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血に濡れた過去と最初のお願い

リグルス君の1000歳に至るまでの過去です!( ´ ▽ ` )ノ

帰ってきた声は、暖かく優しい皆の肯定の返答でした・・・。



エゼルの部屋に移動したエゼル隊は《緊急お願い会議》ということで机を並べて会議室風に椅子を置いて、即席だが会議室を作ったのだった。


「それで、お願いって?」


エゼルの問いに彼は話し始めた。

改めての自分の過去と今回のお願いを。



俺は、リグルス・S(シルディン)・ブラッド。


吸血鬼の種族の中でも一番権力を持った家系に生まれた俺は他の吸血鬼達にも憧れの存在となるはずだった。


そう、過去最強で最高の吸血鬼とも呼ばれた父のように。


俺は強くなるために、ひたすら努力して兄貴を越えようと父を越えようと頑張った。でも、その努力は報われなかった。


兄貴が優秀すぎるがために、俺の努力は才能に負けた。兄の才能は小さい頃から分かっていたことだったが、ここまで来ると流石に腹が立つ。


俺は兄の部屋に歩みを進めていた。



「どこ行くの?そんな危ない物持ってさ」


自分の部屋で決意を固めて兄貴の部屋に向かっているのに、その途中で話しかけられて自分のしていることがわからなくなった。


「お前には関係ないだろ」


「関係あるよ、俺、リグルス君の友達だもん!仲間だもん!」


そいつは、独りぼっちだった俺に仲間と言ってくれた。それだけで嬉しかった俺は兄貴への殺意なんかどうでもよくなってそいつだけを見るようになった。


俺らはずっと一緒。

何をするにも一緒で修行をするにも一緒だった。お互いが信用しきっているとそう感じた。


それから長い月日が経って、500歳になった俺たちは、父の部屋にある。

とある「物」に興味を持った。


不老不死と言われている吸血鬼の身体に適応して強くも弱くもなるという歴代の吸血鬼の長達の血が宿っていると言われる「剣」

吸血王(ヴァンプキング)》に。


その話をそいつから聞いた時、その剣があれば兄貴を超えるなんて簡単に出来るだろうと思った。


「明日の朝六時に部屋の前に集合な!」


「うん、分かった!」


元気よく返事をしてその日は就寝した。吸血鬼の活動時間は主に夜、朝は日光に負けてしまうので活動せずに寝ていることが多いからだ。


「なんとかバレずに来たよ!」


「俺も!」


二人共、お互いがバレてないことを確認すると父の部屋の戸を開いた。

古めかしい扉の音は、静寂に包まれた部屋の空気を歪ませる。

案の定、父のイビキのお陰で戸の音はどうにかなったようだ。


「コレが、吸血王(ヴァンプキング)?」


「うん、父さんの本に載ってた!」


剣の大きさは180cm程。

当時の俺の身長では背中に差しても剣の矛先が引きずってしまう程の大きさだ。

剣は何故か壁に突き刺さっていた、それを幾らそいつが引いても引っこ抜けないようだ。


「俺がやるよ!」


俺は思い切り引き抜こうと手に力を込めた。すると、剣は壁から引き抜けた。

引き抜く際に力を込め過ぎて、尻餅をついてしまったが剣が床に落ちることはなかったので音も鳴らずに剣を部屋から持ち去る事が出来た。


剣は二人で決めていた隠し場所に隠し、その日は夜まで自室に戻って、眠りについた。




「貴様らを読んだのは他でもない。吸血王が何者かによって引き抜かれ、そしてどこかに持って行かれたのだ。誰か心当たりのある人物はおるか?」


夜になると父は剣が奪われたことを把握し、すぐさま集会を開いた。館に住む吸血鬼全員を疑っての集会だ。

僕は俯いたように父の話を聞いていた。


「はい!」


しっかりとした挙手と共に声を上げたのは、朝、俺と剣を取りに行ったそいつだった。まさか自首?と思ったが、次の彼の言葉によって俺は全てを失った。


「早朝に父上の部屋から音がしたと思って駆けつけたところ、壁に突き刺さっている剣を引っこ抜こうとしているリグルス君を発見しまして。そこから尾行したのですが、剣の方は館内の武器倉庫に隠した模様です!」


彼の話から俺の名前が出てきた瞬間、周りにいる全ての吸血鬼が俺の方をギョロリとした目つきで向いた。


「リグルス、本当なのか?」


「俺は・・・!」


してない。そう言いたかった。

でも、言えなかった。


そいつは、表情をグシャグシャに歪めていて俺に伝達能力(テレパシー)を使ってこう言ってきた。


「仲間は騙してこそ仲間なんだよ。

利用してこその仲間。お前に近づいたのは、高貴で権力を持ったS(シルディン)家を貶めるため。お前と仲良くしてて吐き気がしたし、お前の無邪気な笑顔見てて腹が立った。お前はどんなに努力しても兄貴には勝てない。そして、お前はもう誰にも認められない。ザマァねえな。クソ反吐がでるぜ、さっさと死ね!」


そこからの吸血鬼の歴史は知らない。

400年間、地下にある独房で残飯だけを食事に生きた俺には分からない。

何度もそいつを恨んだけれど、何も変わらなかった。


でも、結果的には自分の心はそいつに侵略されていて、俺は他人を信じることをやめた。


だから、他人を頼るなんてことしたくもなかったし、してもどうせ裏切られる。そんなことだろうと思ってたんだ。


そして、900歳の誕生日に俺は久しぶりに地上を出た。

父に連れられて。


「400年経ったが反省はしたか?」


「しました。俺の過ちは決してしてはいけないことだったと」


他人を信じるということは最大な過ちだと。


「そうか。ならば、良い。お前ももう大人になる歳だ。明日から前のように日々鍛錬を続けてくれ。まあ、天才的な兄には勝つことさえ不可能だろうがな」


父は俺に目を向けてくれなかった。

当然、過ちを犯した息子を見ないのは分かる。まるで罪人に、他人に接するような表情と態度で俺を見下して兄貴を肯定した。


「百年後にはお前の誕生日会をしようと思う。楽しみにしていると良い。」


父はそれだけ言って、俺から離れた。

それから十年経とうが五十年経とうが、父が俺に目を向けてくれたことは一度としてない。


俺の思考は、他人を信用せず、上辺だけの付き合いで他人を騙すことに染まった。今の今までずっとそうだった。


「でも、今は違う!良かったよ、ここに来て・・・エゼルのチームに入って。こんな体験出来なかったから、嬉しいんだろうな俺・・・」


リグルスの過去を一通り聞いた一同は、また一つ結束を固めれた気がした。

そして、彼らはこれから先もずっと仲間だろう。



「お願いの話なんだけどさ。前に言ってた俺を貶めた少年の話。そいつの正体を知ってる人が涅槃に居てよ。魔闘演戯が終わったら、居場所を教えてくれるらしいんだ。良ければなんだけどさ、一緒に来てもらえねえか……?」


「おっけー!」


「いいぜ!」


「良いわよ!」


「チトもおっけーだよ!」


「へ・・・?」


彼が微塵にも思ってなかった返答だったのか、彼は思わず疑問の根を上げた。


「何驚いてんだよ。この隊には、リグの真剣な考えや頼み事を断る奴は居ないよ。言ったろ……?僕らは仲間ってさ」


「エゼル〜、その台詞臭すぎー!」


「はぁっ!?このタイミングでそれは無いだろ!」


「くっさー」


「臭くねえしっ!良い匂いでハーブの香りだから!!」


俺はまだ勘違いをしていた。

この隊は、このチームは、俺が完全に心を許して良い場所なんだ。


俺は、もう一人じゃない!



「……ん?リグ、何泣いてんの?」


「な、泣いてなんかねえよ!」


急いで涙を服の袖で拭い、彼は前を向いて歩き始めた。少し出遅れたけれど、変わらない。彼らと同じ道を。



「もうこんな時間だよ。そろそろ解散にする?」


「そうね、チトも疲れてたのかしら。いつの間に寝ちゃってるし。チト!チトー!ほら、起きなさい!帰るわよ!」


「んーっ、メロンパン……!」


気がつけば、時計の針が深夜一時を回っていたので各自解散となった。

ソファの上で気持ちよく寝ているチトをサディは起こそうと必死に頬を叩いたり、つねったりしているが起きる気配が一切ない。諦めて背負っていく覚悟を決めた時ーー彼女の口から可愛らしい言葉が出た。


「あっ、そう言えばエゼル。メロンパンは最近見ないけど何処にいるの?」


「シード戦とか魔闘演戯とか大きな行事がある時は、王宮内の魔獣管理室に預ける事を勧められたから先週預けたんだよ!」


「そうだったのね。エゼルが怖くて逃げ出したのかと思ってたわ」


「僕のどこが怖いんだよ!」


「わぁー、怖い。襲われるぅー!」


くだらないやり取りを止めようとしない彼女にチトを押し付けてその日は解散となった。このまま続けていれば朝まで喋り続けるハメになる。今日は、ニアとエトが部屋に訪問する日だと、約束を思い出してリグルスとキルスに別れを告げ、身支度を済ませてベッドに潜った。



ブクマお願いします( ´ ▽ ` )ノ


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