第12話 俺、なんかやっちゃいました?①
「これまたすごい量だね。あ、これだけあるならDランクのドロップアイテムだけでいいよ」
「そうか? そこまで量が多いとは思えないが」
俺たちはドロップアイテムを取り出す作業をやめる。
雅は自分の目の前に積み上げられたドロップアイテムの山を見て絶句していた。
俺たちとしてはそこまで大量にあるとは思っていなかったのだが、雅からしたら大量だったようだ。
ここは、「俺、なんかやっちゃいました?」とか言った方が良かったのだろうか?
雅なら乗ってくれそうだ。
だけど、今は隣に京子と朱莉もいるんだよな。
一般人の友達と一緒にオタク仲間に会った時ってどう対応したらいいのか悩むって聞いたけど、本当のことだったんだな。
こんな悩みができるってことは俺もリア充の仲間入りしたってことかな?
いや、調子に乗ったらダメか。
「いやいや、かなりの量だよ。しかも、ボスである大醜兎の牙まであるじゃないか。Dランクダンジョンを攻略済みっていうのは本当だったんだね」
「信じてなかったのか。まあ、それはランクアップ現象に巻き込まれた時に手に入れたやつだけどな」
「そういえば、ランクアップ現象の対処もしたんだったね。しかも力技で、すごいじゃないか。攻略法を知らずにランクアップ現象を乗り切ってしまうなんて普通できないからね。早く次のランクに進みたいっていうのもわかるよ」
雅は納得したように何度もうなずく。
どうやら、ランクアップ現象はボスを倒せば終わるので、ボスを探して倒すっていうのが正規の攻略法なのだとか。
あんなモンスターの津波の中でどうやってボスを探すのかと思ったが、どうやら、それはボス部屋の近くにいた場合の対処法らしい。
ボス部屋の近くにいた場合、ランクアップ現象が起きれば速攻でボス部屋に乗り込んでボスを倒すのだそうだ。
それ以外の場合はなんとかして脱出するしかない。
そうでもなければ普通、ランクアップ現象は生還できないらしい。
「まあ、Dランクに分類されてはいたけど、多分あいつらはそこまで強くなかったからな。ランクアップ現象中だったから、Eランクに毛が生えた程度の強さだったんだと思うぞ? 武器も壊れなかったし」
ランクアップ現象の時倒したモンスターはDランクに分類されていたが、あいつらとの戦闘中に武器は壊れなかった。
おそらく、ランクアップ現象中のモンスターはギリギリDランクに分類されるけど、そこまで強いモンスターじゃなかったんだと思う。
あそこで武器まで壊れていたら相当やばかったから、弱くて本当に助かった。
「そうだと思うよ。多分ランクアップ現象中は準Dランクってくらいのランクになるんだと思う。DランクダンジョンがCランクにランクアップするときはランクアップ現象が現実時間で一週間ほど続いて、その間は準Cランクとして扱われるそうだ。準Cランクのモンスターは見た目CランクだけどDランクより少し強い程度だからそれが発生したら大量の探索者を投入して力技で攻略するそうだよ。Cランクからはかなり難易度が上がって物によってはBランクの探索者でも攻略できなかったりするそうだからね」
「へー」
雅の知識は相当なものだった。
俺たちの知らないことでもすらすらと出てくる。
正式に加入してくれれば俺たちに足りてなかった知識面でのサポートもお願いできるかもしれない。
加入してくれなかったとしても、これから、武器の製造なんかでお世話になる予定なのだ。
ヘルプ先生に聞いてわからなかった時は雅先生に聞きにくればいいってことだな。
「そうだ。防具も作るから、みんな採寸をさせてもらっていいかい?」
「「「え?」」」
「防具は自分で作る時は自動で自分にフィットするサイズになるんだけど、他人のを作る時はちゃんとサイズを指定して作らないといけないからね。まずは女性陣からだ。さあ、男は出てった出てった」
「え? ちょっと」
俺は雅に追いやられるように工房の外まで連れていかれる。
「こっちが終わったら連絡するから、それまで少しその辺りを散歩しておいてくれ。(今日はこの辺りをまだ見て回っていないだろ? せっかくなら楽しんでくるといい)」
「(そうか。わかった。ありがとう)」
雅は俺にだけ聞こえるくらいの声でそう言ってくれる。
どうやら、俺がアキバを回るチャンスを作ってくれたようだ。
今日は何か目的があってアキバに来た訳じゃないが、せっかくならご厚意に甘えてちょっと回ってこようかな。
何も買わないとしても、見て回るだけでも楽しいからな。
チェックしてなかった名作とかが見つかる場合もあるし。
「少しデザインとかも合わせたいから、最低でも一時間はかかるからね。じゃあ、また後で」
「あぁ」
雅の工房の扉がパタンと軽い音を立てて閉められる。
その直後、カチャリという鍵が閉まる音まで聞こえてきた。
……なんか、ちょっとのけものにされたような気分だ。
やっぱり、リア充の仲間入りしたっていうのは錯覚だったな。
「いや、採寸しているから仕方ないんだ。だから、これはハブにされた訳じゃない。……最後の一人は男のパーティメンバーを入れたいな」
俺は自分にそう言い聞かせ、どこに行こうか考えながら、エレベーターが来るのを待った。




