ユリアスの言葉
《魔人学校》
16歳で魔人適応手術を受け、適応されるとこの学校に通う権利を得る。
特に通いたくないのであれば強制はしないが、通うことで自分の魔王武器とその能力をいち早く知り、実践授業で使用することが出来る。実践授業以外で魔王武器を使用するには、18歳になり、魔人学校を卒業して、各所属したい国から使用許可が下りれば正式に権利を得たことになる。
「魔人学校時代……サディさんはどんな人だったんですか?」
「変わらないわよ、今と。」
彼女は俯き、薄い苦笑を浮かべた。
「そうなんですか・・・」
「((今と変わらないってことは魔人学校の先生達は手を焼いたんだろうな〜;;))」
冷や汗をかき、彼女の魔人学校時代を想像する。どうしても、教員を奴隷にしている図が浮かび、彼は顔を赤らめた。
「エゼル、どんな想像してんのよ。私は大人しくていい子だったわよ?
ねっ!チト?」
「ここで私に振らないでよ・・・サディさんは、いつも先生に言うこと聞かせてた印象しかないかな…それと、あまり絡んだことないから分かんない;;」
「十分すぎる答えだね;;」
予想通り。というような表情を浮かべたエゼルにサディの怒りの鉄槌が下った。
「何、予想通りみたいな顔してんのよ!」
「いやー、だって今と変わらないってことはそういうことでしょ?」
「ぐっ・・・」
彼女は否定することが出来ず、童貞の椅子を蹴り上げて八つ当たりを始めた。
「物に当たるのは良くないよ。ほら、落ち着いて、お茶でも飲んでさ。話題変えよ!」
その後、何とかサディの機嫌は良くなり、三人でたわいもない話で盛り上がり、気がつけば、外が真っ暗だったので今日は解散となった。サディは帰る直後に椅子を童貞に戻した。
「リグ〜、キルスー、起きろー!」
彼らの額を手で軽く叩きながら声をかける。リグルスは数回で起きたが、キルスは何故か起きない。体の数箇所に青タンが出来ているのは恐らく彼女が強く当たった時に出来たものだろう。
「リグ、キルスを部屋に置いてから自分の部屋で寝てくれる?」
「おう、いいぜ。んじゃ、おやすみ!」
彼らを笑顔で見送ると、エゼルは風呂やらご飯やらを済ませて早くもベッドに入った。明後日には、試合が待っていることを夢の中で考えながら。
「ホッホッホッ、エゼル。起きるのじゃよ、ワシが久々に会いに来たというのじゃぞ」
「ユリアス様?何でここに・・・?」
夢の中。真っ白い空間は壁も天井も床も真っ白。そもそも、壁や天井があるのかさえ分からない場所にエゼルは居た。
目の前に立つ、白衣姿の老人はエゼルの恩人である元老院の一人、ユリアス・フェルト・ディザード。魔王武器を創り出した張本人でもある。
「今日はお前に少しだけ告げ口をしに来たのじゃ。本当はいけないことなのじゃが、これだけは絶対に譲れぬことなのじゃ、お前の選択を左右する重要なヒントだ。この現実を受け止めれば、お前はまた強くなれる」
「告げ口……?それは…?」
「慌てるでない。ホッホッホッ」
ユリアスは自分の縦に長い白髭を撫でながら笑った。全てを見透かす白銀の眼でエゼルの様子を伺いながら。
「お前の役目は、これからどんなことがあってもじゃ、仲間を信じること。例え裏切られても、傷つけられても、大切に大切に扱うんじゃ。それは、お前を苦しめる選択でもある。だが、それをも吹き飛ばして前に進むことが出来ればお前が望む道を歩むことができるぞい」
ユリアスの言葉に真剣さを感じる。普段はヘラヘラして冗談しか言わないことが印象のお方ではあったが、こんな表情をするとはよっぽどのこと。
エゼルは心の中にその言葉をしまいこんだ。いつか、思い出して自分を見失わないようにするための道具にしようと決意を固めて。




