ウジェニア
閃光が白い病院を赤く染める時、院内では緊急警報が鳴り響いた。地震か何かと間違っているんじゃない?
寝たきり老人を叩き起こしてしまったら、本当にごめんなさい。ですが、こんなもんじゃないんです!
「次! トール・ハンマーだ!」
スケさんは少し困った顔をした。
「ちょっと、やりすぎじゃないの?」
僕は車の屋根からハッチへと、逆さ向けに首を突っ込んだ。
「やるなら徹底的に……だ。植民惑星査察官のやり方が中途半端だと、ケプラー22bの皆様に示しがつかない」
「分かったわ。思う存分、鉄槌を下してちょうだい」
ハッチから顔を出して見ると、看護師もB級奴隷達と仲良く一緒になってクモの子を散らすように避難していた。かわいそうなシュレムさんは一人置き去りに。……はしたなく両手を地面について、四つん這いになったまま唖然としている。
「だが、かまわずに……トール・ハンマー!」
頭上に拳を突き上げ、天空に向かって言い放つ。それは両眼のナノテク・コンタクトレンズから宇宙空間まで、インターバルなしの指令が下る合図。そう、今やコンタクト・ドライブシステムはフル稼動状態なのである!
宇宙空間に鎮座するインディペンデンス号のサイドにあるウエポンベイが音もなく開いた。そして一本のタングステン製の矢が高速射出された。そいつは短くなった鉛筆にしか見えないが、マッハ20に達する大気圏外からの運動エネルギーは、全くもって絶大。
雲を突き抜けて灰色の尾を引きながら、火の玉が山に吸い込まれてゆく。オーミモリヤマ市近くにあるミカミ山と称する成層火山に、宇宙からの誘導弾が正確に着弾した瞬間だ。
結果、円錐形の山の頂上付近は、まばゆい光に包まれながら、すさまじい勢いで爆裂飛散した。伝播する炸裂音の衝撃は、こちらまで到達した刹那、鼓膜や窓をライブ会場のスピーカー並みにガンガンと凄まじく振動させる。
塞いだ両眼を再び開放してつぶやく。
「うーむ、まるで核兵器並みの破壊力……」
シュレムのスカートは風にめくれ上がり、可愛いお尻が見えていた……やはり白。
病院の建物から着弾点まで、かなりの距離があったのだが、窓ガラスはひび割れて全滅。そして市民が御神体と崇める霊山が破壊された光景は、間違いなく悪夢的に映ったはずだ。




