さくらルート36
キスまで秒読み。
二人っきりになると俺を、相島 立花を求めてくる、さくらちゃんは狂おしくなるほど可愛い。
「……あれ?」
いつまで待っても口づけは来なかった。
目を開けると目を閉じたまま固まって動かないさくらちゃん。
いや、世界の時が止まっている。
「神様?」
さくらちゃんに捕まっているので首を回すと俺の隣に神様が居た。
「何かあったの?」
「今、神崎 さくらから妙な力を感じました」
「妙な力?」
俺は意味も分からずに言葉を返す。
「あなたたちが目を合わせたときです。彼女の瞳で何かが起きたみたいです。何か気付きませんか?」
さくらちゃんの瞳に何かおかしいところがあったか?
あー。
強いて言えば。
「ハート目になったね。目の虹彩にハートのマークが。でもこれってゲームだとよくあるやつでしょ? すごく好きだ! って表現のときに」
「また遊戯ですか? 普通の人間には起こるのですか?」
「いや、起こらないけど。でもこれ二次元だし」
俺がハート目について説明するが神様は怪訝そうな表情をする。
「……少し調べてきます。神崎 さくらには特殊な力があるかもしれません。お気をつけて」
それだけ言い残すと神様は消えた。
神様が言ってた言葉。
特殊な力って異能力ってことか?
ギャルゲーにはよくあるSF設定だけど、『さつかそ』には異能力でバトルとか、大きな事件に巻き込まれる話なんてない。いたってノーマルな学園モノだぞ?
何故そんなのが……?
相島 立花(俺)の存在でゲームに歪みが出てるのか?
そういえば『さつかそ』でヒロインたちを攻略する主人公はいつになったら現れるんだ?
俺のこんがらがっていく思考と共に世界が動き出す。
「………………」
神様と話をしたせいか、俺は冷静になっていた。
「さくらちゃん、さすがにここは恥ずかしいから、ね?」
「え? そ、そうだよね。あはは」
苦笑するさくらちゃん。彼女を落ち込ませてしまったが、節度は守らないと。
ここで痴女ルートは困る。ベットの上とかなら……なに妄想してんだ俺。
俺の首から腕が離れる。
俺は逆に軽くハグをする。
「私もさくらちゃんとイチャイチャしたいから。好きだよ」
「うん。私も」
さくらちゃんのおでこに口づけ。
我ながら恥ずかしいが、今の俺にはこれが限界だ。
「二人とも遅いよ。何やってーー」
「へ?」
「あ……」
突然、試着室のカーテンが開かれると麻衣だった。
三人全員が呆ける。
ていうか麻衣にキスを見られてしまった。
「なッなななな!?」
あ、これ怒られるやつだ。
どうにか弁明を。
「麻衣、落ち着いて聞いてくれ。別にやましいことはーー」
「お姉ちゃんの変態ッ!」
バチーン! という音が俺の鼓膜を揺るがせた。




