彼女の意思
ちょっと短いですがすいません!!
何だかんだで後夜祭だったらしい勝者限定のパーティーは無事終了した。
終了後、急いで自室に帰ってベッドに潜り込んだリグルスだったが、昨日の女性の言葉が気になりすぎて結局朝になっても眠れなかった結果に。
翌朝、結局眠れなかったリグルスは歯を磨いていつもの様にエゼルに朝食を作ってもらい、正午の約束に間に合うように家を出た。王宮内にある転送式移動箱に乗ると、一気に最上階まで転送して目的の部屋に着いた。
沢山の書物が置かれている部屋に彼女はポツンと独りで椅子に座り、机に並べてある資料を眺めている。声をかけようと踏み出した時には、こちらに気がついてくれた様で彼女は笑顔でこう言った。
「よく来たね〜。まさか、夜眠れなかった?」
「い、いや、よく眠れたぜ。」
と、強がってはいるものの彼女目線からは目の下にクマを作った青年が必死に清廉潔白を証明しているという無謀な状態になっている。彼女はその可愛らしさに目を瞑った。
「・・・で、今日は何しに来たんだっけ?」
「俺の"あの出来事"の犯人に目星がついてるとか何とか言ってたやつだよ!」
「あー、それね。多分、覇壊龍の連中だと思うわよ。彼らは、基本的に能力を兵器開発の方へ持って行こうとする傾向があるのだけれど、一つ聞いたことがあるわ。狂増薬っていう能力で作られた薬のこと。」
彼女は真に迫った表情でリグルスに告げる。
「そんなもんが・・・でも、俺には少年が見えたんだよ!そこはどうやって説明すんだ!」
「嗚呼、それはね。この狂増薬はどうやら、貴方の時にはまだ完成していなかった様なの。不完全な薬には使用時にリスクが伴う、そのリスクは開発者が使用者に直接話しかけて狂気の部分を増強させなければならない。それはどんな些細なことでも良いの。取り敢えず、接することが確定すれば。そうすることによって、後々は全部薬が貴方を壊してくれる。因みにその青年に会おうと思えば会えるわよ。あまり、お勧めはしないけれど。」
「場所を教えてくれ・・・!」
「教えても良いけど、シー君に許可を得てからね。独りで行かせることは出来ないわ。敵地に独りで突っ込めるほど強くないもの、君。」
今ここでリグルスに場所も何もかも告げてしまったら真っ先に独りで向かってしまう。そんなことは手に取るように分かる。全てを見透かした態度で彼女は、そっとリグルスを抱き締めた。
「大丈夫、君はシー君が守ってくれる。私にしてくれたように、独りではないことを教えてくれる。君には、仲間が居るでしょう?だから、独りで行くなんて考えないで仲間を頼りなさい。私も目的の場所に行くなら同行するからさ。」
されるがままに彼女に抱き締められ、幼き頃の思い出を思い出した。
人間の母親と偉大なる吸血鬼の血を引いた俺は、吸血鬼の母にはない。人間の母親の優しさを身近に触れさせてもらえていた。何故か、そんな懐かしい母の温もりをたった今彼女に対して感じた気がした。きっと感傷的になっているせいでそんな気のせいで働いてしまったのだろう。そう思った。
「あっ、ごめんね!」
ハッ!となってリグルスから離れる彼女。無意識していたのだろうか、顔が赤い。
「ありがとな。来週のシード戦は、負けねえ!仲間も頼る!一回目の魔闘演戯が終わったらその場所を皆で聞きに来るぜ!」
「うん、待ってるね。」
笑顔で手を振って、見送ってくれる彼女に背を向けて彼は自宅へと帰って行った。彼が帰った後、軍服姿の男が彼女の部屋を訪れて一言言った。
「いいのか…?」
「良いんだよ、私がしたことはそういうことなんだから。後少しで私の願いが叶う。きっと嬉しいんだと思うよ」
彼女の綺麗な白桃のような色をした瞳は、涙によって歪んだように見えた。その一雫が零れ落ちる頃、彼女は過去の自分にまた後悔した。
このシーンだけは一つの話として書きたかったので少し短くなってしまいました。すいません()




