さくらルート10
「~~~♪」
さくらちゃんはソファーの上でご機嫌そうに鼻歌を歌っている。風邪をひいているので音程が外れているが、そこも可愛いのがさくらちゃんである。
「………………」
一方の俺はというと、タオルで目隠しをしながらさくらちゃんの背中を無心で拭いている。
そう、無心である。
もし、タオルが外れて目を開けようものなら、さくらちゃんの白く、きめ細やかな、触ったらもっちりしてそうな肌を拝んでしまう可能性がある。
……言っておくが俺は変態ではない。
女の子同士であっても邪な気持ちで接すれば罪である。
だからこうして対策しているのだ!
「んんッ。りっちゃんそこは」
「へ! 何!? ごめん! 何が!?」
ビクンと跳ねあがるさくらちゃんに俺はパニックになる。
「そこは弱いから強くしちゃダメ~」
「そこって何処!?」
「脇の下はくすぐったいの」
「ええ、ああ。良かった~」
目隠ししているから変なところを触ってしまったかと思い、ひやひやしたが大丈夫そうである。
「もう、背中は拭き終わったよね。じゃあ前は自分でーー」
「ええ~。前も拭いてよ、りっちゃん」
俺は思わず、ごくりと唾を飲む。
女性の身体の前を拭くということはつまり、あれである。"あれ"を触るということである。
「………………」
いや。
いやいや。
いやいやいやいやいやいや。
落ち着け童貞。
さくらちゃんは相島 立花の親友だ。今の言葉は俺に言われたわけではなく、相島 立花だからだ。
中身が俺である以上、さくらちゃんの神聖な"あれ"に触れて良いわけない。
「さくらちゃん、女の子同士でもさすがにそっちは……」
「良いよ、りっちゃんなら。だからもっと触ってよ……りっちゃん?」
俺の手首が掴まれて導かれたのは、さくらちゃんの柔肌。トクントクンと心臓の鼓動が掌を通して伝わってくる。
「さ、さくらちゃん……!?」
つまり俺の手は今、さくらちゃんのーー
顔が熱くなった。
漫画のように頭から蒸気が噴き出しそうである。
「あ、ダメだこれ」
恥ずかしさのあまり俺の意識はシャットアウトした。
童貞には辛いよ。




