さくらルート14
「お、お姉ちゃん、外で不良が」
「……本当に来たのか」
いつも通り、麻衣と仲良く家を出ようとしたとき、先に外に出た麻衣が顔をひきつらせて戻ってきた。
原因は分かっている。
「おはようございます、姐さん!」
「お、おはよう」
俺が出ていくと玄関先で待っていた金剛が威勢良く挨拶してくる。しかも高身長で不良面だから道行く人たちが彼を避けて通っていく。
「べつに待ってなくて良かったのに」
「何を言っているんですか。舎弟にしてもらったからには送り迎えをするのが俺の仕事っす!」
快活そうに笑う金剛。
彼は思っていた以上に明るい性格らしい。
「ちょっと、お姉ちゃん! 舎弟ってどういうこと!?」
「まあ、いろいろあって」
「いろいろって何よ! は、な、し、て!!」
襟を掴まれてガクガク揺れる俺の頭。
こうなったわけは昨日の告白に理由がある。
まさかの愛の告白ではなく俺の舎弟への懇願だった。
あまりの唐突な話と断ったらヤベエことになると思ったので思わず了承してしまった。
それを麻衣に伝える。
小心者でスマン。
「えっと、金剛、さん? ちょっと良いですか?」
「何ですか、姐さんの妹さん?」
金剛はニコニコしている。失礼だがそれが逆に怖い。
「朝から玄関に立たれると迷惑なんです。舎弟だかなんだか知りませんが、お姉ちゃんを困らせないでください!」
「ちょっ!」
麻衣のストレートな言葉に俺は麻衣の肩を掴む。
「麻衣、もうちょいオブラートに!?」
麻衣は姉である相島 立花のことになると周りが見えなくなる。相手によってはとても危険だ。もしここで金剛がキレたら麻衣を守れるか分からない。
「そ、そうですか。すみません」
だが、予想を反して金剛が大人しく謝ってくれた。
「分かってくれたなら良いです。行こう、お姉ちゃん」
うんうん、と満足げに頷くと麻衣は俺の手を引いた。
「姐さん! 妹さん! お荷物お持ちします! 俺こう見えて力持ちなんで!!」
いや、どっからどう見ても腕力に自信があるようにしか見えないが、後輩をパシるのは性に合わないので柔らかく断る。
「おはよう、りっちゃーん!」
声と共に大質量の何かが俺の背中に押し当てられる。
この柔らかさと弾力はーー
「おはよう、さくらちゃん」
「ふふふ、うん!」
振り向くとやはりさくらちゃんだった。
「おはよう、麻衣ちゃん。それに金剛くんも」
「……おはようございます」
「おはようっす! 神崎先輩!」
そっぽを向きながらも挨拶はしてくれる麻衣と腰を九十度曲げてのしっかりとした挨拶をする金剛。
今日の朝はとても賑やかだった。




