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転送魔法式巨大転送装置

ーー数十分後。


「「「ハァ、ハァ・・・」」」


やっと到着した三人は、地面に寝転がった状態で「眠い」「疲れた」などの弱音を吐いている。魔人である自分達に取ってみたら大層な距離でもないのにも関わらず、ここまでの疲労様にエゼルは若干呆れていた。


「遅すぎるお前らのせいで、チトはとっくに医療班に預けたし、俺らはかき氷の食い過ぎて頭痛いし、もう夜の八時だ!早く扉を通るぞ!」


「「「はい・・・」」」

((かき氷の件俺ら(私ら)関係ないだろ))


エゼル達一行は、大きな扉の目の前にやってきた。エゼルからしてみたら、先程マジマジと扉を見たり、触ったりしたのでそこまで興味が湧かないが三人は違う。初めてみた巨大な扉を触ったり、歓声を上げて何やら楽しそうだ。


「おい、お前ら、よく聞け。この扉に入るための鍵はお前らにはまだねえが、ニルヴァーナに入ったら手の甲にこの称号が貰える。焼き入れる時、ちょっと痛えけど気にすんな!この称号を扉に翳すとーー」


司令官の手の甲には龍が羽と尾を広げ、街を守る紋章が入れられていた。

手の甲の紋章を扉に翳すと、扉に大きな穴が広がり始める。穴の中は、光沢のある虹色の光が渦巻いており転送魔法の際に出てくる光とよく似ていた。


「へぇ〜。凄え!これはどんな感じなんだ?」


「おい、やめろ!」


リグルスが穴の中に手を出そうとした時ーー穴の中の全ての光が真っ赤に染まった。リグルスは驚き、手を急いで引っ込めた。


「これは防犯用だ。紋章を持たない者が触れたり、近づいたりするとこうなる。ニルヴァーナは大都市だからな、潰そうとする輩も少なくはない。さっきの奴みたいにな。まあ、こうなったらもう一度紋章を翳せば元に戻る。覚えておけよ。

さあ、赤いうちにお前らが入れ。そしたら元に戻して再稼働する!」


四人は赤い光の中に飛び込む、眩い光に目玉が潰されそうだったが暫くすると虹色の綺麗な光に戻った。

すると、再び眩い光に目を奪われてーー気がつくと賑やかな街に出ていた。


「ここは?」


「ここはニルヴァーナの北東にある街、ネヴァリアだ。夜中でも街全体が昼のように賑わっててな。美味い酒も飲めるっていう親父達の巣窟みたいなもんだ。お前ら、今日は夜遅いから王宮に行くのは明日な!んじゃ、宿舎まで送ってくわ」


司令官は宿舎までの道を案内してくれた。ネヴァリアを通り過ぎた位置に王宮の巨大な入り口があり、扉には先程の紋章が刻まれていた。

この国には昔、龍が存在したのだろうか。そんな疑問を抱かせる紋章のデザインにエゼルは少し興味が湧いていた。


「あ、司令官。チトは?」


「ああ、彼女なら治癒魔法をかけられてその副作用に眠っているらしいぞ。女性用宿舎でな。案内してもいいが、入ってはダメだぞ。男は厳禁だ!残念だったな!」


バカにしたような表情でエゼルを煽る司令官は決して大人には見えず、厨二病を拗らせる辺りの中学三年生とか高校一年生くらいによく似ていた。呆れたように"興味ねえよ"とエゼルは返し、そうしてる間に男性用宿舎に着いた。

男性用宿舎というには何故かオシャレで一つの学生寮のような感じだ。


「んじゃ、お前ら、朝九時にはさっきの王宮前に集合だ。部屋ならロビーの人に聞け、用意してあるはずだ。んじゃ、おやすみ〜!」


司令官はそう言いながら、サディを女性用宿舎に送り届けるべく彼女を連れて去って行った。

女性用宿舎に興味があるわけではないが、場所だけでも知りたいなと後をつけようと思ったがそれをして見つかればまた面倒なことになるに違いない。

エゼルは理性を発揮してロビーに居る係員に部屋番号を聞いた。


「えーと、エゼル・シスタ様ですね。お部屋は、2580番です。そこの背後にいるお二人は2581番と2582番ですよ。鍵を渡しますのでご自分で管理してください。では、良い夜を!」


"男だけの宿舎で良い夜も何もないよ"と愚痴を吐くキルスを無視してエレベーターに乗る。このエレベーターの感じは凄く嫌いで上に上がっても嘔吐感、止まっても嘔吐感という僕殺しの装置だと思っている。

エレベーターで自分の部屋のある階に着くと、真っ先に自分の部屋めがけて走っていたバカ二人のうち、リグルスは途中で盛大にずっこけた。床に鼻をぶつけたようで、鼻血が出ている。


彼ら二人は、「疲れたー」と絶妙なハモりを見せながら部屋の中へと消えた。

エゼルも後を追うように先程渡された鍵で部屋を開けると中に入った。

電気を点けると、そこにはシンプルに白いふかふかのベッド、白い壁、白い天井、白いソファに白いタンス。全体的に褒める部分を探すなら白いふかふかのベッドだろう。後は全て普通すぎるため、突っ込みどころがまるでない。

エゼルは、シンプルなお風呂に浸かってシンプルなドライヤーで髪を乾かし、シンプルなふかふかベッドで夜を明けた。


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