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16. 拠点をゲットだぜ!

 俺キャラの道案内をしてくれているピンク髪のさらさらロングで、巨乳のビキニ姿なミチルの色っぽいお尻を眺めながら、蟻地獄のガポリ達が根城にしていた場所に向かって、俺キャラとミチルの二人がスラム街の中を、どんどんと進んで行く。


 蟻地獄のガポリとは高利貸しの一味で、ミチルを借金漬けにしたあげく、娼館に叩き売ろうとしていたところを、俺キャラによって全員、火だるまの刑に処された悪党どものことである。


 そして、俺のゲームプレイ内におけるとんでも理論こと「敗者の財産を根こそぎ頂くのは、勝者の権利であり礼儀である!」という考えの元、今まさに蟻地獄のガポリ達の根城を占拠しにいこうとしている道中なのであった。



「見えました! あれが蟻地獄ガポリの事務所です!」


「……小さいな」


 平屋でワンルームといった感じの、実にこじんまりとした建物だった。


 ま、小悪党どもの根城としては、こんなものかもしれない。


 ただ、スラム街には簡易な掘っ立て小屋が多い中で、土壁作りなだけマシなのかもしれないが。


 俺キャラが無遠慮かつ我が物顔で、蟻地獄ガポリの根城に突入していく。


「あわわ」


 ミチルが心配そうに俺の背中を見つめていた。


「どれどれと……、なるほど、外からの見た目通りの小さい感じだな」


 室内には誰もおらず、応接間風の部屋が一つあるだけ。


 平凡なソファと木の長机、窓から外の明かりが差し込んでおり、室内はとても明るい。


 俺キャラがソファの前で立ち、○ボタンを押すと俺キャラが「どかり」とソファに深く座り込んだ。


 おー、素晴らしい。


 このゲームのクリエイターは本当に良く分かっているなー。


 ゲーム内で出てくる椅子などに座れない時の失望ったらありゃしないからな。


 椅子に座るという行為には特に意味が無いからと、あくまでお飾りとしてのオブジェクトとして配置してあるだけで、プレイヤーに座らせないゲームがよくあるのだが、あれは間違っていると俺は強く言っておきたい。


 椅子に座ることは、システムやストーリー上では確かに全くの無意味でも、プレイヤーにとっては決して無意味では無いのだ。


 なにせ、そこに自分が存在するかのような錯覚を得られるからである。


 いわゆる雰囲気だ。


 自分の部屋や、お店のテーブルや、道端のベンチや、あらゆるところでふと椅子に座ると、「あー、俺、このゲーム内で生きてるなー」という悦に浸れるのだ。


 たかが椅子、されど椅子である。


 更に言えば、食事をしたり、お風呂に入ったり、トイレに入ったりと、色々な生活的アクションがあれば更に良しである。


 勘違いをしてはいけないのだが、腹が減る、体が汚れる、排泄欲求などの要素は基本的に必要無い。


 これらをシステム的に導入するには、相当な才能がなければ、ただの面倒くさいだけのシステムに成り下がるからである。


 なので、あくまで雰囲気を味わう為として、好きな時に生活的アクションを取れるぐらいで良いと思う。


 俺キャラがゆったりと椅子に座る様を眺めつつ、俺は外でビクビクと待機しているであろうミチルに向かって声をかけた。


「ミチルー。誰もいないから安心して入ってこいよー」


「は、はいー!」


 ミチルが入り口の所から、チラチラと顔を覗かせて中を確認してくる。


 そして、本当に俺キャラしかいないことを確認すると、パタパタと室内に駆け込んできた。


「ほ、本当に誰もいませんね!」


「いるわけねーよ。なにせ、俺が全員、燃やしてしまったからなっ! ガハハハ!」


「た、確かに」


 ミチルはそれでも、オドオドと室内を見回している。


 どうやらミチルのやつ、ここで何度か脅されたのかもしれないな。


 トラウマというやつだろうか。


 AIのくせに難儀なことだ。


 いや、下手に高性能なAIだからこそなのか。


「そんなにビクビクするなミチル。なにせ、今日からここが俺達の城なのだからなっ!」


 俺キャラの背後に、漫画ばりの効果音「どーん!」が出てきそうな勢いで言ってやった。


「――え”!?」


 ミチルが呆然とした顔で俺キャラを見る。


「当たり前だろうが。敗者の物を頂くのは、勝者の権利であり礼儀であり報酬なのだぞ!」


「は、はい!」


 あいかわらずな俺のとんでも理論に、ミチルは鼻息を「ふんすー!」と出しながら頷いている。


 さすがアホの子、素直に俺キャラの悪影響を受けているようだ。


 とはいえ、こんな終末世界な世界観ゲームで、良い子ちゃんプレイをしていても仕方があるまいて。


 ま、そんな世界観など関係無しで、暇つぶしの為にあえて無茶苦茶なゲームプレイをしているのだけれども。


 というわけで、許せミチル。


 俺は、これからも適当で無茶苦茶なプレイを続けるからな。


 頑張ってついてくるがよいぞ。


 そして、わんぱくでもいい元気に育っておくれ。


 あ、でも、アホの子のままではいてね。


 見てておもしろいから。


「――カッタさん! あ、あれ!」


 急にミチルが部屋の隅の方を指差すので、俺がモニターを確認すると、部屋の隅に小さな金庫が設置されていた。


「……ほほう、ガポリのお宝を発見だな」


 俺キャラをソファから立ち上がらせて、部屋の隅に置かれてある小さな金庫の前に行く。


 どれどれ。


 金庫の前で○ボタンを押すも「鍵が無い」とシステムメッセージで叱られた。


 なんだと?


 先程、ガポリを火だるまにしたが、そんなアイテムはドロップしていないぞ。


 俺はとりあえず攻撃ボタンを押すと、俺キャラが足元の小さな金庫に蹴りを叩き込んだ。


 軽快な打撃音と共に金庫が揺れて、金庫の上にHPバーが表示される。


 ……ああ、そういう感じね。


 俺キャラに剣を抜かせる。


「あ、あのカッタさん、何をするつもりですか?」


「形が有る物は、全て壊れる運命。ああ無情なりけり……というわけでドーン!」


 俺キャラが剣で金庫をボッコボコに滅多打ちにする。


 さすがは金庫なのか、防御力が高いせいでダメージが「1」しか入らなかったが、0でなければゴールはあるわけで、しかも、反撃をしてこない物体だから、ただ無心でボタンを連打すればOK。


 俺キャラが剣をぶんぶんと振りかぶって、コツコツと金庫にダメージを重ねていく。


 そして、あっさりと金庫は壊れると、中身をぶち撒けるや、床にアイテムが散らばった。


「ぬはは! 悪党どもが溜め込んだお宝も俺の物だ!」


 俺キャラが袋の形をしたアイテム達を拾う。



 ・小魔石1000個


 ・借用書の束



 ふむ、都市通貨100万P相当の魔石だったか。


 なかなかに溜め込んでおったではないか小悪党ども。


 とりあえず、ゲトゲト。


 借用書は後で燃やすとして、お金の方も、蟻地獄のガポリに苦しめられていた人を見かければ、見舞金として分けてあげるのも悪くはないな。


 自分のお金とは別に分けておいて、無駄遣いは止めておこう。


 だって、どう考えても序盤で手に入る規模のお金じゃないからなー。


 こういう時、普段のゲームプレイの勘というか癖というか、もしもの時、という考えが出てしまう。


 いくつものゲーム世界を救ってきた熟練ゲーマーな俺の経験からくる予想である。


「とりあえず、今日から、ここを根城にして活動するとしよう。宿代が浮くからお金も貯まるだろうて」


「――ふはぁっ!?」


 何やら、急に変な声を出して驚きをあらわにするミチル。


「どうしたミチル」


「や、宿代がいらないのですか?」


 ミチルはプルプルと体を震わせている。


「当たり前だろうが、俺達の根城であり拠点なんだからな。永遠に無料だ」


「――わっ、私、いつも廃墟でワラ布団を敷いて生活をしてましたが、時々、稼いだお金で宿にも泊まることで、リッチ感を満喫してました!」


 目を「><」な形にして、必死に何かを俺キャラに向かって訴えかけてくるミチル。


「お、おう」


「でも、お宿代はとても高くて、本当にたまにしか泊まれません! 壁と屋根が有って、雨風をしのいで、温かい寝床のある建物は、本当に夢の夢の夢でした!」


「そ、そうだな」


 すまんなミチル。


 俺はニートで、ぬくぬくと毎日、親のスネをかじりながら堂々と楽しく生きているけどもな。


「――わ、私! カッタさんについてきて本当によがっだでずぅぅ!!」


 最後の方で、ちょっと泣いてしまうミチル。


「――よっしゃ! それなら拠点のゲット祝いに、「そば」でも食うか!」


「そ、そば?」


 涙をぐしぐしと腕で擦りながら、ミチルがきょとんとしている。


「引っ越しといえば、そばだろうが。そば屋は無いのか?」


「立ち食いそば屋さんなら、ありますけれど」


 あるんかい。


「よし、俺がおごってやるから、そばを食いに行くぞ!」


「え!? あ、はいっ!」


 食べることが好きなミチルが、満面の笑みで頷くのだった。

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