第40話 お? 怒っちゃった? 怒っちゃったかぁ?①
「お疲れ様」
「またね。雅ちゃん」
「あぁ。また。志保くん」
雅はサグルたちと別れて自分の工房へと向かっていた。
今日は金竜会とのゴタゴタがひと段落したので、今日このお弁当をみんなで食べた後それぞれ家に帰って休むことにしたのだ。
一番近くに住んでいる志保とも別れて、雅は一人、工房へと向かった。
契約魔法を結んだ以上、金竜会が敵対してくることはないだろう。
もし、敵対してくれば金竜会は相当なダメージを受けるはずだ。
間接的に攻撃しようとしても無駄だ。
意識的に行動すれば必ず繋がりが見つかってしまい、契約魔法により大きなダメージを受けるようになっている。
ダンジョンGo!は人の心から生まれるダンジョンに関するものなので、邪な気持ちは見透かされてしまうのだ。
逆に、無意識の行動は違反行為でも契約魔法の効力外になってしまうのだが。
後で契約魔法経由で罰を与えることはできるので、無意識にやればなんでも許されるわけではないんだが。
そんなことを考えているうちに雅は自分の工房へと辿り着く。
「ふぅ。疲れた」
雅は工房奥の部屋のベッドで横になる。
工房の方はまだ片付けただけの状況になっている。
お気に入りの家具なんかを探してまた部屋を整えないといけないな。
(いっそのことゼロから作ってしまうというのもありか?)
魔導装備技師になり、雅の器用さは上がっていた。
DIYでテーブルや椅子を作ることもできるだろう。
ドロップアイテムで効果を加えれば、今度は壊されないものが作れるかもしれない。
なんにせよ、行動にするのは明日にしよう。
見たいアニメも溜まっているし、今日はその辺の消化をする必要がある。
そう思い、雅はパソコンの置いてある机へと向かう。
ーーピンポーン
「ん? 誰か来たのか?」
雅が机の前まで来た時、工房のチャイムがなった。
この工房に訪ねてくる人間なんてそういないはずだ。
生産職としての顧客には今日は金竜会とのゴタゴタが片付いたという連絡と一緒に今日は休みにするという連絡を入れている。
だから、今来る人間はいないはずだ。
(もしかして、雑貨屋の方の客かな?)
雅の工房は表向きは雑貨屋となっている。
たまに同士がかっこいい雑貨を買いにくることもある。
そちらのお客さんには休業の連絡ができていない。
元々不定期で開いている店なのであまりお客さんは来ないのだが。
それに、雑貨屋としての商品は金竜会の人間に全て壊されてしまったので、また買い集める必要がある。
せっかく来てもらって悪いが、今日は帰ってもらうことにしよう。
――ピンポーン
「はいはい。今開け――」
雅が奥の部屋から店舗部分の方に出てきた瞬間、入り口の扉が吹き飛んだ。
「……」
元々壊れかけの扉を簡易的に修理していたものだったが、吹き飛ばすなんてことは簡単にはできないはずだ。
雅は警戒心を強める。
「よぉ〜。ミヤビ〜。久しぶりだな」
扉の向こうにはどこか見覚えのある一人の男が立っていた。
「……大沼京平、かな?」
「そうだ!」
一瞬、雅は目の前の男が判別できなかった。
それもそのはずだ。
大沼京平といえば、いつも高そうなスーツを着ていて、高そうなネクタイを締めていた。
だが、今はスーツのジャケットは着ておらず、シャツもヨレヨレだ。
いつものできるサラリーマンといった雰囲気からかけ離れていた。
「お前のせいで俺の人生無茶苦茶だよ!」
大沼はそう言って壁を殴る。
すると、その一撃で壁に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
流石は探索者企業である金竜会。
スカウトマンも相当な強さの探索者みたいだ。
だが、おかしなことがある。
「契約魔法で金竜会の人間は僕たちに危害を加えられないはずだが、どうして君は攻撃ができているんだい?」
「あ? あぁ! 俺は金竜会を辞めたからな! 契約魔法の範囲外だ! あの場所は俺が活躍するには狭すぎたんだよ!! ハハハハハハハハ!!!」
「なるほどね」
狂ったように笑う京平を見て雅は納得をする。
どうやら、京平は契約魔法とは関係なく金竜会を辞めたようだ。
そのため、契約魔法の効力が及ばなかったらしい。
それならやることは簡単だ。
目の前にいるこの男を倒してしまえばいい。
「全く。お前はいつもいつもいつも。目障りなやつだ」
「いつも?」
「そうだ! お前は探索者だった時から目障りだった! 俺たちが必死で上り詰めたところまで一足飛びでやってきやがって!」
「……」
どうやら、雅が探索者としてダンジョンに潜っていた頃から京平は雅のことを知っていたらしい。
雅には身に覚えがないのでただのやっかみだろう。
パワーレベリングこそしてもらえなかったが、雅は実家の知識を駆使して結構なハイペースでダンジョンのランクを上げていた。
サグルほどではないが、当時は攻略ペースの速さに有望新人と言われていたということも知っている。
まあ、それも膝に呪いを受けてしまうまでだったが。
「全く。俺の呪いを受けた時におとなしくしてればよかったってのによぉ!」
「……は?」




