第25話 襲撃④
「思ってた以上にダンジョンの侵食は進んでるみたいだな」
「そうなんですか?」
「あぁ。あいつ、森の中から出てきた。あそこはさっき侵入できなかったところだ」
「そういえば……」
さっき探索に出た時は森の中に分け入ることはできなかった。
そして、刀夜さんは完全にCランクになれば森の中にも入れるようになると言っていた。
今、ボスモンスターが森の中から出てきたということは、このダンジョンがまた少しCランクに近づいたということだ。
森の中を行き来できるのはモンスターたちだけで、俺たち探索者はまだ森の中に入ることはできないかもしれないが、モンスターが通れるようになってからしばらくすれば探索者も通れるようになるらしい。
どちらにせよ、ダンジョンがCランクに近づいたということは間違いない。
しかも、ボスが出てきてモンスターたちが撤退していったということは、ここにいるモンスターたちは完全にあのボスモンスターの支配下にあるということだ。
そんな話をしているうちに、モンスターたちはボスモンスターの前で隊列を組む。
まるでマスゲームでもしているかのように縦横がぴっちりと揃っている。
あいつらがさっきまでゾンビみたいにバラバラに攻撃を仕掛けてきていたなんて嘘みたいだ。
モンスターたちの隊列が整うとボスモンスターはゆっくりと刀を天へと掲げる。
「……くるぞ」
そして、ボスモンスターが刀を振り下ろすと同時に、モンスターたちは一斉に砦へと向かって駆け出した。
「「「「「「「「「「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」」」」」」」」」」
モンスターたちの雄叫びが大気を震わせる。
俺は思わず一歩後ずさってしまう。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ」
京子がスッと俺の背中に手を添えてくれる。
京子はモンスターたちの雄叫びにそこまで怯えていないみたいだ。
朱莉と雅も怯えた顔をしているので、どうやらあの雄叫びの影響を受けたのは俺だけじゃなかったみたいだ。
京子が怯えていないのは覚醒を果たしたからだろうか?
刀夜さんもあまり辛そうな様子がないのでその可能性は高いと思う。
CランクとDランクの差は俺が思っていたよりも大きいのかもしれない。
スキルを受けた時の嫌な感じがないから、あの雄叫びは多分スキルじゃない。
ただの雄叫びでここまでの影響を与えてくるということは敵がスキルを使ってくれば、これ以上の影響を受けるということだ。
俺もできるだけ早く覚醒に至らないといけないな。
「……」
京子の手から温かい何かが流れ込んでくる。
どうやら、京子が支援魔法をかけてくれたみたいだ。
朱莉たちにも魔法をかけたようで、二人の顔色もだいぶ良くなっている。
刀夜さんが言っていた通り、京子の支援魔法があれば十分に戦えそうだ。
雄叫びの効果が薄れてくると冷静に状況の確認ができるようになってくる。
雄叫びを上げて迫ってくるモンスターたちはまるで一つの生き物のようだ。
その上、今までは引っかかっていた堀や有刺鉄線も避けて砦へと迫ってくる。
戦闘開始は目前だ。
俺は小太刀に手をやって戦闘体制に入る。
ーードン!
大きな音がして、地面が少し揺れる。
どうやら、モンスターたちが砦の外壁に到達したみたいだ。
「心配すんな。この程度じゃぁ雅の作った砦は敗れねぇよ」
だが、その揺れはすぐにおさまった。
砦はびくともしていない様子だ。
今も『ドドドド』と断続的にモンスターたちが砦にぶつかる音が聞こえてきているが、砦はびくともしていない。
「すごい」
「この砦は結構なリソースがあるからな。さっきサグルが挑戦したアスレチックコースとかは結構なリソースになってるだろ」
どうやら、砦にもHPのようなものがあり、それがゼロになるまでは砦本体には攻撃が通らないのだそうだ。
そして、そのHPは砦のリソースを増やすことで増やせるらしい。
砦が大きければ大きいほどリソースは増えるし、リソースは別に強さとは関係ない部分でも増やすことができる。
例えば、家具を置くとか、部屋を増やすとかだ。
リソースを増やすためにはアイテムを使わないといけないので、無尽蔵に増やすことはできない。
それに、砦を建てている途中もモンスターが攻めてくるから今回みたいな大きな砦は作れないそうだ。
小さい砦にできるだけ効率的にリソースを増やすために、砦の中はごちゃごちゃしたものになるそうだ。
今回は大槌家の支援のおかげでアイテムは潤沢にあったし、砦を建てている間はモンスターも攻めて来なかったので、かなり大きな砦を建てることができた。
この砦のリソースはかなりのものになっているそうだ。
確かに、あのアスレチックコースはかなり凝ったものだったので、その分リソースも相当だっただろう。
それを見越してあんな凝ったアスレチックコースを作っていたのか。
てっきり遊びで作ったものだとばかり思っていた。
「「「……」」」
そう思って雅たちの方を見ると、三人には目を逸らされた。
どうやら、あのアスレチックコースは実用性のためではなく趣味百%だったみたいだ。
結果的に役に立ったからよしとしよう。
結果良ければ全てよしだ!




