さくらルート37
「……ごめんなさい」
肩を落として謝る麻衣。
俺は苦笑する。頬がヒリヒリして痛い。
鏡を見たら立派な赤い紅葉が出来てるだろう。
「いや、あれは私が悪いよ。二人っきりだったとはいえ、お店の中だし」
「でも、思わず叩いちゃった」
麻衣は自分が手を出してしまったことを気にしているようだ。
「二人は悪くないよ! 私が、りっちゃんを誘ったから」
さくらちゃんも落ち込んでしまった。
この空気は苦手だ。
「キスしたのは私でしょ? さくらちゃんも気にしないで。それよりほら! 何買う?」
俺たちは映画館の売店の列に並んだ。
やはり映画を見るときはお供に何か買っておかないと。
何が良いかな。
王道のポップコーンか?
ホットドックも俺は好きだな。
飲み物は一番デカイサイズで。
お昼を食べたのでお腹が空いていないというのに列に並んだだけで俺は何を注文しようかとわくわくしていた。
「お姉ちゃん楽しそうだね」
「うん! 楽しくないわけないじゃん。だって仲良く映画なんて滅多に出来ないことだし」
俺はかなりの出不精で見たい映画があっても行かないでブルーレイが出るのを待つ人間だったが、機会があれば映画は楽しみたい。
好きな人たちと見るなら尚更だ。
店員が俺たちを呼ぶので早速注文して三人とも飲み物と自分好みのフレーバーのポップコーンが載せられたトレーを持って開場を待つ。
『間もなく『青い春に去る君へ』の上映を開始します。ご視聴の方はチケットを持って入場口の方へお越しください』
映画が始まる十分前に館内放送が流れた。
いよいよだ。
「わわわ!?」
さくらちゃんのトレーがぐらつく。
俺は咄嗟に支えた。
「ご、ごめんね。スマホを出そうとしたら片手じゃ出来なくて」
「じゃあ私が持ってるよ」
「良いの? じゃあお願い」
俺はさくらちゃんのトレーも持つ。さくらちゃんも無事にスマホを取り出せて画面をタップしていく。入場口に着いたらそこでスタッフにスマホの画面を見せて無事に入れた。
「ありがとう、りっちゃん」
俺はさくらちゃんにトレーを返す。
そのまま映画の広告が光る真っ黒な通路を進む
「へえ、良い席じゃん」
先に会場について席に向かっていた麻衣。
人によって意見が別れるかもしれないが俺たちの席は真ん中より少し上の席。
確かに良い席だった。予約してくれたさくらちゃんには感謝だ。
席について小声で雑談していると流れ続けていた宣伝が終わる。
一度映画館は真っ暗になる。
いよいよだ、というときに肘置きの俺の手にさくらちゃんの手が重なる。
「大好き」
囁く声と頬に柔らかい感触。
「え!? さくらちゃん今のーー」
「お姉ちゃん、静かに!」
麻衣に小声で怒られてしまった。
隣でクスリと笑われる。
さくらちゃんめ。
あとでいっぱいイチャイチャしてやる。




