さくらルート41
「くそッ! 居ない!」
ぜえぜえと息を切らせた俺は口汚く吐き捨てる。
駅に着いたが、さくらちゃんの姿はない
すでに電車に乗ってしまったとしたらどうにも出来ない。
さくらちゃんは本当に俺たちを置いていってしまったのか?
「!?」
ポケットのスマホが鳴る。
相手は麻衣だ。
『お姉ちゃん居た! アイツ、フードコートエリアで誰かと一緒!』
その言葉で俺の疲れが吹き飛んだ。
足に活がみなぎり、再び駆け出す。
「麻衣はさくらちゃんを捕まえて! 私も向かってる!」
『分かった! ん? アイツらって……』
「どうしたの?」
『見つけた……!』
その時、スマホ越しにでも分かるほどの黒い感情。
『お姉ちゃんをいじめてた奴らだ。生きてることを後悔させてやる!』
通話が切れる。
俺を、いや相島 立花をいじめてた奴がここに居るのか?
それに麻衣の言葉。
様子がおかしい。
止めないと大変なことが起きる。
「フードコートって言ってたよな。でもフードコートは一階と三階にあるぞ? 二階に居た麻衣はどっちでさくらちゃんを見つけたんだ?」
思考が完結するより先にショッピングモールに入る。
三階に上がるより賭けでこのまま一階のフードコートに向かう。
「ねえ、何あれ?」
「喧嘩か?」
「止めた方が良いんじゃあ」
「店の人? いや、警備員か?」
一階のフードコートが騒がしい。
昼の混雑は終わったはずだというのに人も多く集まっている。
俺は人混みを掻き分けてフードコートに入った。
瞬間ーー
「アンタたちが、アンタたちがお姉ちゃんを!!」
麻衣が見知らぬ少女の胸ぐらを掴んでいる。
二人の間には他の見知らぬ少女二人とーーさくらちゃん。
「何やってるんだ、麻衣!」
「お姉ちゃん……!」
俺が声をあげると麻衣が目を丸くして俺を見た。
「離せよ、コイツ!」
相手の少女が麻衣の手を振り払い、突き飛ばす。
「チッ! 何なんだよ。このクソッタレ!」
悪態を吐く少女。
明らかにガラの悪い彼女と取り巻きの二人。
俺は彼女たちを知らない。
だけど目の前が真っ赤になりそうなほどの怒りが身体の底から沸々と沸いてくる。
これは俺じゃない。
魂を亡くしたはずの相島 立花の身体がいじめを記憶しているのか?
怒りの熱さで俺の自我が乗っ取られそうだ。
気を付けないと今にも拳を握りそうになる。
だが、今は二人を助けないと。
「麻衣、大丈夫か?」
「う、うん」
尻餅をついていた麻衣に手を貸す。
「さくらちゃん」
「………………」
さくらちゃんは何も言わない。
俺から顔を逸らすだけだ。
「おい、てめえ」
俺は肩を掴まれて振り向かされる。
「何しやがって……あ?」
少女が目を丸くする。
「相島、か? ははッ!」
俺の顔を見て嘲笑う。
「何だよ、お前。神崎と友達ごっこしてるのか? 裏切られたくせに?」
取り巻きたちもクツクツと嗤い出す。
「画鋲のことだろう? そんなのもう気にしてない」
俺は苛立ちながらも毅然と言い返してやった。
だけどーー
「画鋲?」
少女が首を傾げる。
まさか忘れているのか?
「ああ、あれ。そういえばそんなのあったな」
コイツ、本当に忘れてたのか?
「あれはつまんなかったけど。その後のやつは最高だったよな。な?」
少女の言葉に取り巻きたちも思い出したみたいだ。
「その後って?」
「ああ? 覚えてないのか? ……そういえば、お前。あのときに記憶喪失になったんだっけな」
少女がさくらちゃんを見てニヤリと嗤う。
「なあんだ。神崎は話してないんだ」
「!?」
さくらちゃんがびくりと肩を跳ねあげる。
「仕方ないから教えてやるよ」
少女が俺の胸ぐらを掴む。
まるでこれから言うことから俺が逃げられないようにしている。
「お前の靴に画鋲を入れた後にな。お前、階段から落ちただろ? あれは、なーー」




