かぐやルート5
金色はやっぱりかぐやだった。
髪を染める奴は数多く居れど、この学校でナチュラルブロンドは彼女しか居ない。
確か、母親がフランス人で彼女はハーフだった覚えがある。
瞳も綺麗に澄んだ水色なので母親譲りなのだろう。
「……?」
それにしても鞄を持っていないから帰らずに何処かに用事か?
このままではドンドン行ってしまう。
声をかけるか。
現状、親しいわけじゃないから名字で良いか。
「八重橋さーん」
「うぎゃああああああッ!?」
「うおおおおッ!?」
肩を跳ねあげた、かぐやに俺まで思わず仰け反ってびっくりした。
「大きな声あげるなよ!」
「アンタが急に声をかけるからでしょ!?」
「それでも、うぎゃあはねえわ。ヒロインだろ!」
「はあ? 何意味分かんないこと言ってるのよ!」
もうやだこいつ。
顔を合わせるとこうなるのかよ!
「それで何の用よ?」
「ん? あーあのな、と。ごほんごほん」
危ない危ない。
感情的になってつい男言葉が。
気を付けないと。
「訊きたいことがあるの」
「訊きたいこと?」
腕を組んで怪訝そうな表情のかぐや。
「昼間に言ってた約束ってなんなの?」
あれからずっと気になってはいたのだが、俺自身は彼女と約束をしていない。
だから直接確認するしかなかった。
だというのに。
「は? 教えるわけないでしょ」
「どうして?」
「あなたにとって、私との約束はそのぐらいのものだったってことでしょ!」
ああ、もう面倒くさい!
「じゃあ私はその約束を果たさないよ?」
「別に良いわよ!」
ふん! と、かぐやはそっぽを向く。
マジでツンデレは苦手だ。
「はい、そうですか。分かりましたよ!」
「……ねえ」
腹をたてた俺が立ち去ろうとしたときに声をかけられる。
「どうして記憶喪失になったの? もしかして事故?」
「……心配してくれてるの?」
「別に。ただ気になっただけ」
そう言いながらも俺のことを案じる表情。
「心因性らしい」
本当は違うけど。
でも、俺が君の知っている相島 立花じゃないとは言えない。
「思い出すの?」
「さあね。私にも分からない」
俺は素っ気なく言う。
あまり詮索されるとボロが出かねない。
「そう……」
一瞬、かぐやが悲しげに笑った気がした。
だが、すぐに仏頂面に戻る。
「話はもう良いわね? アタシは忙しいの」
「はいはい。呼び止めて悪うございましたね」
俺は吐き捨てるように踵返す。
「……記憶、戻ると良いわね」
「何か言った?」
「何でもないわ。じゃあね」
「ああ、また"明日"」
「え?」
驚いた声が聞こえたが俺は気にせず教室へ向かった。




