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伝説の証

魔法の根源。


魔王隕石(サタン・メテオ)は、地球へ直撃し、大いなる被害と大いなる力を周知させ、魔法を紡ごう。



魔王隕石が直撃して以来、生まれてくる子供は魔王分子(サタン・マター)、魔人になる為に必要な分子を身体に宿す。


その頃から特殊な能力を開花させ、神になるまで至った元老院という組織が出来上がり、腐敗した世界にもう一度命を、武器を、世界を創り出した。



後に元老院の一人が、魔王隕石に秘められた力を石化させ、それを元に武器を作り出すこととなる。


それが現在の魔王武器の根源だ。



最初に創り出された魔王武器はすべての武器の形状を二種類ずつ、試作のために幾つも創り出されたそうだ。

だが、やはり試作品は試作品。


強大すぎる力を抑え込むには難しく、使用者の身体を簡単に壊してしまった。

故に、試作品として創り出された魔王武器。


通称:伝説の魔武器(レジェンダル)は、元老院が自ら管理している。

取り出すことの一切を許さず、破滅を望ませる武器を封印した。



だが、伝説の魔武器(レジェンダル)は奪い取られてしまう。

全部で16個あった武器のうち、8個が行方不明となった。


元老院は、世界に散らばった伝説の魔武器の捜索をこれからも続けているが、未だにそのうちの七つが見つかっていない。



魔人施術所。


何をする場所なのかは、言葉通りに魔人を作り出す場所。

体内に魔王分子を要している魔王隕石直撃後の子供のみが受けられる施術。



人間を軽く超越した存在。


魔人(デビル)



それになる権利を得ている彼らは、自分の胸に幾つかの悲劇と期待を抱えて、施術に挑んでいる。


だが、魔人施術所に行けば、必ずしも魔人になれるとは限らない。

必要な魔王分子の量が足りてなければ、なることは出来ない。



その魔人施術所がある場所は、腐敗してしまった世界の中心。


元老院が創り出した、元老院のための都市。



中心魔王都市(セントラル)にある。




そもそも、世界の理とは哀しきもので地球を独占するように南極大陸を崩して作られたのが中心魔王都市。

その勢力と土地はかなりの物で、まさに世界の中心と言えるほどに巨大だ。



その周りに位置しているいくつかの大陸に、ニルヴァーナや他国が連なっている。



魔人になった少年少女は、自らの選択で自分の行きたい国を選択し、所属を決定される。



所属を決定し、魔王武器の授与が完了すれば魔人として一人前になることができるわけだ。



さて、本題に入ろう。



背中の紋章は、伝説の証。



神に選ばれた存在が扱うことの出来る、栄光の剣。


伝説の魔武器(レジェンダル)を有しているという証である。



ーー時は遡り。

魔人施術に成功し、涅槃(ニルヴァーナ)を所属国として選定した、エトとカルラはウキウキで授与される予定の武器を心待ちにしていた。



「エト君!

コレで、私達も魔人になれるんだー!


魔王武器、どんなのが自分に授与されると思う?!」



「うーん。


俺のは強くてかっこいい武器がいいかな!

魔王武器使って敵をズバーンっと倒したいんじゃん!」




授与されると言っても魔王分子の量によって掴み取れる武器が変わるので、これもまた試験と言っても過言ではない。


そう説明されたのにも関わらず、自信たっぷりのエトの様子にカルラは、吐息混じりの苦笑をし、「やれやれ」と首を振った。



ーー暫くすると、黒服の男が現れて魔王武器の選定所へと案内をしてくれた。



「この特殊な石を掴むだけで魔王武器を手に入れることができるんですか…?」



そこまで大きくない小部屋には、機械的な装置がいくつも連なり、その中心には光り輝く認知出来ない石が宙を浮いていた。



「そうだよ。


この石を掴んで、君がどんな武器にしたいかを心の中で念じれば、君の体内の魔王分子が石と混ざり合って武器に具現化するんだ!


それを扱うための試験をちょいと受けて貰えば、君は晴れて涅槃所属の魔人になれるんだよ、あと少しの辛抱さ!」



装置の開発者とも思える白衣の男性は、彼らに力強く、そう言った。



「どっちからやる…?」



「んじゃ、カルラ!

先、いいぜ!


俺がお前の後にすっげーの掴んじゃうからよ!」



「うん!」



エトに言われるがまま、カルラは石の前に立った。

白衣の男性も、周りに居る黒服の男性も笑顔で頷き、彼女の背中を押した。



「(私の中に眠るーー魔王よ。


平和を調和しーー大切なものを護るための力を、この弱い私にください。)」



彼女は、目を瞑って石を掴みながら心の中で、そう念じた。


心は魔王分子を伝って、石へと。


分子が混ざり合って具現を。



「……で、出来た!!」



カルラの手には、白色の弓が握られていた。



「その白色の弓は、水の神。


リヴァイアサンの意思が具現したモノだな。

よくやったよ、今日からコレは君のモノだ」



体から湧き上がる衝動に、思わずガッツポーズをかますと、彼女は振り向いてエトへ。



「エト君の番だよ!


カッコよくて、強いのだと良いね!」


と元気よく言った。



「おう!当たり前だ!」



それに答えるようにして、彼は歩みを進める。

後後の後悔を知らずに。



「これを掴めばいいんだな…」



エトが目を閉じて、石に触れた瞬間ーー


「……ッ!?」


彼の体内へ巨大な力が加わり、意識を失った。




ーー何もない空間。

宇宙のような背景が永遠に続く世界。



「……アレ…?

俺、武器の授与を行ってたはずじゃ…?」


起き上がるに、彼は自分の状況がわかっていなかった。

それも当然に、何もない空間で誰かは問いかける。



「貴様は何者だ…?

何故、私を呼び醒ます力を持っている。


見た所ガキだな。どういうつもりだ…?」



声のする方へ振り向くと、ソイツは姿を現した。



巨大な赤い槍を持ち、黒い武装した馬に跨っている大男。

彼の鎧は金色、その光沢は見ている人物を簡単に捻り潰せる輝きを放っていた。



「お前こそ何者だよ!


俺は、今、やらなきゃいけないことがあるんだよ!!

元の世界に戻せ!」



叫び声を上げると、馬に跨った大男は負けないくらい大きめの声を上げた。



「私か…?


私は軍神王(オーディン)だ。

この戦争の神と呼ばれた私を呼び醒し、私の力を容易なまでに容易く奪い去っていこうとした貴様に聞いているのだ!馬鹿者め!」



「オーディン…!?

じゃあ、これは魔王武器を継承する際に必要な儀式!?


心の中で念じるとか言っといて、そうじゃないのかよ…!」



「…何をブツブツ言っているのだ?


早く名を名乗らんか!」



気を取り直して、しっかりとした立ち方で彼は自己紹介をしよう。



「エト・アルカディナ。

強くなって大切な人を守りたい!


だから…俺に力をください!」



「断る!!」



え?


あり得ないと思っていた返答に思わず、本音の声が漏れた。



「……貴様は自分が置かれている状況をまるでわかっていない!!」



「置かれている状況…?

何だよそれ!意味分かんねえよ!」



「お前の心の中には、これから私が言う覚悟が出来るのか…?

私を背負うという重みを!」



それがエト・アルカディナという魔人に託された1度目の約束だった。


粗方の説明をバーっと聞いたエトが漏らしたのは疑問の声。



「……伝説の魔武器(レジェンダル)?」



「そうだ!

貴様らの大ボス、元老院とやらが魔王の力を石化させて施策として作った武器をそう呼んでいるらしい」



「へー…。

聞いたことないなー?」



「むむっ!

お主、信じて居らぬな!」



オーディンは、顔を曇らせて必死に伝えようと続ける。



「その伝説の魔武器とやらは、私を含めた名を残した英雄の神を具現化させたもので、強大すぎる力所以に封印されたらしい。


だが、封印後に16個あったうちの伝説の魔武器は8個奪い取られてしまった」



「もしかして、お前がその伝説の魔武器のうちの一つだっていうのかよ?」



「そうだ。

私が伝説の魔武器のうちの一つ、軍神王の鎧型魔法武器だ!」


「鎧型!?」



自分が予想していたのとは全く違ったようで、彼はガッカリしたように下を向いた。



「鎧型と言っても、その状態を維持することさえ出来れば鉾にも盾にもなる優れ物だがな!」



「えっ!?どういうこと?」



彼は分かりやすい性格のようで、曇っていた表情は元気にも上を向いた。



「その状態を維持することさえ出来れば、私の持つ残酷な赤き槍、グングニルを持つ権利を与えられるのだ。

つまり、私は魔王武器として二種類形状を要している。


力を受け入れることが出来れば、最強の鎧を身に纏ったまま、最強の槍を使うことが出来るというわけだ!」



「でも、確か、魔王武器は一つの形状しかあり得ないって聞いたよ?」



「だから、私は伝説の魔武器なのだ!」



オーディンは続ける。

これから彼に伝えることになる残酷な結末を胸に秘めて。



「だが、貴様は私を使ってはならない!

もし、自分の仲間や自分が窮地に追いやられたとしても、使うことは禁ずる!」



「どうしてっ!?


俺は強くなりたいんだよ!

大切な仲間を守るために!!」



「だからこそだよ。

私を使えば、現在のお前では簡単に死んでしまう!!

その為に沢山、修行を積んだとしてもだ!

魔人が一生を費やしても得ることの出来ない力を身につけねばならないからだ!


それは、お前の望んでいる敵をズバーンっと倒せるような切り札にはならん!


自分を滅ぼす、最悪の魔王武器なのだ!」



オーディンは彼へ、強めに言った。

自分の力は強大につき、彼自身を簡単に破壊してしまうことが出来る。

そんなことは分かりきっていたからだ。



「……そんなに強い力でも!!

俺は絶対に使いこなしてみせる!!!


でも、お前の言うことは守るよ。

神とやらが俺に嘘を言って止めるような真似をするとは思えないからな。

だから、お前を俺の中で認めさせて、使えるようになってやる!!


だから、待ってろ!

お前は俺を待ってればいい!」



オーディンはこの時、確信した。

自分は甘い男なのだと。


ああ、彼に重ねてしまう。



お前の息子は強い男だ。


ティフロ。




「分かった…。

だが、私は貴様を認めている。

この私を呼び醒したのは貴様で二人目だ!


約束しよう。

このオーディン、栄光と名前に誓って。


お前を待っていよう!」



そこでエトの意識は現実世界に帰ってきた。



「……ト君!エト君!エト君!!!」



目を覚ますと、血のついた拳を下げて泣きながら胸に顔を擦り付けてくるカルラの姿が見えた。

意識を失っていた時に頭でも打ったのだろうか、床に寝転がっているエトは自分の顔に激痛が走っているのを感じる。



「痛っ…!?」



「……もう、ビックリさせないでよ!

死んだかと思って、死ぬほど殴っちゃったじゃん!!」



「……!?

ホントに死ぬわ!!!」



カルラが原因だったことを確認すると、エトは渾身の力を振り絞って叫びを上げた。



「エト君、大丈夫かい?

君が寝ている間、君の身体が金色の鎧に包まれて、赤い槍を握っていたんだが……」



「大丈夫です。

それが俺の魔王武器ですから!」



白衣の男は曇らせた表情で黒服の男に何かを伝えると、エトにこう言った。



「君の手にした魔王武器は、我々の所有している武器のリストには載っていない武器だ。

もしかしたら、とても強大な武器なのかもしれない。


伝説の魔武器と呼ばれる類のモノだね」



「……知っているんですか…?」



「聞いたことをある程度だけれどね。

伝説の魔武器を手にしたモノは、強大すぎる力に耐えきれず、死をもたらされると聞いたことがある!


その武器を手に入れたということは、迂闊に使ってはいけないということだ。

君に関しては、魔王武器の調整を無かったことにしよう。


稀にあるからね。

魔王武器の測定不能は……!」




白衣の男は、これにて終了と伝えた。


ーー

魔王武器授与が終了し、カルラの武器調整試験を待っている間、

オーディンに言われた言葉を思い出そう。



「伝説の魔武器の所有者は、皆。

背中に魔法陣のような傷が出来る。


それは伝説の証といってな。

私を背負う覚悟ができたという証拠でもあるんだよ。


だからお前は今日から生ける伝説となった!」



生ける伝説。


強さを手に入れたことは確信していいけれど、その強さは最大の弱さだ、


仲間を守るためには諸刃の剣が過ぎる。

自分を強く、高めていかないといけない。



エトはオーディンとの約束を強く、

忘れないと決めた。



ーーー




「伝説の魔武器か。

聞いたことはあるよ、奪われた武器は世界を簡単に滅ぼす力を持っているだとか、、、

結構有名な噂なんだけどね…」



「私は後からエト君に聞いたよ。

伝説の魔武器っていうのがエト君に託されたってこと。

エト君から直接聞けたのは嬉しかったかな!

エト君、なんでも自分に溜め込んじゃう癖があるからね」



カルラの言葉に続けるようにして、シャスが口を開いた。



「そうね。

隊長さんは私達を頼っているにしても、自分に詰め込み過ぎよ。


もっと、隠し事なんて無しにして頼ってもらわないとメンツが持たないわよ!」




「分かってんよ。

お前ら、この俺についてきてくれてありがとうな。


俺はお前らを絶対に守る!

だから、お前らも俺を絶対守ってくれ!」



クスッとエト以外の全員が笑った。



「当たり前だよ!!

なんでそんな当たり前のことを平然とかっこよく言えるかなーエトは!

ほんっとに、くっさいよね!」


ニアは照れ臭そうに、態とらしく、口を開いた。

エト隊。


涅槃随一の最強の隊の一つだが、彼らにはもう一つ涅槃の中で最強とも呼ばれる強さがあった。


それは絆の深さ。


彼らからそれを奪い取ることは誰も出来ないであろう。


更新遅れてすいません!

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