さくらルート15
「神崎さんと仲直りしたの?」
授業間の十分休憩の時に隣の友野が唐突に言った。
「どうしたの急に?」
「いや、二人の中の空気が良くなったな、と思って」
そう言うと友野はガサゴソと自分のバックを漁り、何かを取り出す。
「ん? いつから眼鏡になったの?」
友野が取り出したのは眼鏡ケース。そこから取り出した何の変哲もない眼鏡を掛ける。
「これは友野家に代々伝わる眼鏡でな。この眼鏡で見た人の好感度が分かるんだよ」
「へ~。 ………………ふぁッ!?」
危うくスルーするところだったが、こいつ今、凄いこと言ったぞ!
「好感度が見えるって本当に?」
「え、あ、うん。今から見てみるよ。まず人を登録して」
俺が興奮気味に訊いたからだろう。少し引いた友野が説明してくれる。
眼鏡をかけたまま俺を見てつるをいじる。
「次に登録した人を対象にした好感度。つまり相島さんを皆がどのぐらい好きかを見るわけだけど。神崎さんで良いよね?」
「お願いします!」
やべえ。超ドキドキしてきた。
さくらちゃんと俺が両想いだとはいえ、実は数値にしたらビミョーでしたとかだと立ち直れなくなりそうである。
「じゃあ見るよ~」
お遊び程度の感覚で、さくらちゃんを見る友野。
「……え?」
その顔がひきつった。
「え、うわー。マジか……」
「え、何だよ!? その反応は!」
「……知りたい?」
苦笑する友野。嫌な予感が的中したのか?
「え、何? そんな悪いの?」
「いや、悪くはないんだけど……。本当に知りたい?」
歯切れの悪い友野。
そこまで言われると、どんな結果だろうと知りたくなってしまう。
「大丈夫。覚悟は出来てる」
俺の眼差しに友野は強く頷いてくれる。
「分かった」
友野は一度深呼吸をすると口を開く。
「相島さんと神崎さんの好感度は"七十億"」
「七十か~。でもまあ、これから百を目指せば……」
……なんか今、単位がおかしかったような。
「なあ、それって何点満点?」
「百が最高で『結婚しても永遠にラブラブ』。零だと『え、誰ですか?』」
「俺とさくらちゃんは?」
「七十億。『ラブ&ピース』だね。全人類を愛せる好感度が相島さんだけに注がれているってこと」
「……ごめん。理解が追いつかないんだけど。俺はどんな感情で受け止めれば良い?」
まさかのラブ&ピース。俺の頭の中はパニックである。
「まあ、相島さんが何をしても神崎さんは好きだってことだね」
「お、おう」
俺、めっちゃ愛されてんな。
「いや、待てよ。こんだけ愛が強いってことは危険かもしれない」
「え、何が?」
せっかく恥ずかしながらも幸せだったのに友野が不穏なことを言う。
「相島さん、しっかりと神崎さんを構ってあげないと君に不幸が訪れるよ」
「……具体的には?」
「監禁されるか、毎日性的に襲われるか」
「さくらちゃんに?」
「神崎さんに」
俺と友野の間に沈黙が流れる。
まさかのヤンデレと痴女ルートである。
……さくらちゃんなら、おkかもしれない。
「りっちゃん」
「うおッ!?」
突然声をかけられて俺は椅子から飛び跳ねる。
「どうしたの、りっちゃん?」
「え、いや!? 何でもないよ! それより今の聞いてた?」
「? ううん。何のこと?」
小首を傾げるさくらちゃん。どうやら聞かれなかったらしい。
「それでどうしたの?」
「あ、うん」
さくらちゃんはご機嫌そうに微笑む。
「今日の放課後、私の家に来てほしいんだ~。良いよね、りっちゃん?」
さくらちゃんの笑みが弧を描く。
俺、生きて帰れるよね?




