第19話 雅城!爆誕!!②
「そろそろ出ますかね?」
「わからん。だが、そろそろ出てもおかしくはねぇ」
これまで戦闘ができなかったのは俺たちが逃げ隠れしていたからではなく、一時間探索してもモンスターと出会わなかったからだ。
不意打ちをされても面白くないので、結構頑張ってモンスターを探していたが、モンスターは影すら見つけられなかった。
ランクアップ現象中なので、前に巻き込まれたEランクからDランクへのランクアップのようにモンスターが探索者を排除するために襲いかかってくるのかと思っていたから、少し拍子抜けしている。
「やっぱり、妖刀が原因なんでしょうか?」
「多分な。外部のモンスターがダンジョンのボスになるとこういう感じになるそうだ」
ダンジョンはこのダンジョンのように外部からCランク級のモンスターが侵入してボスになり変わることでランクアップする場合がある。
その場合、新しいボスもダンジョンにとっては異物に当たるので、ダンジョンを新しいボスが掌握するまでの間はモンスターは侵入者である探索者ではなく、新しいダンジョンボスの方を攻撃するそうだ。
中にはそのままダンジョンのモンスターが新しいボスを倒してしまい、ダンジョン自体が消滅する場合もあるのだとか。
ダンジョンモンスターはダンジョンボスの命令に絶対服従だ。
よくわからんやつに従うくらいなら死んだ方がマシと思っているのかもしれない。
「このまま消滅してくれるって事はないですかね?」
「あの妖刀は結構な手練だったから、無理だろうな。ダンジョンが自己消滅するなんて事はかなり稀なケースだ」
「ですよね」
海外にあるSランクダンジョンの中には外部にモンスターをばら撒いて外のダンジョンを侵食して行くタイプのSランクダンジョンも存在するらしい。
周りのダンジョンをランクアップさせてしまうダンジョンなので、他のSランクダンジョンより脅威度が高く設定されており、結構研究は進んでいるそうだ。
俺たちがパーティで話をしている間に刀夜さんはその辺の情報を色々調べていた。
雅がめちゃくちゃ興味を示していたので、刀夜さんが読んでいた資料も後で見せてくれることになっている。
というか、上級探索者になれば読んでいいことになっている資料だそうなので、隠れ里にいけば同じ資料が確認できるそうだ。
他にも危険度が高くて世界的に共有されている高ランクダンジョンの情報があるそうなので、俺も時間がある時に見てみようと思う。
情報は嵩張らないし、持っておけばいざという時何かに役立つかもしれないからな。
「ダンジョンモンスターがダンジョンを掌握する時間はまちまちで、なげぇ時はダンジョン内時間で一週間以上かかる場合があるらしいが、あの妖刀みたいに他者を操る能力を持ってるやつだと比較的早いらしいからな」
「そういえば、あの妖刀は一夜さんだけじゃなくて他のモンスターも操ってましたね」
あの妖刀はダンジョン内のモンスターもかなりの量操っていた。
どうやら、自分が傷をつけた相手を操ることができるみたいだ。
雅たちみたいに怪我をさせられた探索者が操られていなかったので、その能力はそこまで高くないようだったが、モンスターに効くのであればこのダンジョンの掌握には有用に使うことができるだろう。
それに、その能力のせいで俺たちは妖刀がダンジョンの最奥に辿り着くまでに捕まえることができなかったんだし。
ほんとに厄介な能力だ。
「幸か不幸か、あいつがダンジョンに逃げ込むためにダンジョンと外の世界を繋げた。おかげであいつがダンジョンボスになり変わってからそれほど時間が経ってねぇ。まだあいつもCランクのボスには至ってねぇだろう」
「そうですね」
ダンジョン内では十倍のスピードで時間が進む。
この原理については色々と使えそうなので、かなり研究が進んでいるそうだが、まだ原理については全くわかっていない。
特殊相対性理論によると運動エネルギーの高い状態だと低い状態に比べて時間がゆっくり進むので、魔力エネルギーも高い状態だと低い状態より時間がゆっくり進むのではないかというのが今の一番メジャーな考え方だそうだ。
魔力量の多い上級探索者は老化がゆっくりなのも体内に魔力エネルギーを大量に溜め込んでいるからではないかと言われている。
だが、あの亀裂によって現実世界とダンジョン内が繋がってしまったので、ダンジョン内の時間の進むスピードが現実世界と一緒になった。
ダンジョン内をダンジョン外と物理的に繋げると何故かダンジョン内の時間の進むスピードがダンジョン外と一緒になるのだ。
そのため、ダンジョン内時間でもまだ一日も経っていないはずだ。
できるだけ早くボスを見つけてダンジョンを攻略しないといけない。
時間が経てば経つほどこのダンジョンは強力になっていくのだから。




