さくらルート2
放課後に早足で教室を抜け出した俺は一時期、さくらちゃんと仲が良いと言われていた一年二組の男子生徒を尾行している。
名前は金剛 渚
「いやでもないだろ」
その噂の相手がバリバリの不良だった。
金髪に染めてカチューシャでオールバックにしてるし、ワイシャツじゃなくてパーカー着てるし、インナーめちゃくちゃカラーだし。
てか背たかッ。
百八十は超えてんな、あれ。
え、いや嘘だろ。
言っちゃ悪いがあれで、さくらちゃんと仲良しだったって?
真逆やん。
真面目で学級委員のさくらちゃんと、いかにもな不良のあいつが?
あれか?
少女漫画的なあれか?
不良×真面目萌えか?
真面目な女の子ほど不良男子に惚れちまうって法則なのか?
ホント、やだわ~。
リアルでも女子ってすぐに悪い奴に引っ掛かるから~。
別にモテなかった僻みじゃないです~。
怖い人が嫌いなだけです~。
と、まあ誰ともなく言い訳している俺だが、さくらちゃんが彼と仲が良かったとは半信半疑である。
しかし、二人だけで談笑してるところを見たって言う人が何人も居るしな~。
さくらちゃんにはギャルゲーのヒロインらしく幸せになってほしいと思っている手前、ものすごく複雑である。
「きゃ!?」
女生徒が廊下で金剛にぶつかる。
「ご、ごめんなさい……!?」
女生徒の顔が青ざめる。
百八十超えの金剛が相手の女生徒を睨んでる。
怖ッ!
これ完全にあれだ。
壁際に追い詰めてカツアゲするやつだ。
やべえ。
別の意味で俺がドキドキしてきた。
実際にこんな現場を見るのは初めてだ。
どうする? 突っ込むか? 先生を呼んだ方が良いのか?
「怪我ねえか?」
「え、は、はい」
「そうか」
それだけ言うと金剛は立ち去ってく。
「金剛くん……きゅん」
おk。
分かった。
完全なるギャップ萌えだ。
目の前の女生徒が良い例だ。
認めよう。
ギャルゲーの主人公は顔面偏差値は中の上ぐらいだが、性格がイケメンだった場合、ギャルゲーの主人公に相応しい。
さくらちゃんと金剛の仲を深めるために俺ができること。
「…………」
いや、元々仲が良い二人なのだ。
俺は見守るだけで良いのだろう。
俺は金剛の尾行を止めて荷物を取りに教室に向かう。
ああ、嬉しいはずなのに。
好きな子の隣を誰かに譲るってこんなに辛いんだな。




