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6

「何の騒ぎだ!」


 下層から聞こえてくる戦闘音に、クルーゼが問いかける。

 そこに下層から駆けあがってきた兵士の一人が報告した。


「敵襲です! 敵歩兵部隊が砦の正面ゲートを突破。三階への階段にて現在交戦中!」

「いつの間に!」

「やられたな。まさか歩兵部隊を出してくるとは」


 モーリスは顎に手を当てて考え込む。そしてイネスは、椅子に縛り付けられた状態でガタガタと震える。その口には、布が噛まされていた。

 先ほどから、何度も屋上に出て直接指示を出そうとするイネスを、側付きたちが縛り上げたのである。


「イネス様、何か意見が?」


 側付きの一人が口の布を外すと、イネスはぷはっと深呼吸した。


「ここの歩兵部隊は二部隊だけよね? 一部隊は外にいたし、結構まずくないかしら?」

「この砦を放棄しますか? しかし階段を押さえられているとなると脱出するにも」


 イネス達がいるのは砦の五階。そのすぐ上は屋上になっており、非常階段などは設置されていないため、階段を押さえられると脱出はそこを突破しなくてはいけなくなる。窓からロープなどを垂らす手もあるが、外から狙い撃ちされる可能性もあるためむしろ危険度は高くなるのだ。


「うーん、じゃあ私たちが行きましょうか」


 悩む首脳陣の中で最初に口を開いたのは、イネスの護衛を担当していたアンジュだ。

 その言葉に、モーリスがハッと何かに気づく。


「アンジュ君、今サポートメイドは何人いる?」

「二階までは押さえられているんですよね? 全員が上に逃げてきているなら十二人はいるはずです。その場を死守しているとなると、私合わせても三人ぐらいですね」


 この砦には、今回作戦に参加しているアルミュナーレ隊のサポートメイドたちが集まっていた。主に兵士用の食事の準備や急患の手当を担当しているのだが、調理場も処置室も全て一階に集められている。彼女たちが持ち場を放り出すとは思えないため、上階にいるのは三人の可能性が高い。


「三人だとさすがに厳しくないかね? サポートメイドと言えど、相手はこの場で奇襲を任せられる部隊だ。相手もエリートであると考えたほうがいい」

「とりあえず三人いれば、守るだけならば可能ですよ。しばらくすれば、下の子たちが勝手に撃退してくれると思いますし」


 ただ黙って籠城するだけのサポートメイドではない。敵に隙が生まれれば、ここぞとばかりに襲い掛かるように訓練してきた子たちである。


「むぅ、そこまで楽観視はできないと思うのだが」

「アンジュ、やって頂戴! 死守して時間を稼げれば、可能性はあるのでしょ?」

「可能性というか、まず間違いなく」

「ではお願い。サポートメイドで敵部隊を食い止めて」

「了解しました。じゃあ、サポートメイド借りていきますね。イネス様の護衛が薄くなるので、この部屋から出ないようにお願いします」

「出たくても出られないわ!」


 ガタガタと椅子を揺らしながら、イネスが抗議する。アンジュはくすっと笑い、部屋を出るのだった。



 その足でやってきたのは、現在防衛中の二階と三階の踊り場。そこでは、兵士たちが机や椅子をバリケードにして上ってこようとするオーバードの部隊と交戦していた。


「君たち! ここは危ない、下がるんだ!」


 とことことやってくるアンジュたちサポートメイド三人の姿に気づいた一人の兵士が、慌てながら注意を促す。それを軽くスルーしてアンジュたちは前線に到着する。


「アンジュ、どうするつもり? 全員叩くのはちょっと大変だよ?」


 そう問いかけてくるのは、緑髪の先輩サポートメイド、サラである。


「砦血みどろにしちゃうのも問題だよね。掃除大変だし」


 そんなことを言っているのが、黒髪のツインテドリルが特徴的な先輩イルミルだ。

 二人とも先輩ではある、というよりもサポートメイドの中ではアンジュは新米だが、立場上王族の護衛を担当しているアンジュのほうが偉いことになっているため、ここではアンジュが指示を出す。


「下の子たちのほうが人数いるし、ここで止めとけば勝手に処理してくれるよ。そうすれば、多少汚しても下の子たちのせいにできる!」

『それだ!』

「とりあえずバリケード強化しよっか。私炎系以外は苦手なんだよね」

「そこは私に任せて。アイスライン・ディカプルセットアップ、スタート!」

「じゃあ私は既存の強化を。アースウォール・オクタプルセットアップ、スタート!」


 アンジュが引き連れてきた二人が魔法を唱える。とたん、積み重なっていたテーブルや椅子の接触部分が氷によって補強され簡単には崩れなくなる。さらに、階段の地面から土壁が強化したバリケードを飲み込み階段を塞ぐ壁となった。

 敵側も当然魔法で破壊を試みるが、八重と十重の魔法によって補強されたバリケードは簡単には破壊できない。

 数発の魔法を打ち込んで、ようやく一部に穴が開いたかと思えば、すぐさま新たな魔法で穴をふさがれてしまう始末だ。


「た、助かった」

「けが人の治療は自分たちでお願いしますね。私たちはここを守りますので」

「あ、ああ。君たちはいったい」


 突然やってきてあっという間に敵の侵攻を食い止めてしまった美少女三人組に、兵士たちが狐にでもつままれた表情で尋ねる。


「第一近衛アルミュナーレ大隊、第二王女親衛隊サポートメイド、アンジュです」

「第六アルミュナーレ隊サポートメイド、サラです」

「第十二アルミュナーレ隊サポートメイド、イルミルです」

「三人合わせて!」

『……え、なに?』


 サラの突然の振りに、何の打ち合わせもしていないアンジュとイルミルはぽかんと取り残され、二人で顔を見合わせる。


「そこはノリでもなんでも合わせようよ!」

「それはちょっと難しいかな」

「それにほら、まだ敵が諦めたわけじゃないみたいだし」


 少し注意して壁の向こうの音を探れば、何やら魔法で破壊する音が聞こえてくる。しかし、土壁に穴が開く様子はない。


「別の場所壊してるの?」

「砦ごとってことかな?」


 サラの発言に、兵士たちにどよめきが走る。だがそれはアンジュがすぐに否定した。


「戦時用の砦だよ? ちょっと壊したぐらいじゃ崩れないでしょ。それこそ、一階の柱全部壊すでもしないと。けど、下の子たちがいる限りそれは無理だろうし、そもそも破壊音がそんなに遠くない」


 破壊音は壁のすぐ向う側で聞こえてきている。一階の柱を壊そうとしているのなら、もっと遠くから聞こえてきてもいいはずだ。


「じゃあ別の入り口作ってるのかな?」

「相手も魔法は使えるみたいだし、そうなんじゃない。窓警戒?」

「入ってくるときに斬っちゃえば楽だよね」

「手の空いた兵士の人にお願いできますか?」

「あ、ああ」


 まるでお菓子でも摘まみながら会話するように、ぽんぽんと物騒な言葉が出てくるサポートメイドたちの話し合いに、兵士たちは置いてきぼりでただただ指示に従う。

 兵士たちがそれぞれ近場の窓際に張り付き、警戒しながら外の様子を窺う。そんな姿を見ながら、アンジュはもう一つの可能性を考えていた。


「ねぇ、全部が無理でも、一部なら破壊もできるかな?」

「なにを?」

「この砦。例えば階段だけとか」

「それはできる……え、もしかして」


 三人の視線が階段へと集中する。その直後、サポートメイドたちの強化したバリケードが垂直に落下していくのが見えた。

 直後、轟音と共に大量の土煙が舞い上がり、一瞬にして視界を奪う。

 アンジュたちはとっさに顔を手で隠しつつ、階段から距離を取った。その向こうからは、やったぞという声と共に、兵士たちが走ってくる音が聞こえてくる。


「床ごとバリケードを落としたんだ」

「あぁ……掃除どころじゃないよ、これ」

「とりあえずこの場を守り抜くことがイネス様からの指示だから、上ってきた兵士には悪いけど、お掃除させてもらおうか」


 アンジュがおもむろにメイド服のスカートから大型のナイフを取り出す。それに呼応して、サラとイルミルもスカートからレイピアとモーニングスターを取り出した。


「わぁ、イルミルちゃん可愛いモーニングスターだね!」

「お給料でオーダーメイドしたの。スカートが翻っても、恥ずかしくないようにって」


 イルミルが手にするモーニングスターにはリボンや宝石が散りばめられ、鈍器というよりは宝石の飾り台のようにも見える。

 対してサラのレイピアは、実用重視のシンプルなものだ。アームガードにデフォルメされた熊のぬいぐるみが抱き着いている以外は。

 なお、アンジュの大型ナイフは日ごろの料理や狩りにも使っているため、本当にシンプルで何も改造されていないものだ。その代り、切れ味だけは最高級のものである。

 三人がそれぞれの武器を構えた直後、煙の中から剣を持った敵兵が飛び出してくる。


「はぁぁああ!」

「死ねぇ!」

「もらった!」


 アンジュたち三人の前に、それぞれ一人ずつ兵士が切りかかってくる。

 アンジュは当然のように剣をナイフで受け流し、拳を腹部の鎧がない部分に叩き込む。

 その横では、サラのレイピアが肩を貫き、イルミルのモーニングスターが胸の鎧を破壊する。

 一瞬のうちに三人が無力化され、その上うめき声をあげて足元に転がる。


「実力は……まあまあ?」

「ちょっと油断があったんじゃないですか?」


 胸部の鎧が完全に砕けた鎧の男を見下ろし、イルミルが首を傾げる。


「私たち美少女だしねぇ」


 サラの言葉に、アンジュが呆れたように苦笑した。


「それ自分でいう?」

「自分の顔には自信があるの」


 そんなサラは、レイピアを引き抜き、剣を取り落とした兵士の首筋に蹴りを叩きこむ。

 完全に意識を失った兵士から、すぐに視線を煙の先へと向ける。そこでは、他の兵士たちが戦いを始めていた。


「じゃあ、ささっと制圧するよ。血はなるべく出さないように!」

「もういいんじゃない? 階段崩れちゃってるし、作り変えでしょ?」

「そうですね。これの手加減、結構難しいんです」

「ああ、もう! 分かった、じゃあ速度重視で!」

『はーい』


 二人が飛び出し、アンジュも近場の兵士へと切りかかる。それは、横から飛び出してきた剣によって防がれた。


「むっ」

「メイド、噂のサポートメイドというやつらか」


 その兵士は、周りの兵士よりも少し豪華な鎧を身にまとっている。


「隊長かな?」

「そういうことだ。早々に制圧しなければならない。死んでもらうぞ」

「できるかな?」

「やるだけだ」


 男が切りかかってくる。アンジュは素早くフレアブースターを発動させ、ホバー状態で後方へ下がると、相手が振り下ろした時点で一気に前へと飛び出す。

 男は剣を振り上げてくるが、アンジュはそれを足で踏みとめた。


「なに!?」

「メイドの靴には鉄板が入っているの。常識だよ?」


 突き出されたナイフが、男の肩へと吸い込まれ、男は剣を取り落とした。

 肩を押さえながら後退した男は、魔法を詠唱しエアバレットを放ってくる。

 だが、風魔法はアンジュが最も目にしてきた魔法である。たとえそれが見えにくい魔法であっても、詠唱から発射までの間隔、視線の先、手の向き。それらから弾道を予想し、回避した。


「躱すだと!?」

「その程度なら、私には一生当てられないよ!」


 フレアブースターで飛び上がり、体をひねって天井に足をつく。そのまま天井を蹴り、加速した状態で男の顔にナイフを振り下ろす。

 とっさに転がって回避する男が、立ち上がり態勢を立て直そうとしたとき、その首筋に冷たいものが当てられた。


「終わりだよ。降参して」

「まだ侵入した兵士たちはいる。俺一人が止められたところで」

「下の音、聞こえない?」

「ん?」


 それは、なにやら華やかな、キャッキャキャッキャと女子たちが話す声。その声は段々とこちらに近づいてきていた。

 男の脳裏に一つの可能性が浮かぶ。


「まさか」

「そっち大丈夫ですか~。一階の敵は掃討しましたけど~」

「そういうこと。残りはここにいる人達だけ」

「くっ」


 崩れた階段。そこから次々に魔法で飛び上がってくる少女たち。その全員がメイド服を着て、物騒な刃物や鈍器を手にしている。中には、エプロンや頬に赤いものがついている子もいた。


「こっちも制圧完了です! 下の状況は?」

「ごはん無事です!」

「処置室のけが人も無事? ……生きてます!」


 けが人の時点で無事ではないと感じたのか、とりあえず生きているとだけ報告するメイド。その頭を横から叩かれ、いたーいと抗議の声を上げている。


「他の場所は、だいぶ荒されてましたけど、問題なしです。柱に設置してあった爆弾も、全部解体して武器の貯蔵庫に入れておきました!」

「ちょっと張り切っちゃった子がいて、肉片とか飛び散ってますけど、問題なしです!」

「メイド的には問題ありでしょ……」


 張り切っちゃった子はきっと返り血のついた子なのだろうと考えながら、アンジュは次の指示を出す。


「じゃあ下の子たちは一階のお掃除から開始! イネス様が降りてきたときに、肉片とか血とか見せないように!」

『はーい!』

「生きている人は兵士さんたちに任せて、ここ掃除して私たちも戻ろう」

『はーい』


 呆然とする味方兵士たちに捕虜を渡し、アンジュたちは魔法で生み出した水で肉片や血を洗い流して持ち場へと戻るのだった。


         ◇


 対峙する俺のペスピラージュとメオラのプルストレーゲ。

 二機の間には、八本のワイヤーが行き交い、複雑に絡み合っていた。

 プルストレーゲが強引に引きはがそうとワイヤーを引っ張る。しかし、ペスピラージュもその場に踏ん張ってワイヤーを引っ張り、張り合っていた。


「面倒なことをしてくれたな」

「ハハ、これで逃げられないな。俺も、お前も」


 ワイヤーを使うからこその弱点。相手に引っ掛けたり、途中で軌道を変えられることは強みかもしれないが、同時にそれは相手に掴まれる可能性を孕んでいる。

 特に、俺のように似た武装を持っている相手には、絡まるなんて危険性があること、気づけなかったかな?

 いや、相手の動き的には二本絡まった時点で気づいていたのだろう。

 だが、こちらの攻撃を防ぐためには武器を使うしかなかったのだ。

 それが主軸となったプルストレーゲと、他にも大量の武装を有しているペスピラージュ。どっちが有利か。嫌でも分かるよな!

 俺はペルフィリーズィを取り出し、プルストレーゲに狙いを定める。回避しようと横に動いても、俺はワイヤーを引っ張りその行動を妨害した。そして発砲。

 十分な加速を受けた弾丸は、プルストレーゲの肩装甲を吹き飛ばす。

 操縦席を狙ったのだが、動きながら肩で庇ったようだ。しかも運のいいことに、装甲が吹き飛んだおかげで弾丸の軌道が逸れて肩自体への被害がない。

 俺はさらに続けて引き金を引く。

 だが次の弾丸は完全に避けられた。プルストレーゲがこちらに向かって駆け出しながら、わずかに機体を傾けたのだ。

 操縦席を狙うと分かってれば、躱すことも可能か。

 ヒュージャーショットガンを使うことも考えたが、この距離では武装を出しているうちに間合いに入られる。

 なら拳で語るか!

 俺は機体にファイティングポーズを取らせ、敵の拳をその腕で受け止めた。

 そして、脇腹にジャブを放つ。

 プルストレーゲはそれを手で弾きながら、顔に腕を伸ばしてきた。

 接近戦で頭部モニターを破壊されるのはまずい。伸ばされた手をこちらも攫み、残りの手も同じように捕まえる。


「まさか、アルミュナーレでこんな力比べをするとは思わなかったぞ」

「しかもこんな戦場のど真ん中でな!」


 ギリギリと力を込め、相手の手を潰そうと試みるが、さすがにアルミュナーレの握力だけでは手を潰すことはできないようだ。

 なら、関節の破壊を。

 そう考えた直後、相手も同じことを考えていたのかこちらの腕を振り下ろし、自分は腕を上げながら押し込むことで、そのまま指を破壊しようとしてきた。

 俺は指を離さないようにしながら、後退して敵をこちらへと引っ張り込む。

 一瞬相手の態勢が崩れた。その隙を狙って、足払いを掛ける。

 プルストレーゲは、軽くジャンプすることで足払いを回避し、手を放して今度は殴りかかってきた。

 ガードが間に合わない。

 拳が顔へと吸い込まれ、機体が大きく揺れた。


「ぐっ」


 こみ上げる吐き気をぐっとこらえ、態勢を立て直しながら拳を振るう。


「それでは当たらんよ」


 プルストレーゲは軽くステップして拳を躱す。さらに、伸ばした腕の懐へと入ってきて、こちらの操縦席目掛けて拳が振るわれた。

 俺は機体を自ら転ばせ、そのままプルストレーゲへとぶつかることでその拳を回避する。

 そのまま腰へと手を回し、両手でがっちりとホールドした。


「なにをする気だ」

「俺の武装は銃だけじゃねぇぞ」


 そのまま相手の足を踏みつけ、足首目掛けて爪に仕込まれたパイルバンカーを放つ。


「なんだと!?」


 足首を一撃で破壊され、バランスを崩すプルストレーゲ。メロウは慌てて態勢を立て直そうとするも、足首から先が崩れ落ちており、態勢を立て直すことが出来ない。

 俺が腰から腕を離せば、そのまま地面へと倒れこんだ。

 俺は続けざまに敵機を踏みつけパイルバンカーを打ち込む。


「ぐおっ」


 わずかに操縦席からは外れたが、ガラスの割れるような音が聞こえたので、衝撃で中身の一部は破壊できたのだろう。


「こんなところで終わるわけには!」


 二機のワイヤーが絡まった剣。これだけ至近距離にいれば、絡まっていてもある程度使うことはできる。

 落ちている一本を拾い、それを高く掲げる。


「いや、ここで終わりだ。帝国との戦いは今日で終わらせる。もう、ただ殺しあうだけの操縦なんて、飽き飽きしてんだよ!」


 振り下ろされた剣は、プルストレーゲの操縦席を貫き、敵機の機能を停止させた。


「メオラ・イン・レベルタは俺が討った! 帝国最大の脅威は俺が消し去った! ここが正念場だ! フェイタル軍、一気に押し込めぇ!」


 俺の宣言と共に、中央のフェイタル部隊が一気に押し込み始めた。八将騎士第一席がやられたことによる動揺も大きいのだろう。オーバードの部隊が総崩れになり、敵陣近くまで後退していく。

 俺もこのまま戦列に加わって本部の制圧を手伝いたいところなのだが、残念なことにこれからやらなければならないのは、この絡みに絡まったグロンディアレペシュを解く作業だ。ついでに、ペルフィリーズィライフルとヒュージャーショットガンの弾薬の補給もしてこよう。

 プルストレーゲの躯を担ぎ上げ、オレールさんたちが待機している場所へと戻ろうとしていると、近づいてきたアルミュナーレに声を掛けられた。


「調子が良さそうだな」

「その声、レオンか?」


 その機体は、一見オーバードのもののように見える。だが、武装はフェイタルのもののようだし、色も雑ではあるが白く塗られている。胸に王国の紋章までついていた。


「ああ。運よくアルミュナーレを手に入れたのでな。押されている南部に行こうと思っている」

「南部は傭兵が元気みたいだな」

「そういうことだ。おそらく奴らもいるのだろう。エルドはその様子だといけそうにないな」

「パージすればいいんだろうが、さすがにこの戦況だとそこまで焦る必要もなさそうだしな。しっかり解いてくるさ」

「ではそれまでに僕が終わらせておこう」

「言ってろ――レイラは強いぞ」

「知っている。だが、いつまでも四番手でいるつもりはない」


 それはアカデミー時代の操縦実技の順位だった。


「死ぬなよ」

「当然だ」


 レオンの機体が駆けだす。俺はそれを見送り、補給所へと戻るのだった。

次回予告

レオンは単騎で南側の戦線へと向かう。そこで見たのは、愛のために復讐を誓った女性の苛烈な舞台だった。

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