さくらルート31
「さくらちゃん、ホントごめん!」
家から最寄りの駅のホーム。
待ちに待ったさくらちゃんとのデートの朝は、謝罪から始まった。
「良いよ。気にしないで」
笑って許してくれるさくらちゃん、マジ天使。
「ほら、麻衣も」
「………………」
謝罪の原因である麻衣は俺たちに背を向けてムスッとしている。
さくらちゃんと二人きりのデートのはずだったのだが、麻衣が一緒に行くと譲らなかったのだ。
どうやら俺とさくらちゃんが一緒に出掛けるのを良く思っていないみたいだ。
俺は嘆息する。
二人の仲がこうでは今日のデートはどうなるやら。
「?」
何かが手に触れた。
見ると、さくらちゃんの手が俺の側にあった。
さくらちゃんはそわそわしている。
もしかして手を繋ごうとしているのだろうか?
でもいつもだったらさくらちゃんの方から繋いでくれるのに。
………………。
麻衣が居るからか。
相島 立花との関係が良好になったとはいえ、さくらちゃんの方も麻衣には負い目があるのだろう。
「りっちゃん?」
囁くような声。
俺はさくらちゃんの手を握っていた。
「痛ッ!」
手が叩かれる。
「私の前でイチャイチャしないで」
麻衣に思いっきり睨まれた。
これは非常に困ったな。
う~ん。
さくらちゃんをとると麻衣が怒るし、麻衣をとるとさくらちゃんとイチャイチャ出来ない。
マジでどうしたものか……。
「あ、電車来ちゃった」
さくらちゃんの声に顔を上げると風と轟音が目の前を通る。
休日ということもあり、電車内は少しばかり混んでいた。
奥まで行くことは出来ず、俺たち三人は扉の前を陣取る。
「そういえば今日は何したい?」
「見たい映画があるんだ~。そのあと買い物かな…………麻衣ちゃんは何かある?」
恐る恐るといったような声。
「……別に」
スマホを弄る麻衣はさくらちゃんを一瞥もせずに答える。
「そ、そうか」
だからさくらちゃんもこういう反応になってしまう。
「何ていう映画なの?」
こういうときは話題を変える。
「《青い春に去る君へ》っていう恋愛ものなんだけど。知ってる?」
「知ってる知ってる! 原作の漫画読んだよ!」
漫画が読みたいと愚痴ったときに麻衣が貸してくれたタイトルだ。すでに放映していたとは知らなかったが。
「良かった~。りっちゃん、恋愛もの好きかどうか分からなかったから飽きさせちゃったらどうしようと思ってたの」
確かに好きでもない映画に一時間も二時間も拘束されるのは嫌になるが、今回は俺自身が楽しみになってきた。
「そういえば麻衣も見たいって言ってたよね? 良かったね」
「……言ってない」
うっそだー。
言ってたじゃん。
原作のファンだから、映画が始まったら見に行きたいって。
喉まで出かかったが止めておこう。
今の不機嫌な麻衣には火に油だ。
「………………」
「………………」
「………………」
でも沈黙はキツいぞ、麻衣……




