さくらルート6
「相島さん、元気ないな。何かあったのか?」
午前の授業が終わって昼休み。恒例になった四人での昼食時に友野が訊いてきた。
「いや、何でもないよ」
「そうか? なら良いけど」
「良くないだろ。私たちの相島さんが困ってるんだ」
「相島さん、私で良ければ……」
友野のあっさり引いた態度に矢沢さんは反駁し、兵藤さんは俺を心配して相談に乗ってくれようとする。
「ありがとう。でも大丈夫だよ。もう解決したから」
そう言いながらも俺は別のグループの女子と昼食を摂っているさくらちゃんに目がいってしまう。
未練がましいとは分かっていながらも俺はさくらちゃんが好きなんだ。
だからこそ金剛にはさくらちゃんを幸せにしてもらわないと。
「あの、りっちゃん。少し良いかな?」
「え?」
顔を上げると俺の隣にさくらちゃんがいつの間にかに居た。
「ど、どうしたの?」
「伝えたいことがあって、ね」
何処かモジモジとした態度のさくらちゃん。
「ここじゃダメなの?」
「うん。皆にはちょっと……」
俺は察した。さくらちゃんは金剛とのことを俺に伝えようとしているんだろう。
相島 立花は自分の親友だから隠さずにいたい。さくらちゃんはそう思っている。本当に律儀な女の子だ。
「分かった。皆は気にせずに食べてて」
俺は友野のたちにそう言い残すと、さくらちゃんと一緒に教室を出る。
少し歩き、教室の喧騒から遠ざかる。
さくらちゃんが歩くのを止めたので俺も止まった。
「実はね、昨日、金剛くんとーー」
「おめでとう」
俺はさくらちゃんの言葉を遮る。
「え、と。何が?」
小首を傾げるさくらちゃん。
「金剛くんと付き合うことになったんだよね。ごめん、昨日の二人を見ちゃったんだ」
「私と金剛くんが!? ち、違うよ! 私と金剛くんは別に何でもーー」
「私は、嬉しいよ。だって私のせいでさくらちゃんは何年も苦しんでたんだから。だからもう私に負い目を感じる必要はないんだ。女の子として恋をして良いんだよ」
何処か諭すような俺の物言いは、さくらちゃんに宛てられたものと同時に、この期に及んで未練たらたらな俺を戒めるものだ。
だって好きな子に恋人が出来たのに俺はこの場から逃げ出したくてしょうがなかった。
俺が『さつかそ』の主人公なら俺はさくらちゃんを諦めない。
ハリウッド俳優並のイケメンが現れようが、バッドエンドループが続いてしまう世界になってもだ。
だけど俺は相島 立花。頑張っても親友から好転することはないんだ。
「どうしたの、りっちゃん? 私はもう幸せだよ? りっちゃんが私を救ってくれたんだよ? なのに、どうしてそんなことを言うの?」
さくらちゃんはだいぶ困惑した表情をする。どうしてそんな顔をするのだろうか?
チャイムが昼休みの終わりを告げる。
「戻ろうか」
「待って、りっちゃん! 話はまだーー」
「ごめん」
俺はさくらちゃんの声から走って逃げ出した。




