童貞キルス君(笑)
更新遅れました( ´ ▽ ` )ノ
「お前らに朗報というか。
まあ、お知らせだ。来週から学園内序列を決めるシード戦が始まる。お前らの学年は一学年だが、この大会に学年は関係ない。
組み合わせによるトーナメント形式で上位12名に勝ち残った生徒は、それぞれ異名を貰って《涅槃の暦書》に名を刻まれることになる。
この上位12名が、魔闘演戯のシードとなる。どうだ、ここまでわかったか?」
王宮の特設会議室という場所で、エゼル隊の全員は司令官の話を聞いていた。休み明けなのか、全員がダラけた様子で机に顔を突っ伏して半分寝ている。
「馬鹿共、起きろおおおおお!」
司令官の怒鳴り声と共に炸裂する、狂気の拳。彼ら全員に回った頃には、全員がシャキッとした状態で司令官の話を聞く態度に治った。
「魔闘演戯・・・」
エゼルは、辛辣な表情で拳を強く握りしめた。この大会で勝てば、自分の病を治すことが出来る道へ一歩前進できるからだ。
「それは全員強制なのか?」
リグルスが問う。自分の魔王武器である愛刀を肩で支えつつ、右手で撫でながら。
「いや、参加したくなければしなくても良い。だが、参加したくない奴など居るわけがない。此処に来たってことは、そういうことなんだからな」
司令官の予想を瞬間的に破る者が一人。
「なら、私は今回遠慮します。勝てるわけないので・・・」
そう声を上げたのは、チトだった。
戦闘分野では不安しかないらしく、今の自分の力量を理解した上での意見だったので司令官は了承した。
「((チト、キレたらヤバイのに・・・))」
その場に居たサディとチトを除く、男共はセルシアがされた行動が頭の中に浮かんで冷や汗をかいた。
「他全員は出るよな?」
快く"はい"と答えると、司令官は嬉しそうに会議室を出て行った。
これは解散という意味が込められているのだろうか、そんな疑問を残しながらエゼル達も会議室を出た。
「チト、あんた本当にいいの?」
大きい王宮内を歩いていると、サディがチトに話を切り出した。
当然、サディが疑問に思って口に出したことは、エゼル達も気になっていたことだ。
「・・・うん。今の私は何も出来ないから・・・エゼル君達の応援するよ!お弁当作ってくる!」
と、お弁当の話を聞いた瞬間に男三人組は鼻の下を伸ばして顔を赤らめた。
「男って本当に単純ね。まあ、チトが良いなら私は構わないけど」
((この子は、戦いを好まないわね。過去に何かあったのかしら・・・))
心の中でチトのことを真剣に考えるサディ、まだ分析するには情報が足りてない部分があるため、思考を止めた。
「やあ、また会ったね」
「あっ、エトさん!」
王宮の外へと繋がる大きな廊下で、銀髪の青年はまたエゼルに声をかけた。
自分のことを覚えててくれたことのさりげない嬉しさに、少しながら笑みを浮かべて彼は言った。
「来週から、いよいよ始まるね。
僕は、シードに意地でも残る予定だから君も勝ち上がって来てよ?そうじゃなきゃ、僕は退屈してしまう」
「はい!必ず、上に上がります!上で会いましょう!」
「その心意気だよ。楽しみにしてるね。さて、僕は行かなきゃ・・・またね。」
エゼルの心意気に安心したのか、安堵の息を零し、エトは去っていった。
「おい!エゼル。お前、エト・アルカディナさんと知り合いなのか?!」
その様子を後ろから見守っていたキルスが声を上げてエゼルに問う。
「え?うん、前に声かけてもらって・・・でも話すのは二回目だよ。なんで、童貞が知ってるの?」
「ちょっと待て、童貞と書いてキルスと読むのは絶対おかしいだろおおお!!」
と、童貞は発狂気味に叫びながら自分が童貞であることを認めつつもその悲しい現実から目を背けんと必死に悶えた。
「おいぃぃぃぃ!!やめろ!その変なナレーションとエゼルの呼び方ぁぁぁぁ!!!!」
「うるさいわね!踏み殺すわよ!」
と、童貞のうるささにキレたサディが飛び蹴りを食らわした。
「やめろってええええ!!」
「ところで、エトさんのことなんで知ってるの?」
ノリに飽きたエゼルは本題に入ろうと、呆れた様子で話しを振った。
「飽きたって、自分から振ってきたんだろうが!!」
「ハイハイ、早く話してよ」
軽く流しながら、話が進まないと面倒に思って、雑な話の振り方になった。
「嗚呼、エト・アルカディナさんは、魔闘演戯前大会の準優勝者で、付いた異名は《光帝》。光魔法の頂点に立つ、最強の皇帝って呼ばれてる。因みに学年は俺達の一個上の二学年だよ。でも、そう考えると・・・俺らの代で魔闘演戯準優勝者になっちゃう人なんだよお〜!めっちゃ、カッケェー!!」
キルスは憧れに満ちた目で天を見つめながら、説明をしている。目の焦点が合っていないので、きっと自分の世界に入り込んでしまったのだろう。
「そんな凄い人だったのか・・・でも、優勝するなら乗り越えないといけない壁だ。絶対に負けない!」
エゼルが決意表明をしてから少しの時間が経って、シード戦前日となった日。
エゼルは、自室でダラダラと過ごしていた。この日になるまでの時間、ずっと魔力制御の練習や様々な鍛錬を施し続けた結果なのか疲労もたまっている。
少しの仮眠を取ろうと、持っていた端末をソファの隙間に挟み、目を瞑った。
ピピピッ、ピコンッ。
タイミングの悪い、通知音。
「本当にタイミング悪いなあ・・・」
閉じたばかりの瞼を開き、端末の液晶画面に視線を当てる。
どうやら、通知は司令官からのようだ。
"対戦表"と書かれたデータを開き、そのまま直視する。
「第一回戦の相手は・・・キルス・エーヴェルバイト!?」
自分の一回戦の相手が同じ隊に所属する童貞だと言うことに驚きが隠せないエゼルだったが、数分後に"なんとかなるだろう"という考えと睡魔に押し潰されて瞼を閉じた。
ーー一方その頃童貞は。
「は!?明日の相手がエゼル?嘘だろ・・・明日は最高にカッコよく相手を撃破する予定だったのに、これじゃ最低にカッコ悪く撃破されちまう・・・」
と、ガッカリな声を上げて、ベッドに潜り込んだ。※お昼二時頃です。
そんな二人は明日激突し合うことに。
エゼル隊隊長VS童貞キルス。
勝負は見えているようなものだが、きっと逆転はある。
そんな期待を胸に童貞は枕を濡らしながら眠りについた。
勝利の女神がどちらに微笑むかは、まだ分からない。
次回からはシード戦です( ´ ▽ ` )ノ
バトルの描写、自分なりに頑張りますですぜ\(^o^)/




