さくらルート9
風邪をひいたさくらちゃんの様子を見に来た俺だが、いざ看病をしてあげようと思っても初めてなのでいまいち何をすれば良いのか分からない。
こういうときにスマホは便利である。
手軽にネットで色々検索出来るのは現代人の特権である。
「えー何々。まずは水分補給。スポーツドリンクを飲ませてあげること。これはそこの自販機で良いか」
俺は呼吸が落ち着いてソファーで寝ているさくらちゃんを確認すると外に出る。
歩いて一分もしない自販機で小銭を入れて好みがあるかもしれないので二種類のスポーツドリンクを買っておく。
「次は、食事。お粥とかか?」
それなら家にレトルトがあったはずだと一度家に戻り、母さんにお粥と麻衣のものだと思われるプリンをゲットして、さくらちゃんの家に戻る。あとで代わりのプリンを用意しておかないと。
「さくらちゃんは~ちゃんと寝てるな」
自分が居ない間に何か起きてしまうのではないかと不安だったが大丈夫だったみたいだ。
「うーん、どうするかな。せっかく寝てるし、でも水分を摂らせてあげないと」
俺は悩んだ末にさくらちゃんに声をかけることにした。
「さくらちゃん、今起きれる?」
「ふぇ?」
軽く肩を叩いてやるとさくらちゃんは薄く瞼を上げる。
「りっちゃ~ん。おはよ~」
熱っぽい顔で嬉しそうに微笑むさくらちゃん。
「おはよう。飲み物買ってきたけど飲める?」
「飲みゅ~」
風邪のせいで舌足らずな幼児みたいに返事をするさくらちゃん。おかげで俺の中に母性本能が芽生えそうである。
俺がスポーツドリンクのペットボトルにストローを挿してやると、さくらちゃんはちゅーちゅー吸い始める。
「ちべたいね、りっちゃん」
ひとつひとつのことで笑うさくらちゃんはいつものイメージと違ったがこれはこれで可愛かった。
「お腹空いた? お粥食べれる?」
「食べりゅ~」
「じゃあちょっと待ってて。すぐ持ってくるから」
「はーい」
俺は台所に向かうとレンチン三分でお粥を温めて適当などんぶりに中身を注いだ。
「さくらちゃん、お粥出来たよ」
「あーん」
「……へ?」
さくらちゃんの行動に俺は思わずスプーンの手を止めて呆ける。
「りっちゃん、あーんして。あーんじゃないと食べれない」
「ええ……。はい、あーん」
「ふうふうして」
「え、ああ。ふーふー。はい、さくらちゃん、あーん」
「あーん。ふふ、美味しい」
まさかの初あーんである。夢にまで見たそれは自分がする側だとは思っていなかったが。
て言うか可愛いな。
小動物に餌付けするような感覚だ。
母性の次は飼い主の気持ちになる。
「………………」
ちょっと意地悪したくなった。
「あーん」
「あーん。ぱく」
「え~どうして食べちゃうの?」
「ごめんごめん。お腹空いてたから」
頬を膨らませるさくらちゃんに俺はつい笑ってしまう。
さくらちゃんが風邪をひいているというのに俺は今、この瞬間が幸せだった。
「う~ん」
「ん? どうしたの?」
お粥を食べ終わると身じろぎしだす、さくらちゃん。
「汗が気持ち悪いよ~」
「ああ、お風呂入れないもんね……て、ちょっと!?」
「りっちゃん、拭いて~」
おもむろにパジャマのボタンを外しだす、さくらちゃん。
「ちょっ!? ストップストップ!」
俺は熱っぽいさくらちゃんの手を握って脱衣を止めた。




