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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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82/221

ダレカタスケテ。モテるッテイッテモゲンドガアリマス

 タスケテ。

 

 「伊崎くん、うちの娘の香澄だ。挨拶なさい」


 「ご、ごきげんよう! 松前香澄と申しますわ!!」


 緊張しているのか慌てて身体を折り畳む一人の少女。


 「伊崎です。まぁ堅苦しいのはアレか。

 ま、香澄さんのお父さんと今色々仕事や個人的にも仲良くしている高校生だ。


 ⋯⋯よろしく」


 「はっ、はいっ!いつも父上がお世話になっていますわ!!」


 差し出した俺の手を両手で掴んでくる。


 ──松前。

 現在創薬に関する関連企業をまとめている日本じゃかなりの知名度を誇っている所らしい。


 俺はどんなに知名度が無いところでも最高峰の企業にすることができるからあまり求めてはいないが、その内敵になるくらいなら最初からこっちに頼みつつやりたい事は小さい城でやればいい。


 と、ブルンとブラウス越しでも揺れるのが目に入る。


 ⋯⋯おぉ。良い発達具合で。


 「香澄はねぇ、家で過保護に育ててしまってね。


 まだ男を何一つ知らない箱入り娘だ。

 伊崎くんが高校1年生、しかし香澄は一つ上なのにまだ将来の事が何も決まっていないんだ」


 「彼氏の一人でもいそうなものですが?」


 「ふはははは! 私が許さん」


 オメェのせいじゃねぇか。

 

 「いやぁ、伊崎くんの話は色々な所から聞いてる。


 なに⋯⋯白波のサバに一枚噛んでるとか」


 目の色が変わってるな。

 ⋯⋯半分冗談、半分本気か。


 「えっ!? 伊崎さんが?」


 「会長から聞いてませんか? 

 俺はせいぜい関わっただけです」


 笑みを張り付け、スルーしようとするが。


 「普通ならそうなんだけどね?

 "あの"白波会長があそこまで持ち上げる少年を私は未だかつて見たことがない」


 じっくり距離縮め、不敵な笑みを浮かべる。


 「というと?」


 「白波会長はね?年齢が若く周りから舐められてしまうところがある。


 ああ見えて相当厳しい。

 事業も人材も。

 むしろあの方はそれで有名だ。


 それでもって──結果は出す。

 ⋯⋯しかし、ある一人の少年だけはべた褒め。


 辿ると全て一人の少年の話が上がる。

 最近じゃあ官僚の人間も嗅ぎ回っていてね?


 今じゃアンテナを張っている連中は皆一人の少年にたどり着く。


 ──とても16歳で出来る芸当じゃない」


 チンピラの距離感で俺を見下ろす爺さん。


 「⋯⋯まさか。俺が表に出るほど金があるように見えますか?」


 「見えるさ。私はこう見えても嗅覚だけは誰よりもあると自負しているよ。


 何年この道でごまんと立派な人材と対面し、喋って来ていると思うんだね。はは」


 ⋯⋯その気持ち、よく分かるぞ爺さん。

 俺も見ただけでおおよその把握は出来るタイプだ。


 「気のせいです」


 「うちの香澄はどうかな? 

 伊崎くんが気に入ってくれると嬉しいんだが」


 そう言って娘の方を向き。


 「香澄、伊崎くんはこれからの未来で必ず主軸なるフィクサーとなるんだ。


 口外せず、尽くしなさい。

 松前の家訓を覚えているかな?」


 「は、はい!

 妻はしっかりと支えるべし!」


 「そうだ。伊崎くんを必ず支えられるような立派な女となるんだ⋯⋯いいね?」


 「はい!骨抜きにします!」


 「⋯⋯ぶふっ!!」


 思わず飲みかけのコーヒーを吹いてしまう。


 「大丈夫ですか!?伊崎さん!」


 違う違うそうじゃない。

 そういう話は俺がいないところでするべきだろうが馬鹿者。


 そうして。


 「伊崎さん、私は高揚建設の長女の柚香です!」

 「次女の絵梨花です!」


 ⋯⋯誰か、タスケテー。


 「あはは。伊崎です。最近多いですね?」


 「何を言う伊崎くん!」


 思い切り腰を叩かれ、思わず吹っ飛びそうになる。


 「伊崎くんが日本を盛り上げようとしてくれているって諸星さんから聞いてね!


 ──思わずサムライ魂に火がついたんだ」


 「それは⋯⋯良かったです」


 「うちの娘達だ。

 伊崎くん──正直うちの娘はどうだ?イケそうか?」


 肩を組むと俺に耳打ちしてくる。


 「へぇ?」


 「ココだけの話、今みんな伊崎くんを狙ってるんだよ」


 だよね!?そうだよねぇ!?

 なんか毎日視察する度におなごが増えてるもん!


 なんで俺が気を遣う必要があるのかなぁ!?って思ってたよ!?


 「あぁ、、だから」


 「そうそう。大人はみんな薄々気づいてるわけさ。


 伊崎くんの資金力、熱い魂。

 どれもリーダーに相応しい!ってね。

 この間も聞いたよ?


 今、この日本を変えるには我々同胞による協力が祖国を救う第一歩となるでしょう!って。


 あんな長い間人の話に耳を傾けたのは久しぶりだったよ」


 「⋯⋯それはどうも」


 なんでこんな恥ずかしいんや。


 「土地もある、人もいる。着いていくべき指導者がいる。


 なに、そこにこじつけて自分たちもおこぼれを貰いたいわけさ。娘を使ってでもね?」


 でしょうね。そりゃみんなそう⋯⋯そういうこと!?


 「俺は楽したいだけです」


 「あんなに熱心にスピーチしておいてかい?俺は良いと思うけどなぁ。あんな若者がいても」


 「買い被り過ぎですよ」


 「ちなみにどっちが好みだ?

 男たるもの、両手に華が良いだろ?うちの娘は運動部だし、結構いいぞ?多分」


 「⋯⋯そこは自信持ってくださいよ」


 「あっはははそりゃそうだ」


 「もう7月も終わるっていうのに、俺は学校にまともに行けてないんすもん」


 「毎日やることづくしか?」


 「えぇ。金はいくらでも出してるんで建設スピードも普通じゃないので完成間近ですが、まだまだ詰めるべき所が多い」


 「⋯⋯本当に16歳か?人生2周目じゃないよな?」


 何周目なんだろう?俺。


 「だったらいいんですけどね」


 「おーい!二人とも、伊崎くんを落とせよぉー!」

 

 だから、目の前で言うんじゃねぇよ。

 気まずいだろ。


 「タスケテ、誰か⋯⋯」


 



 「伊崎くん、死にそうだな」


 「主に白波会長のせいで」


 「ほれ、ウナギだ」


 白波から発売した現在人気高騰中。

 その名もキセキウナチップス。


 お菓子として販売し、旨味に肌、カロリーもかなり抑えめで女子に流行中だ。


 「クソ暑いですよ」


 「しかし、思った100倍手腕を奮っていて少し感心した。いや、大分だな」


 「⋯⋯え?」


 「建設、創薬、半導体、更にはエネルギー開発まで向かってる。工場も押さえ、土地もドンドン増えてる。


 人も付いてきてるとなれば──驚かざるをえん」


 「まっ、そこはご愛嬌で」


 「⋯⋯ふん。ご愛嬌で2000億が即動くなんてありえんだろう?


 王の資質と言うやつか?」


 「まだまだやることは多いです。

 ある程度は済ませていますからそろそろ学業に専念したいところですが」


 「⋯⋯よく寝ていると聞いてるが?」


 クソ、バレてる。


 「息抜きに必要です」


 「学生の頃はそういうのもいるだろうなぁ。

 懐かしい。


 それで?これからどうするつもりなんだね?」


 「とりあえず世界に日本の部品をシェアしてもらえるようにしてもらうことと、サバなんかの問い合わせも結構海外方面からも動きがあるんですよね?」


 「あぁ。そっちを捌く前に国内で無双状態をどうにかしないといけないレベルだがな」


 じゃあそっちはいいか。


 「なら、しばらくは休みますかねぇー」


 「まぁ丁度落ち着いたしな」


 まぁ何かやらかさん限りは大丈夫だろう。


 「そうだ、伊崎くん。紗季は──」


 「そっちはもう少し大人になったらと話してあります」


 「あ、あぁ⋯⋯随分早口だな」


 もはや呪いだ。

 だが、アイツは幸せになる権利がある。


 俺と関わってまた地獄に進む必要はない。

 アイツは、立派な男と結ばれて、幸せな結婚をしてもらいたいんだ。


 女たらしで、遊びまくってる男なんかといては⋯⋯碌な結婚生活にもならんだろう?


 「モテるのって、案外辛いですね」


 「だろう?私も昔、お見合い結婚で地獄をみた」


 「え? なら、いじめないでくださいよ」


 「おぉ⋯⋯私とした事が」


 テヘッて顔してんじゃねぇ。

 殺すぞ。

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