さくらルート7
昼休みの後から俺はさくらちゃんを避けるように過ごし、今は自宅のソファーで項垂れていた。
「立花、おやつ食べる?」
母さんが俺のことを心配して声をかけてくれる。
だが生憎、食欲はないので首を振った。
「はあ……」
明日からさくらちゃんに会わす顔がない。
せっかく彼女が幸せを手にしたというのに。
「?」
ピンポーン! とチャイムが鳴る。
誰かと思い、玄関扉の覗き窓を覗くとーー
「!?」
外の門に居たのはさくらちゃんだった。
制服姿だから学校からまっすぐ来たのかもしれない。
俺は混乱して動けなくなる。
さくらちゃんはどうして俺の家に来たのか分からない。
あんな別れ方をしたからだろうか?
だとしたら気まずい。
「誰が来たの?」
「うわッ!?」
後ろから声をかけられた俺は肩を跳ねあげる。
「驚かさないでよ!」
「ご、ごめんね」
母さんは悪くないのだが心臓がバクついてるためそれどころじゃない。
「クラスの子だよ」
「会わないの?」
「え、あ、今はちょっと……」
さくらちゃんとのことを何と説明すれば分からず、俺は口ごもる。
「喧嘩でもしたの?」
「してないけど。会えない」
「……分かったわ。お母さんに任せて」
母さんは俺に微笑むと玄関を開けて外に出た。
俺は気になったので覗き窓から様子を窺う。
母さんとさくらちゃんが何かを話している。
母さんは柔らかく微笑むが、さくらちゃんは何処か緊張した様子。
相島立花とさくらちゃんは幼馴染みなのでもう少し砕けたものだと思っていたが、さくらちゃんの中ではいじめの一件がまだ尾を引いているのだろう。
二人は二言三言話した後、さくらちゃんが頭を下げて帰っていった。
そのときに覗き窓越しにさくらちゃんと目があった気がした。
「さくらちゃんが来るなんて久し振りね。今回は立花が出掛けてるって言ったけど、今度はうちに呼んだら?」
「うん。落ち着いたらね」
「でも、さくらちゃんと最後に会ったのは三年ぐらい前かしらね。前はよく遊びに来てたのに」
三年前だと相島 立花もさくらちゃんも中学生だ。
きっとそのぐらいの時期にいじめが発生して二人は疎遠になったのだろう。
「そうそう。あのときは心配したのよ? 立花、階段から落ちて直前の記憶をなくしたんだから」
記憶をなくした?
「私は前も記憶喪失になったの?」
「そうよ。そういえばその頃から立花は大人っぽくなったわよね。前は男の子と喧嘩するぐらい暴れん坊だったのに」
さくらちゃんが言っていた過去の相島 立花に似ている。
だが、その理由が階段から落ちた事故が原因だとは知らなかった。
「その時のことは麻衣の方が詳しいんじゃないかしら。あの子も中学入ってたし。病院に付き添ったのも麻衣よ。お母さんが病院に行ったときは大泣きで、『お姉ちゃんが死んじゃうよ~』って。まあ、そのときは大事なかったから、お母さんも安心したわ」
昔のことを思いだして微笑む母さん。
過去に起きた相島 立花の転落事故。
そしてそこから相島 立花の性格は変わった。
そこに何かがあるように思える。
さくらちゃんとのことは金剛に託して俺は自分が相島 立花になった原因を調べてみるか。
ただの異世界転生ならまだ夢があるが、存在しないはずのシナリオを歩むのは不安だし、俺は死んだ覚えも神様にYou異世界に行っちゃいなよ、とも言われてない。
夢落ちなら笑い話だが。
さて、この謎を解かないと。




