ニアの魔王武器
魔闘演戯本戦が近づき始めている今日この頃。エゼルは自室にて、一週間ぶりのエトとニアの三人でこれからことについて話をしていた。
「それにしても一週間ぶりだなー…」
「そうだね…エトとニアにも迷惑かけちゃったみたいで、、、ごめんなさい」
入院中も何回かお見舞いに来てくれていたという情報を胸に申し訳なさそうな表情で深々と頭を下げた。
「エゼル、顔を上げて」
ニアの言葉に顔を上げると、エトとニアはエゼルに向けて頭を下げていた。表情はやや強張っていて、唇を噛み締めている。
「ほんっっとにごめん!!《有罪》が黒闇に通じてたなんて知らなくてさ…有名サイトの管理人としての自分とエゼルの友達としての自分の顔が立たない!!」
「涅槃最強なんて言われてるけど、大切な友人も守れないんじゃ最強の名は名乗れない。それくらい俺は、あの日、あの場所でエゼルが倒れてから一週間後悔し続けた。会って間もないかもしれないけどさ。俺はエゼルのこと、大切な友人だと思ってるからな」
青年は自分に向けて頭を下げている二人に優しい声で一言紡いだ。
「本当に"ありがとう"!」
三人は笑顔をその場に紡ぐ。
重い空気が流れていた部屋は一瞬で潤いを取り戻したのだ。
「ねえねえ!エト!ねえねえ!」
「どうした、ニア。お前、まさかそのテンションでその笑顔って……エゼルから本気のありがとうを貰って涅槃の英雄と真の友達になれたことを自分のサイトで自慢しようとか思ってる顔じゃないよな?」
今のニアの表情を一言で表すのであればこれしかないだろう。
"幸せ"
彼の表情に満ち溢れた幸せを感じていたエゼルだったが、サイトに自慢を載せることが発覚した瞬間。
腕に力を込めた。
「威力強化」
轟音と共に破れる壁、何回か壁を突き破った青年は地面へと落下していった。
「あっ、、やり過ぎた!ニアなら多分大丈夫だと思うけど……なんか知らないけどタフだし…」
「タフっていうか、実質タフではないんだよなあいつの場合…。帰って来たら、あいつの秘密教えてやるよ!」
数分後。。。
「はぁ……エゼル。いきなり殴り飛ばさなくても良いじゃん。俺が悪かったけどさ!」
瞬間。
「光鎖!!」
エトが床に掌を付け、力を込めると、床の上に六芒星の黄色い光に包まれた魔法陣が出来上がった。
魔法陣の中から噴出するように勢いよく出てきたのは光の鎖。
「えっ、、、何何何!?」
それは、ニアを包み込むようにして身動きの取れないように捕縛した。
「よしっ!エゼル!威力強化と速度強化でひたすら殴って!」
「えっ、良いの?」
「良いんだよ!ほら、早く!」
「分かった!速度強化、威力強化!オラァァァァァ!!」
直後。
ニアの顔面を光の速度で打ち付けてくる拳がクリーンヒットし、何度も何度も衝撃を放った。
「ニア、アレを使うしかないんじゃないか?」
「((こいつ……エゼルに俺の魔王武器を見せようってのかよ。クッソ…止む終えないな…))」
速度は重さ。タダでさえ威力の強化された拳に光の速度が加われば、その攻撃によるダメージは相当なものだろう。
だが、彼はエゼルの猛攻を受けながらも拳を握りしめて、心の中で叫んだ。
「((クロノス。エトの野郎を後でボコボコにする代わりに今だけ!今だけ!俺の身を守る力を寄越せ!!」))
途端。
ニアの両手に手袋が嵌められた。
独特なデザインの手袋の着色は黒がメインだが、何よりも目に入るのは手の甲の部分それぞれに時計が取り付けられていることだろう。
彼は、両手の中指と親指を擦り合わせて綺麗な音を出した。
瞬間。
光の鎖は愚か、光の速度で殴り続けるエゼルさえも停止した。
身動きが取れないというよりは、彼以外の時間が停止した。と捉える方が早いだろう。
「はぁ……痛っ、、、エトは突然すぎんだよ。本当にさー、、、まあ良いや…あれだけ殴られたわけだからね。ちょっと大人しくなってもらおうかな!」
そう言ってニアが取り出したのは、山葵と辛子のチューブ。
彼は、エゼルには辛子。エトには山葵のチューブを彼らの鼻にぶち込んで、チューブのお腹を強く握りしめた。
「時間開始」
時は動き始めるーー。
「……え、?なんか、、ん?んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「鼻がぁぁぁぁぁ!!!!」
山葵と辛子をモロに鼻に食らった彼らは、床に咳き込んで蹲っている。
「あー、笑った笑った。君らがイケナイんだからねー?寧ろ、もっとワルイコトしちゃってもよかったんだよ?んで、二人とも、なんか言うことないの??」
「「ずびばぜんでじだ……」」
「うん!なら、ちょっと待ってね。"治す"からさ」
ーー小一時間後。
「ニア、悪かったって!ニアの魔王武器見せたかったんだよー!」
「俺の|こいつ(魔王武器)はオモチャじゃないんだぞ……?それに、知ってるのはオマエだけで良かったじゃないか……!!」
「いやぁ〜、一人だけ仲間外れはつまんないだろ?エゼルがニアの魔王武器のこと知ってれば何かどうか変わるんじゃないかとさ。てか、エゼルが他言しないことくらいわかってるだろーよ」
「そりゃあね。まあいっか……!」
長々と続いている二人の会話を聞いてるだけで全くついていけてないエゼルは、この二人に聞いて欲しい。一つの話を始めようと口を開けた。
「二人とも、話、聞いてくれる?僕の魔王武器の話を…」
仕事の関係上、ゆっくり書かせていただきます。
更新速度が安定しませんが、お付き合いいただけたら幸いです。




