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りんごくださーい

ーーー

エゼルの容態が気になって仕方ないエトは、控え室内でウロウロと落ち着きが無い様子。

まさかの明日に延期でもなるかと思えば、簡単に試合続行。


相手は、まさかの自立機動型の人造人間だったわけだが、きっと今のエトにそんな相手は眼中にないのだろう。


決勝に進んで、エゼルと戦うことしか。


そんな彼に通達が来た。

試合開始という通達が。



「さあ、まさかの試合続行という形でお送りする第何試合でしたっけ…?

ああ!準々決勝二回戦は〜!!


このお二方の勝負になります!!」


白い蒸気に包まれて、彼は登場する。

この試合、負けたら元も子もないけれど、たかが人造人間相手に本気を出すまでもない。

彼は心に余裕を持っているようだ。


「では、準々決勝二回戦!!

スタートです!!!」


試合開始の合図がなるなり、彼女は礼儀正しくお辞儀して挨拶を交えようとした。

いつもの彼であれば、それに対して当たり前のように応じていたのだろう。


だが……。



「宜しくお願い致します。

エト・アルカディナ様。


貴方は涅槃の中で最強に値するお方。

私など、眼中にないと思われま……!!」



彼女の両足と両手は高速で接近し、爆発する弾丸に木っ端微塵にされてしまった。

前のめりに倒れ、どうすることも出来ない様子のαは上を見上げた。


「よく分かってんじゃん、お前なんか眼中にねえよ」


グシャリ。


彼の靴に身を包んだ足は、彼女の頭を強く踏みつけ、潰し、壊した。

αの視界は真っ暗に。



「か、開始5秒で試合終了です!!

勝者、エト・アルカディナァァ!!」



彼の背中を押すように歓声が鳴り渡る。

破壊され尽くした人造人間αだった残骸は、医療班が綺麗にゴミ箱へ捨てたそうな。



「はぁ……エゼル、大丈夫かなー。

明日の試合、棄権になって俺の不戦勝とかだったら死ぬほど後悔する…!!」


控え室の前でのたうち回る青年。

黒闇が過ぎ去ったとは言えど、油断は出来ない。

彼の研ぎ澄まされた神経は、侵入者を逃さなかった。



「……誰だ?

涅槃の人間ではないな」


エトの背後から現れたのは。



「いいじゃん!ねはんのにんげんじゃなくても〜!

ふふふっ!!


エトさんって、かのじょとかおつきあいしてるひととかー、いるのー?


わたし、しりたいなー!

イケメンのエトさんのこと!」


紫の髪をツインテールにしている小悪魔を連想させるような容姿の小柄な少女だった。

彼女の纏っているオーラは異様にもドス黒く、闇が強い気がした。



「お前、黒闇の人間か。

なんで、涅槃に出入りできる!?


涅槃に侵入するためには紋章が必要なはず!」



「えへへへへへ!

じゃあ、エトさんにしつもんです!


もんしょうをもらうまえ、どうやってはいった?」



「それは……紋章を持っている涅槃人と一緒に入れば……!!

お前らの中に内通者がいるのか!?


まさか、ルナール?!」



「だいせーかい!!

すこしのヒントでここまでたどりつけるなんてさすがだね!!


褒めちゃおーーっ!!」


ルナールであれば、涅槃に関係のない侵入者を侵入させることなど容易い。

彼が動いていなくても、白黒を応用すれば簡単に出来る。



「ヤツが内通者ってことはもう明かされてる事実だぜ?


お前は何しに来たんだ?」



「えーっ!

しらなかったー、なんてねっ!


わたしがきた、りゆう?

うんとね、エトさんをころしにきたの!


えへへ、ウソだよ。

そんなにみがまえないでよ!」


彼女は彼を嘲笑うかのように話を続ける。



「まあ、わたしは、ぼうかんしゃだからたいしたことはいえないけど!!


これからさき、おこるだいせんそうにはゆびくわえてみてるだけにしてほしいなっ!


あっ、じかんだ。

またねーっ!!」



彼女はそれだけ言って、姿を消した。



「これから起こる大戦争?

何だよそれ、、、!


もう、わけわかんねえよ!!」


色々なことが起きすぎて、頭が追いつかないのもあってか、彼は控え室に戻って、一睡しようとソファへ横になった。



ーーーー



「あぁぁぁぁぁぁぁああああっっっ!」


ディズィから治療を受けているエゼルは声にならない声をぶっ通しで吐き続けていた。



「……そんなに悲鳴あげられたら私。」


「な、何ですか!?

罪悪感とかありますよね!?」



「もう気持ちよくなっちゃって、全力で治療したくなっちゃうじゃないのよ!!


あと三時間で終わらせるわ!!」


「………!?」


もう死ぬんじゃないかと思われる激痛も彼女の無鉄砲さに呆れ始めたエゼルは、声を上げるのをやめてゆっくり目を閉じた。




ーーー

涅槃のどこかの病室にて。

護衛中の兵士達が話を交えていた。


「こいつぁ、涅槃の中でも随一の召喚士だったはずだ。

なのに、なぜ黒闇と繋がってたんだ?」



「知らねーよ、んなこと。

つか、こいつ学園長にも喧嘩売ったりとかしてるし、大層強いのは認めるけど、こりゃ、無いな。


一番手を出してはいけないと言われる、黒闇の一団の総本部長だったとは。

黒闇に所属歴も相当長いんじゃないか?


洗濯機に打ち込めば洗いざらい吐いてくれそうだがな」


その瞬間。

彼らの目の前には謎の少女が現れた。



「すいませーん。

ルナールさんのびょうしつってここ?」


兵士達は突然の来客に驚いて、身構える。



「お嬢ちゃん。

ナニモンだ?


ここまで来るのには、沢山の兵士の警護をかいくぐらないといけないんだぞ?!」



「えへへへへ。

おじさんたち、よわいからサクッところしちゃったー。


なんてねっ!!」


明らかに普通の女の子とは違う気迫とオーラ。

兵士達は懐から銃やら刀やらの武器を取り出し、彼女を戦闘態勢で迎えた。



「あかくて、あまい、おいしいりんご。


おじさんたちのなかにある、おいしいりんご。


ひとつ、わたしにくださいな。」



彼女の一言で、兵士達は口から血液を噴出し始める。

彼らの胸から喉にかけて、登ってくる丸い心拍数を刻むモノは、口の中に到達すると、ポトリという奇妙な音を出して地面に落下した。



「わあ、きれいなりんご!!

いつつもくれるなんて、おじさんたち、きまえいいんだねー!


じゃあ、いただきまーす!」



彼女が落ちた林檎に触れると、林檎は弾けて消えた。


体内から林檎を失った兵士は白眼を剥いて、まるでゾンビのようにゆらゆらと主人の命令を心待ちにしている。



「……んとね。

ねはんのひとたちはみーんなきらいだから、ペットには、いらなーい!


今からさんびょうたつまえに、この世から消えてなくなっちゃえ!」



彼女が病室の中へ入る頃、悲鳴声も断末魔も聞こえずに彼らは絶死した。

血液と人体が崩れる音だけがその場を濡らして。



「ルナールさんっ!


あなたのリンゴはおいしいのかなー?


でも、まえにわたしのちからをみやぶってしまったあなたには《林檎ください》はきかないよねっ!


わたしたちのいこうはつかまってしまった、あなたのきゅうしつではなく、せんめつにきまっちゃったの!


じゃあね、なにもいいのこすことはないよね?」


彼女は手に持っていたナイフで彼の心臓を突き刺そうと強く振り上げる。

その瞬間だった。


彼の口から不思議な言葉が沢山漏れたのは。



「ごめんな……レイナ。

俺は、後少しでお前を蘇らせることが出来たんだ…!!


なのに、こんなところでつまづいちまってよ。ダメな兄貴だよな…。

だから、俺はお前のとこに行ってもお前には会えないよ。


……言っとくが、林檎娘。

俺はお前ら黒闇とつるんでてて楽しいと思ったことなど一度たりともない!!

レイナの仇…討ちたかっ……!!?!」


ルナールの言葉は遮られる。

無心で無情な冷酷無比の彼女の手によって。



「うるさいなー、もー。

いいからだまって、しねよ。


いもうとさんのこと、おくやみもうしあげまーす!」



ルナールは心臓にナイフを一差しで致命傷を受け、絶死した。

彼の額には抗うかのように、一滴の涙が零れ落ちた。


ーー


twitterでもお知らせした通り、毎日投稿を一時的にお休みしています。

理由は、バンドリのイベントです。

終わり次第、再開しますのでよろしくお願いします。



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