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秋色に染まる山から

作者: 池畑瑠七

山が茶色い


雲の無い秋晴れの朝

続いた長雨が去り

見渡す限りの蒼空が広がる

カラッとした空気が嬉しく

洗濯物をベランダに清々と干す

ずっと濃い雲に覆われていた山は

久しぶりにすっきりと麓まで

その全景を見せてくれてる


ちょこんと白い綿帽子を被り

もう冬の装いが始まっている

もう少ししたら

その大きな体全部を真白な雪衣が覆って

山肌は見えなくなるから

それまでのわずかな秋景色だ


今朝は その山体の下半分くらいが

すっかり茶色に覆われ

焼けた煎餅みたいに

深い焦げ色に染まっていた


あれっ なんか、いつもの姿とだいぶ違う…?


短い夏が終わればその山は

黒く染め戻されるのが当たり前だった

山頂は 少し冷え込む秋日があれば

速攻で白く雪を被る

下界にも冷たい雨が降りるようになると

その度に すくすくと成長 

やがて衣と帽子はひとつながりになって

裾は長く長く伸びていく

そうしてとうとう

私達の住む街までを 真白く覆うようになる


この秋の装いは

これまで気づかなかったのかな

今年一段と進んだのかな

随分と高く迄が

何ともシックなこげ茶色に染まっている

秋のあの山は 大体黒いはずだった

ずっとそうだった

今までの記憶と違うその変化に 驚いた


短い夏が終わると 

裾の下方を覆っていた緑の草木は枯れ

ほとんどの部分は

火山灰がむき出しの黒に戻っていく

そして厳しく長い冬には 厚い雪衣を纏い

白と青だけの凛と澄んだ姿で

遅い雪解けの春を待つのだ


今年は雪解けが早いな遅いな

春の緑がやけに広いし 濃いな

夏山に灯り 随分増えたな

傘雲の日 雲隠れの日 多くなったな

あの色の夕焼け 最近減ったな

冠雪が早いな遅いな

雪衣の裾が長いな短いな…


四季の移り変わり・環境のいまを 

変化し続けるその姿で絶えず知らせてくれる


茶色とは

枯れた草木で斜面が覆われてることを意味する

この秋の装いは かつてなく上方まで茶色だ

春夏はいつも青黒かったはずの山が

そういえばとても、緑だった

大分と標高が上の方まで草木が繁茂してた

即ち 森林限界が年々加速度的に上昇している事を

如実に語っている

それがこの 一見お洒落な「秋モード」なのだ


僅かな暇の静穏を保ちながら

激しく猛る炎を内に抱く

人知及ばぬ神住まう山

その恩恵にあずかりながら山裾に生きる

小さな小さな我々と仲間たち


その唯一無二の住まい 宇宙船地球号が

時々刻々と厳しく変化していることを

毎日眺める雄大な 母なるこの山の姿から

今日も

ひしひしと感じずにはおれない










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