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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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札とかかっけーじゃん

 「でぇっいい!」


 頭上で歪んだ横筋の落雷が聞こえ、見える。

 おぉ、うねってる。


 稲妻が蛇みたいだ。


 「やるな」


 ゴミレベルの加減をしているとはいえ、結構強い。


 "この世界"の基準だが。


 蜘蛛の巣さながらの深いしゃがみから、バク転をして足で顎を狙おうとした、その時だった。


 「顎!」


 ⋯⋯?

 思わず鼻息が漏れた。


 「ナイス!」


 男は女を褒めながら空中で身を翻し、雷を纏い木刀を多様な角度で振るってくる。


 傾げて避け、しゃがんで避け。

 

 振り終わりを狙った少しの跳躍。

 宙で前回転し、上から踵を狙おうとした時。


 「肩!」


 ⋯⋯まただ。

 女の声は俺の狙おうとしていた部位だった。

 

 俺の攻撃がスカると、半身で避けた男が木刀を突きの構えで待ち構えている。


 「雷陣──肆酸乱(しずら)!」


 んっ。

 電撃が周囲を泳ぎ、移動場所を塞いでくる。

 そして同時に4連撃の規則性のない──剛剣の軌道からやってくる剣技。


 それを着地と同時に回転しながら足で弾く。


 「うっそー!?どんな体勢で弾いてんだよ!

 さすがは悪魔王。態度だけじゃなかったようだ」


 「誰が悪魔王だ。俺がもしお前の言う悪魔王なら、お前らは今死んでる。


 何故なら、生きているから。

 自重して殺さずにやってるこの事実が証明している」


 マジの魔法を使わないで戦ってやってるのが答えだ。

 強化程度、ただの身体能力だけで済ませてやってるんだから感謝しろ。


 「ん?」


 二人共、懐から何かを取り出している。

 長々と何かを詠唱し──


 「結霊符──雷陣!」


 周囲には所々にビリッという雷の反応。


 「なるほど、退魔師の結界術か」


 「悪魔王、ここまでだ」

 

 木刀を構え、ドヤ顔である。

 もう一人の女も両手に札を挟みながら待機している。


 もう包囲している。

 そう言いたげに。


 だが──それを見て、俺は思う。


 "⋯⋯どの口が?"


 大体の人間の戦い方を見てきた。

 しかし、対俺に関して一番悪手なのが──範囲を狭める事だ。


 短期決戦にしたいというのはわかる。

 今の俺では少々測りかねるが、向こうの俺に長期戦など持ち込もうとしたら多分腹を抱えて笑っている。


 完成した身体に魔力制御、今の魔力を具現化させて放つ斬撃や槍をほぼ無制限で射出出来る。


 回復力も現在の比ではない。 

 今はあくまでも才能がトップクラスと言ってるのであって、最大値ではないからだ。


 向こうの俺は回復力も最大値。

 回復力が消費を上回っている。


 だから無限。


 とはいえ魔王や龍帝の時は流石に減ったが。

 対雑魚(そこそこの強者)戦では活きるが、強者との戦いでは込める魔力が変わる為だ。


 「⋯⋯んん」

 

 溜息をついてしまう。


 「爆符──雷槍!!」

 

 結界内から突然現れ、俺に向かって全方向からうねる稲妻が直撃する。


 「うしっ!」

 

 煙が視界を隠すが、探知で見えている。

 ガッツポーズしているのだが?


 ⋯⋯はぁ。

 だから、なんで俺に効くと思ってるんだ。

 魔力障壁を展開しないわけ無いだろう。


 まぁ多分、この世界ではないのだろう。

 俺に能力で勝負するなんて──いつぶりだ?


 晴れて、俺が全く無傷なのを見て驚く二人。


 「な、なんで!!」


 「なんで?俺こそ聞きたい」


 腕を組み、俺は少し遊んでやるとする。

 

 後方に魔法陣を組み上げ、頭の中で魔法式を計算し、構築し──書き上げる。


 「な、なにっ!? 伊月!」


 「み、見たことない!!あんなの──見たことない!」


 当たり前だろう。

 俺が創った魔法なんだから。


 「き、綺麗⋯⋯」

 「そんなこと言ってる場合じゃない!!くっそ!


 どうすれば⋯⋯!」


 星々の粒子が地面から湧き上がる。

 限りない程白く、濁りのない世界を象った空のようだと、昔言われた。


 自身の感想としては、銀河を込めたような色であり、星々が煌めいた様なものにも見える。


 秘密基地周辺には変なものはないし、久しぶりの魔法だ。


 ⋯⋯少し高揚する。


 鐘の音がこの場を支配し、二人は何か技を使おうとしている。


 スメロテンジャロシガ、リョカフコンティルガン。

 (星々が世を照らす。

 世界がどれだけ闇に落ちても、星は世界を明るくする)


 シガロメロトリガティへ、ライオルホンザイガ

 (星は開闢を求め、世界を求む)


 「久しぶりだな──コレを使うのは」


 魔法陣から出てくるのは、たった一つの球体。

 

 「日本語だと、なんて言うんだろう」


 さて──。





























 「星霜──煌星の糸(ヴァーリ)


 終末の音。

 この世のすべての理不尽を詰め込んだような不協和音。


 禍々しく、しかしどこか神聖な⋯⋯。


 放れた糸が、肉眼の限界を超え、感知の域を超える。


 ソレはかつて、一国の全てを焼き付くしたと言われる⋯⋯史上最悪の魔法と言われた。


 加減はしているが、俺の思った通りになっているか。


 そうして俺は、長く立ち上る星屑が晴れるのを待った。

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