデレ図鑑とかあれば楽なのに。
「………………」
ま、どうでも良いか。
さて、気を取り直して一時間目の準備と今日のラノベをーー
………………ん?
あれ?
うお!?
俺はリュックの中身を全て机の上に並べ、リュックをひっくり返す。
ない。
ないない。
どこにもなーい!?
「マジか。最悪……」
ラノベ持ってくるの忘れた。




