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メロンパン(笑)

「なんですかこの王道のパターン・・・」


「ああ、ちょいあいつぶん殴るわ」


司令官は髪をワシャワシャして、いつもの短髪スタイルに戻すと奥で慌てふためく男に一発、いつものゲンコツを食らわし、首根っこを掴んでエゼルの方へ歩きながら引っ張ってきた。


「あー、エゼルすまんな。今日呼んだのは、団体の隊長に授けられる魔王獣(まおうじゅう)ってのを選んでほしくてな。こいつは、それ担当のボンバー・サイトウだ。話はこいつから聞け。」


「あ、はい」


素っ気ない返答をすると、頭に大きめのたんこぶを作った白衣の男が頭を擦りながら目の前に立ってこう言った。


「やあ、君がエゼル君だね。

これでも僕は気配を感じ取ったりするのが得意な方なんだけど、君の気配は感じなかったよ。いやぁ〜、凄いね!本当なら解剖して・・・あ、話が逸れた。君の好きな魔王獣を選んで欲しいんだよ!ほら、この三匹さ!」


ボンバーは、自分の後ろにある大きめの檻三つを指して言った。

中には、それぞれタイプの違う獣が入っている。エゼルはどれを選ぶか、真剣に檻の横に書かれている詳細に視線を移した。




一番右にある檻には、蒼炎の龍と書かれており、中には小さな蒼龍が居た。

可愛らしい顔つきをしていて、性格の特徴に内気と書かれている。


真ん中にある檻には、不死鳥と書かれている。中には、神々しい炎の羽を持った小さな鳥が居た。性格の特徴は、負けず嫌い。


左の檻には、白虎と書かれており、全身に雷を纏っているのか空気を振動させる音が聞こえる。性格は短期。


この三匹の中から決めるとなると、一匹に絶対絞られることになるだろう。

エゼルは黙って蒼龍の檻を指差してにこやかに笑った。


「やっぱり、そいつか。蒼炎の龍の生き残りなんて早々居ねえぞ。なんせ、この国の守り神だからな。まあ、大事に育てろ!」


司令官は平素な表情で蒼龍に驚きもせず、そう言った。

エゼルが聞いた話では、《蒼炎の龍》というのは、ニルヴァーナを創った《元老院》であるソルト様が過去に守り神としてこの国に置いた龍で、空のように蒼き体を持ち、燃えゆる炎のように赤い眼をしている。今でも国が絶体絶命の時には守ってくれるという実在さえも分からない龍だ。

そのままの疑問を司令官へぶつけた。


「前に龍を拘束する時、蒼炎の龍ではないかと疑ってましたよね?何故、この蒼炎の龍では疑いもせず、またや、驚きもしないんですか?」


エゼルの質問に、突っ込まれることを望んでいなかった司令官は辛辣な表情で答える。

その理由は、少しだけ強引な話でもあった。


「まあ、そうなるよな・・・。実は、お前の恩人の元老院様からエゼルの魔王獣はコレにしてくれとお願いされたんだ・・・うん。このことは内密で頼む。」


司令官だって分かってはいた。

国の守り神として元老院様が創った伝説の龍が実在していたことは。

しかし、この頼みの連絡が来た時、司令官は一つ疑問に思った。

隊長がエゼルになった話は、約一週間前。

元老院様の居る《|終わりの始まりの島(リエンド島)》に情報が行くのは最低でも二週間はかかる。

だが、頼みが来たのはミルニアの件が終わった次の日の夜。

どうも疑問に思うことが沢山あるわけだが、元老院様ともあるお方なれば未来を予知なんてことも出来ないこともないであろう。

そう自分に言い聞かせて来たものの、ここに来てまた疑問が湧いたのでエゼルに直接聞くことにした。


「え?あー・・・その二週間後っての嘘ですね。元老院様に情報が届くのは、光の速さです。んと、自分たちの創り出した世界に居る全ての生物の情報は元老院様が管理しているんですけど、元老院様方達はコレを《世界日記(ワールド・ダイアリー)》と呼んでいます。あまりペラペラと話すと怒られるんでこの話は内密で。」


エゼルは司令官の質問に嘘偽りなく簡潔に答える。

最後にニッコリと笑顔で口元に人差し指を立てて"内密"の意味を強調させるような合図をした。


「了解。後、エゼルの魔王獣の登録は済ませてある。学園側も公認の魔王獣だ。懐くまで都市内を散歩してきたらどうだ?」


「有難うございます!行ってきます!」


元気よく、龍を連れて研究所を飛び出した。王宮内を走り回りながら、龍と戯れる。


「僕はエゼル!よろしくね!」


「キュゥーン」


龍は、まだエゼルを警戒しているようで抱かれながらにも少しの抵抗を見せている。


「まずは打ち解けてから・・・かな」


エゼルは冷や汗を額に垂らしながら、抱えている蒼龍の固い鱗を撫でて、そう言った。

性格に、内気と書かれていたからにはそうなのだろう。エゼルは自分が忘れられないように愛情を注ごうと強く決心した。



***



「んで?エゼルー、その龍の名前は?」


ミルニアの一件から、大分活躍を見せたエゼル隊は一週間の休暇を貰っていたのである。今日はその休暇の最終日ということもあって、全員が王宮前の広場に集まって居た。

サディがエゼルの後ろをトコトコと歩く、青い龍を指差して言った。


「え?名前?あっ、そういえば決めてなかった・・・」


「あんたねえ・・・どんな奴隷(ペット)も名前を付けてあげないと自分の名前がわからないでしょーに。」


「なんか、サディが言うと別の意味になってくるからやめようか」


ペットの発音が自分の知っている発音とは少し違ったように聞こえたエゼルはすかさず付け足す。その後のサディの"何よそれ!"というキレ気味の返答を無視して名前についての思考を回した。


龍を貰ってからというもの、なんだかんだで丸二日経ったが名前を呼ぶにも"龍"と呼んでいたので全く気にならなかった。



「チト〜、あんたなんか良い名前教えなさいよー」


と、階段に腰を下ろした天使のような存在であるチトにサディが無知な振りを振った。チトは困惑した様子で突然に。


「メロンパン!」


と言った。


「え・・・なんで・・・?」


すると、真面目な表情で。


「メロンパン可愛くて美味しいから!」


その言葉と共に天使の笑顔が発動されると、エゼルは癒された顔で"うん、それで"と満足したように肯定した。


「・・・ってダメに決まってるじゃない!なら、間をとってメロンにしなさいよ!」


「そうだね、名前長いし。メロンも十分可愛いよ。ね?チト」


サディの言葉に、短い方がいいと判断したエゼルは肯定して言い出しっぺのチトに確認を取った。


「えー・・・メロン可愛くないよー。あんまり好きじゃない・・・」


「よし、名前はメロンパンで決まりだね!」


サディの頭の上には"揺れすぎな、こいつ!"と怒りマーク付きで心の声が現れた。

こうして、龍の名前はメロンパンに決定した。

次回からまたシリアス始まりますw

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