第43話 ほーん?そうかぁ??②
「えーっとどちら様でしょうか?」
「お前こそ誰や? 雅の友達かなんかか?」
男の方が俺を睨みつけてくる。
この感じだと雅の関係者みたいだ。
でも、雅の顧客には全員会ったことがあるが、目の前の二人組のような人はいなかったはずだ。
そういえば、雅は雑貨屋をやっていると言っていたから、そっちの方の客か?
でも、ただの客にしては雅に対して馴れ馴れし過ぎるような気もする。
「お父さん? お母さん?」
「「雅!」」
俺の後ろから雅が顔を出し、二人に声をかける。
どうやら、この二人は雅の両親のようだ。
それなら大丈夫だろ。
二人は俺を押し退けるように店舗の中に入ってきた。
俺は抵抗せず二人に道を譲る。
「本家から連絡きたで! なんで俺らに連絡してこんかったんや!」
「怪我ない? なんでこんな危ないことしたん?」
二人は雅のすぐそばに駆け寄り、心配そうに雅の様子を観察しだす。
なんか、雅から聞いてたイメージと結構違うな。
もっと職人って感じの人たちをイメージしてたんだけど。
どっちかっていうと、下町のおっちゃんおばちゃんって感じの人たちだ。
「二人とも落ち着いて。大丈夫やか……大丈夫だから。僕は怪我もしてないよ」
「ならえぇんやけど」
「よかったぁ。本当によかった」
「ちょ、お母さん。抱き付かないでくれ」
雅の父親は安心したように胸を撫で下ろす。
母親の方は雅の無事を確かめるかのように雅のことを抱きしめていた。
……こうやって家族の仲睦まじい様子を見ていると俺も母さんに会いたくなってくるな。
母さんは元気にしてるかな?
今度一度帰ってみるか。
「……それで、この人たちは誰なん?」
雅の母親が俺たちの方に視線を向けてくる。
敵意は感じられないし、おそらくある程度予想はついているのだろう。
「そうや。紹介してもらってえぇか?」
雅の父親が俺の方を睨みつけてくる。
なんか敵意をめちゃくちゃ感じるんだけど、別に俺は雅の彼氏とかじゃないですよ。
「紹介しよう。僕のパーティメンバーの大穴サグルくん、矢内京子くん、有村朱莉くんだ」
「えーっといつもお世話になってます。大穴探です」
「初めまして。矢内京子です」
「こんにちは。有村朱莉です」
「ほーん? そうかぁ??」
雅の父親は俺から視線を外さない。
完全にロックオンされてるみたいだ。
俺は雅のパーティメンバーですからね?
別に雅の彼氏とかじゃないですからね?
「三人とも、紹介するよ。こっちが僕の母親の大槌静香」
「初めまして。娘がお世話になってます」
静香さんは立ち上がり、深々と頭を下げる。
優しそうな女性で、どことなく雅と雰囲気が似ている。
「そして、こっちが残念なことに父親の大槌健だ」
「な! 雅! 残念なことにってなんや!」
「僕のパーティメンバーのサグルを睨みつけるような人が父親なんて残念以外の何者でもないよ」
「確かに。そりゃそうやわ」
「な! 静香まで!」
三人は楽しそうに話を始める。
相当仲のいい家族みたいだな。
お客さんにペコペコする両親を見て探索者を志したと雅が言っていたからもっと家族仲は険悪なのかと思っていたが、予想よりずっと仲がいいみたいだ。
いや、尊敬する家族だからこそ、下手に出ていたのが気になったのかもしれないな。
「雅。俺たちは今日は帰るよ」
「え?」
「せっかく家族が来てくれたんだから、家族水入らずの時間を過ごしてよ」
雅は少し困ったような顔をする。
両親と過ごす時間も楽しみだが、俺たちに悪いとも思っているんだろう。
「しかし……」
「……せやね。今日は雅を借りさせていただきます」
「お母さん!」
「私だって久しぶりに雅と会うねんから色々話したいこともあるんやで? 雅は私たちと話したくない?」
「そんなことあらへんけど」
「よかった。じゃあ、雅は借りていきます」
「さっさと帰れ」
「お父ちゃん? あんまり失礼なことばっか言うとお父ちゃんにも帰ってもらうよ?」
「申し訳ありませんでした!」
健さんは俺に向かって深々と頭を下げる。
どうやら、健さんは静香さんに頭が上がらないみたいだ。
「あぁ。今日は雅を貸してもらいます。でも、みなさんにも用事があるから明日この工房に訪ねてきてもらっていいですか?」
「俺たちに用事ですか?」
「はい。今回の件もあって本家から色々通達も来ていて、その辺をお伝えしないといけないんです。もしみなさんが明日都合が悪いようでしたら別の日にしてもらってもいいですけど」
「いえ、俺は大丈夫です」
「私も大丈夫です」「私も大丈夫」
「じゃあ、また明日ということで」
「はい。また明日」
俺たちは大槌の家族を残して帰路についた。




