さくらルートRe42
「う、ん。ん?」
「目覚めましたか?」
俺が目を開けると神様の顔が目の前にあった。
近くで見ると仮面があったとしてもやっぱり美少女だ。
と、いうか。
後頭部が柔らかい。
まさか、今の状態って。
「膝枕してくれてるの?」
「はい。あなたが急に倒れたので」
やっべ。
俺リア充じゃん。
「起きたのならどいてください」
「あ、ご、ごめん」
もうちょい堪能したかったが残念だ。
「それでどういう状況なのですか?」
俺は立ち上がって周りを見る。
神様が居るからか、世界は止まっていた。
そして倒れるいじめっ子と介抱する取り巻きたち。
……彼女たちを殺そうと瞳にハートのマークを刻んだ、さくらちゃん。
俺は、まだ死んでいない。
「神崎 さくらの《絆の結晶》は澱んでいます」
神様がさくらちゃんに手を伸ばすと《絆の結晶》が取り出される。
真珠のような輝きは消え失せ、まるでガラス玉に泥水を注いだようなものに変わっていた。
「私が離れていた間に何をーー」
「さくらちゃんの瞳のこと分かったのか?」
俺は神様の言葉を遮る。
「いえ、強力なエネルギーを秘めたものとしか」
「そうか」
俺は自分の瞳を覆うように触れる。
今、俺には見えている。
さくらちゃんを救うための可能性。
未来を選択出来る力。
「神様。俺が合図したら時間を進めてくれ」
「構いません。ですが、何か策でも?」
「ああ」
俺は熱っぽい瞼を開けた。
《さくらちゃんの前に立つ》
→《さくらちゃんを抱き締める》
「神様!」
「ご武運を」
神様が姿を消すと同時に世界が動き出す。
俺はスタートダッシュを切っている。
さくらちゃんが瞳の力で人を殺しちゃう前にーー
俺が!
「さくらちゃんッ!」
「!?」
さくらちゃんの意識が俺に向いた。
だけど瞳を見るわけにはいかない。
「うおおおおおおおおおおおッ!」
俺は半ばタックルするようにさくらちゃんを抱き締めた。
二人の身体が床から離れ、その床が迫ったので身体を捻る。
「うげッ!」
さくらちゃんが怪我をしないように自分が下敷きになったが、肩を外したかもしれない。
「りっちゃん?」
でも俺の胸にはしっかりとさくらちゃんが居たから良いか。
「どうして邪魔するの? あの人たちを殺さないと私たちはまたッ!」
「さくらちゃん」
俺はさくらちゃんをさらに強く抱き締める。
「痛いよ……」
切なく溢れる言葉。
俺はさくらちゃんと目を合わせる。
「階段から落ちた後ね。私、記憶喪失になってなかったんだよ」
「え?」
さくらちゃんの驚く声。
「記憶を取り戻したの?」
「ちょっとね」
俺は苦笑する。
俺が相島 立花の代わりに伝えないと。
「階段から落ちたときは自分でもビックリした。でもあれはただの事故。私はさくらちゃんを怒ってもないし、恨んでもない」
「嘘ッ! だってりっちゃんは私から離れていって」
「でも、さくらちゃんをいじめから守れた。それで良かった」
「良くないッ!」
俺の身体が震えるほどの声。
「いじめがなくなっても、そこにりっちゃんが居ないなら嫌だよ……」
俺の胸の中で静かに泣き出すさくらちゃん。
「もう離れない。放すもんか。だって私はさくらちゃんが大好きだから」




