ドS最悪最低悪魔の本気
シード戦再開です(⌒-⌒; )
ーー三日の月日が過ぎた。
「いよいよ、Bブロックのシード戦も大詰め!このかっこ良くて最強だったはずの俺様をぶっ倒しちまったエゼルにうちの隊の猛者や"その他"含めての六人が生き残ったBブロック一回戦でしたが、今日はその中で一人のみが魔闘演戯シードとしての資格を得ることになるわけです!では、最初の試合に移りまっしょう!最初の試合はこの二人!!」
思いの外、意外と上手かった童貞の実況から始まったBブロック二回戦。
最初に現れるは、またも蒸気の中からのご登場。
「右コーナァァァ!鞭を振るえば、絶対服従!男の息子も簡単に踏み潰すドS悪魔!サディィィィ・エスティック選手だぁぁぁ!!」
「彼奴、なんであんなに上手いんだ・・・俺の計画が台無しだ・・・」
司令官は思いもよらぬキルスの実況の上手さに怒りを覚え、只ならぬ光を纏った槍を彼に向けて放とうとしていた。
「シー君落ち着いて!!気持ちは分かるけど、その槍を投げようとするのはダメ!!せめて全試合が終わったらにしてあげて!」
司令官ごと槍を吹き飛ばした女性は、司令官の肩を掴み、ゆらゆらと揺らしながら必死に引き止める。
「分かったよ、後で殺ることにする。止めてくれてありがとうな」
「良いのよ。今は試合観戦しましょ」
「いやいやいやいやいや!おかしいだろォォォ!?止めるなら辞めさせるくらいまで止めろよ!何で俺が自分の才能に見惚れてしまった司令官に殺されなきゃならねーんだよ!」
ブチッ。
※暫くお待ちください。
「げふっ・・・痛ってえ・・・。気、気を取り直して左コーナァァァ!!」
「彼奴すげえな・・・」
流石の実況者魂に若干引きながらも尊敬したのか、司令官は血に濡れた拳をタオルで拭いながら黙って席に腰を下ろした。
「力のためなら何でもする!自分の改造だって改造だって改造だってえええ!驚異の改造武器人間!メカル・ニックド選手だぁぁぁ!!」
両者ともに試合場である丸い涅槃の紋章が刻まれた円の中に足を踏み入れる。
直後に、円を象る線の隙間から防壁が内部を包み込むように貼られた。
「二回戦目は、このフィールドで戦ってもらうぜ!観客の皆様の安全が最優先ということで涅槃が独自に開発した特殊防壁で皆様をお守りするぜ!」
「そんなに広くないのに、防壁なんか張っちゃったらあのでかい武器から逃げる隙間が見当たらないじゃないのよ」
サディの前にいる大男は、元からのガタイが良いとはいえ、それを増強させるように両手には巨大なミニガンがセットされている。背中部分にもミサイル系統が入っていそうな箱や、腰には光剣が吊るされている。最早、武器であれば何でもある改造武器人間だ。
「逃げ場?そんなもん、お前には必要ねえなァァ!確かにお前の魔王武器は強え、叩いた相手を絶対服従だってな。だが、それは生身に当たらねば意味をなさないんじゃないかー?」
「うるさいわね。黙ってくれないかしら?」
彼女の手には既に黒とピンクの鞭が握られていた。鞭の矛先を男に向けて、彼女はそう言った。
「ふっ、お前は試合が始まった時には、大量の銃弾を撃ち込まれて死亡だァ」
男は狂気の笑みを浮かべながら、右手の親指を立てて、下に向けた。
「両者いがみ合っておりますが、バトォォォルスタァァァァトだぜ!」
童貞の開始の合図から、それ程に広くないステージで男の銃撃が始まった。当たれば確実に一発で即死級の速度を持った弾が流れる水のように連射されている。
「くっ、めんどくさいわね!」
サディは弾の間を華麗にすり抜けるように避けているが、回避に必死で相手に攻撃を仕掛けることが出来ていない。
「いつまでそうやってられるかなァ?俺様の能力は物質を鉄の弾丸に変える能力だ。つまり、無限に銃弾を撃ち込み続けることが出来るんだよ!!」
「そ、そんな・・・!」
回避し続ければ、いつか弾が切れてやり返しのチャンスがある。そう考えていたサディは、一瞬で絶望の淵へと追い込まれた。
「良いこと思いついちゃった〜♪」
ニヤリ。彼女は不敵な笑みを浮かべる。
すると、ひたすら鞭を振り始めた。誰に当てるわけでもなく、銃弾の軌道を推測しなら回避し、また振り続ける。
「なんだなんだ?頭でもおかしくなっちまったか?」
男はその様子を嘲笑い、銃弾を只管量産し連射し続けている。
彼女は笑いながら鞭を振り続ける。
その様子は延々と続くかと思われた。
「止まりなさい!」
彼女は突然立ち止まり、銃弾に掌を向けてそう言った。男は彼女を正気とは思っていないらしく、連射速度を速める。
が、撃ち出された銃弾は彼女の眼の前で服従したように止まり、空中を浮遊している。
「そろそろ、貴方もそのお荷物重いでしょう?」
金属と金属が擦れ合う音と破壊される轟音が辺りに響き、男の全身を纏っていた鉄の鎧が地面に落ちた。
「あらあら、そんなに重い物を背負って戦ってるなんてハンデでも提供してくれてたのかしら。
ごめんなさいね、そんなことに気がつけなかった私はまだまだ未熟…」
次から次へと鎧は体から外れ、音を立てて落ちていく。鉄の鎧が全て取れた時には、彼女の周りを浮く、無数の銃弾が彼に襲いかかった。
「・・・でも、そんな私に負けた貴方はゴミ以下ね。」
防壁によって銃弾が彼に当たることは避けられたものの、自分が一から開発した鉄の鎧やら武器やらを壊された彼の哀しみは計り知れないものだった。
「試合終了ー!ドS最悪最低悪魔のサディ選手!素晴らしい策略で絶対的な窮地を見事に乗り越えたァァァ!!勝者、サディ・エスティック選手!!」
わぁぁぁぁぁぁぁっっっ!
観客席からは熱気が溢れかえっている、この様子だと実況者のカイルにも負けていない実況っぷりだ。
エゼルは指名したのが自分ながらにも、キルスの才能を理解した。
「決勝戦進出しちゃったわよ、今日は決勝もやるみたいだからリグルスとエゼルは勝ち上がってくるのよ。私、負けないんだから!」
「「おう!」」
控室で準備をしているエゼルとリグルスと結束を固めあったサディは控室を余裕のある表情と態度で去って行ったように見えた。
本当は……。
「((やったぁぁぁぁ!!私がシードになれるチャンス!意地でも負けない!))」
完全に満面の笑みで喜んでいた。観客席に向かう途中の道とは言え、周りの人に見られているという自覚よりも喜びが勝ってしまった彼女の姿は試合にも普段にも見せないような無邪気な笑顔だった。




