(一応念の為、閲覧注意だよ)退魔師ってなんぞ
伊崎って誰だっけ?こんな優しかったっけ?
修正に時間かかりすぎて自分の語彙力がない事に気づけて良かったです(天井を見上げる男)
原文との違いは、明らかにヤバイことをしているのと、暴力性があり過ぎるのと性的な表現が多数あったからです。
by作者
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そういえば⋯⋯俺は何歳だっけ?
ドスッと、聞いていると自分の感覚が変なことに気付いた。
「⋯⋯ん?」
「ぁっ⋯⋯くぁ⋯⋯ぁい」
拳には乾いた青い液体でいっぱい。
そして、掴んで何度聞いても反応しない悪魔。
ぶらりと無力に原形はあまり留めておらず、口から得体のしれない液体がコポコポ聞こえるのだが、そんなのはどうでもいい。
もう答えないのは分かったので地面に捨てる。
はぁ、おかしいな。
もう二時間は聞いているのに。
もう一人も、穴だらけであまり状況が分からん。
はぁ。どいつもこいつも──なんで喋らないんだ。
と、立ち上がると、気付けば地面には途方もない量の青い血。
「いかん。癖だ」
やらかしたと髪をポリポリかく。
そのまま拳に魔力を流すと、ジュウと焼けたように汚れが宙に霧散していく。
顔からも焼けた音がした。
あぁ、こんな低俗の返り血なんぞ浴びたくもなかったが。
振り返って近付く。
「男の方は出血を止めたが、意識は戻らないようだ」
女の方は。
おぉ。震えているが、意識はあるようだ。
時間が経過しているからか。
「こ、来ないで⋯⋯ぅぅっ!!」
女の前につくと、髪を掴み引っ張って問いただす。
「それで? 悪魔ってのは一体なんだ?
退魔師とはなんだ?」
アニメみたいな奴らだな。
まさか本当にいるとは。
「は、話すから⋯⋯っ」
さっきも同じことを言っていたので信用がない。
両腕を一つにして掴み、地面に押し付けて逃げられないようにする。
「俺は今油断しないぞ。お前──さっき身体の中で何かが動いてたからな」
「な、なんで知ってるの!?
⋯⋯うぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛っ゛っ゛っ゛!」
鼻先まで近づき、足で一つになった両手首を踏みつける。
嘘をついているのかはわかる。
だが内容まではあまり理解できん。
結果からすれば、つまり嘘をついた。
コイツは口を割らないか?
「ハァ⋯⋯」
俺の深い溜息混じり。
静寂の中で、鈍い音が響いた。
骨が悲鳴を上げている音だ。
「ァァァァっっ!はなじます!はなずからァァァ!」
「鼻水垂らすなよ気持ち悪ぃ」
ちょっと折れただけじゃねぇか。
糞が。俺の手に血と鼻水が付いただろうが。
「──うっ!!」
とりあえず顔面を蹴り上げて、意識を飛ばす。
「ほんと、こういう場面でキーキーうるせぇな」
そんで意識を切らしたこいつに座り、今後を考える事にする。
夜空を見上げる。
昔を思い出す。
龍人との戦いも、こんな感じだったな。
ーーも゛う゛!!!二゛度゛と゛!!!!うぅ!!
ーー永゛遠゛に゛ぃ゛ぃ゛っ゛ひ゛ひ゛ひ゛ひ゛ひ゛ひ゛!!!!
『えぇ?なんて?』
ーー我゛ら゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ァ゛ァ゛龍゛の゛ォ゛ォ゛民゛ぃ゛ぃ゛イ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!゛!゛
『あっはははは。すまない。龍はどこを潰したら痛いのかと気になってな』
ーーもうやめてください!!
『じゃあどうする?対価は?払えないような身の程知らずは何で払う』
ーーなんでもします!!
平伏するソイツの頭を鷲掴んで言う。
『そう。最初からそうしていればよかったんだ愚か者が。黙ってそうしてればよかった』
⋯⋯確か。
子孫の前で針が十度巡る間、尊厳を焼き尽くした。
自分たちの王はもう敵意を持たないであろう相手とみなすようにする為には──これが一番早い。
「っと⋯⋯」
魔力で倒れた悪魔二匹を持ってきて、しっかり見物。
「魔力ではない」
なんだ?これ。
俺の知らない概念だ。
ズボッ!と腕をこいつの中へと貫通させ、確かめる。
んん。
"抽出"
黒い炎は粒子となり、俺の眼前へと姿を見せる。
それは砂鉄のように見えるが、実際に見ると⋯⋯禍々しく、魔性という言葉が似合うモノだ。
吸い込まれてしまいそうな。
そんな見た目と不思議な色香を放っている。
確か感情を食べるとか言ってたよな?
人間で言うところの腸辺りにあったから、嘘はついてないのか。
そろそろ可哀想か。
サキュバスと言っても、髪は命だもんな。
ていうか、実践仕様なのか?
おぉ、設計的には人間を誘惑するのだからそうか。
なんて悪魔らしくないんだ。
そうして周りを見渡す。
見えるのは、二色の血溜まりと体液である。
「掃除をさせるには面倒なレベルだな」
イメージすると、周囲の地面から星が焼くように。
女の上に座る俺の周りから星の粒子が舞い上がり、そこはただの地面に戻る。
「⋯⋯俺だ。先に申告しておく。機嫌が史上最悪だ。とりあえず早く来い」
ピッと切ってガラケーを閉じ、銀と石田を呼びつけて二人を運ばせて秘密基地へ向かう。
*
悪魔とやらはどうやら見えないらしい。
なのでその二匹は俺が頭を掴んで運んだ。
道中、二人は沈黙。
俺の顔色を見てそう判断したようだ。
⋯⋯悪いが正解だ。
正直今話したら、別人みたいなことを言いそうだからだ。
その証拠に、下着姿の女に何も被せないところを見ればすぐに分かるだろう。
いつもならやる事をやらない。
と言っても、都合が悪いからな。
身体の流れを見るにはこれが最も見やすい。
と、女の身体へと手が伸びかける。
っと。いけない。
万物の王なら、欲情出来る身体をしているから脱がせた上でやりたいことをやる人間だが、それはいけないと自重する。
そう。それは非人道的だ。
駄目。そう、だめ。
言葉にして伝えるのは非常に難しいが、一人の男はかなりの損壊状態で車に乗せられている。
今まで極道生活が長かった二人だ。
惨劇を見た二人は慣れているのだろうが、あまりの状態にさすがの二人も緊張が拭えていない。
そうして家に帰り、佐藤さんに癒やしてもらうどころか、いつもの部屋ではなく、海沿いの個室に移動。
「今から俺が帰ってくる間、誰もここから先に通すな。そこに棚があるだろう?あそこにご飯を置いてくれたら助かる」
俺の目つきを見てしまった二人。
さすがの二人も少し仰け反っている。
すまない、という気持ちは多少なりにはある。
だが気を遣っている余裕はない。
二人の男女と、悪魔二人。
それぞれ別室に移動させ、乱雑に捨てる。
男の方は身動きすら取れないのでいいとして、女は魔力に近い何かを持っている為、手足を封じる。
もちろん最低限の下着のみ。
最低限の状態でないと、能力反応の最適な状態を見れないからだ。
コイツは──万に一つもないが、殺せる可能性がある。
そして悪魔二人も、性別は女。
しかもサキュバスっぽいのから精気を吸い取るなんて言ってるってことは、"色々"役立つだろう。
と、全ての準備を終え、外に出た俺は、ポケットに突っ込んだまま上を眺める。
浮かべた構築だけで全てを展開する。
法式を。
最上級の結界を。
そこで眠り、気付けば。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめん⋯⋯なさい⋯⋯っ」
悪魔二匹。
俺を見上げると、直前の記憶が蘇ったからか、慌てて土下座で平謝り。
「俺が謝罪を求めるような人間であるように見えるか?」
穿く。二匹の悪魔の身体を。
地面から魔法によって生成された鋭い槍が天井までの一柱となり、身動きすらとれない。
「も゛う゛⋯⋯痛゛い゛の゛嫌゛だ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ァ゛ァ゛!!!あっ⋯⋯ぅ゛ァ゛ァ゛あ゛ぁ゛ぃ゛ぃ゛」
当たり前だが、魔力に何を込めるかで、性質が変わる。
身体の中を食いつくすように侵食するものを付与できるし、凍らせることもできるし、電撃を与える事もできる。
⋯⋯お前らが言い放った、そんな財布の為にただ積み上げていたやつでな。
「そうか? でも遊びたかったのだろう?」
この万物の王と。
「あ、遊ぶのおしまい!!」
「じゃあ──さっさと話せ」
威圧しないように、必死に笑うものの。
二人は引き攣っている。
「あは、あは」
はぁ。どいつもこいつも話が通じないようだ。
背を向け。
「ちなみにだが──お前たちが話すまで一生そこだからな?忘れるなよ」
背を向け、俺の頭に浮かぶ言葉。
"悪魔って人間と同じなのかな?今度試そう"
「「あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛!゛」」
「起きろよ」
思い切り腹に前蹴りを決める。
「んごぅっ!!」
激しく咳き込む。
女の口元から胃の内容物が俺の服に付く。
「汚えな」
最悪。
ワイシャツが汚れちまったじゃねぇかよ。
と、眉をひそめていると。
「ぁ⋯⋯ぁぁぁっ」
見上げると俺が居たのが余程恐ろしかったのか。
それとも、近くで転がっている達磨が現実的にキツかったのか。
口を震わせ、ぎこちなく口が笑っている。
「どうした? 楽しそうだな」
「えへっ⋯⋯えへへ────」
ドスッ、と。
容赦なく。
その女の声は俺の蹴りによって中断される。
媚を売ろうとしているのか。
理由はわからないが、自分の状態に救いがないのか気づいたのか。
そりゃそうか。
女の視線を見れりゃそう思うか。
良い格好してたし。
丁度さっき別の興奮材料を思い出してたし。
自分に自信があるのか、身体をくねらせていた。
「えへっ、えへっ!」
「退魔師とはなんだ」
「ひゃ、退魔師⋯⋯は⋯⋯」
「おう」
結界はあるが、コイツはこっちの人間の中での魔法使いと明確に区分けした。
よって、容赦はしない。
髪を掴んで急かす。
「ぃたぃ⋯⋯。国家秘密裏に活動している"ふりゅ"じゃない。定義が⋯⋯むずかひぃ」
「定義が難しいとは?それと、ふりゅ何とかを喋れ」
「定義⋯⋯は⋯⋯能力があるかないか」
「それは?お前はどんな能力があるんだ? 例えば、魔法のようなものが使えるのかとかそういう事なのか?」
「魔法? 外国ならそうかも⋯⋯しれひゃい。
私⋯⋯は⋯⋯陰陽師」
陰陽師。ほう。安倍晴明とかそういうアレの系譜って事か?
へぇ。今でも脈々と受け継がれていたのか。
「お前は何ができるんだ?」
「式神を召喚したり、基礎的な力で魑魅魍魎や人知を超えた存在を祓うのが仕事⋯⋯ですえへっ、えへ」
なるほど。
つまりこいつは、何らかの組織の人間ってことか。
そりゃ言えんわな。
信じてももらえないだろうし。
「それで?俺の認識では悪魔と魑魅魍魎はあまり一致しないように思うが」
「悪魔⋯⋯は⋯⋯ここ数年で一気に増えた⋯⋯」
「一気?」
「こぉ、これは私の推測になりましゅが!
世界のバランスが狂い始めていると。
私の家でも最も強力な日本の封印術が少しずつ、しかし加速的に開放されていると言ってましたぁ!」
⋯⋯ふーん。
あまり原因も分かってない、か。
「お前、彼氏は?」
「い、いませぇ、ん」
「いるな。そこの?」
緊張が張り詰めるが、さすがに耐えられなくなったのか、無言で頷いた。
「ともなると、まだそうだな。
⋯⋯お前、プライド高そうだもんなしかもまだ"色々"無さそうだ」
俺の表情から、少し動揺しながら視線をそらした。
「まぁいいや。コイツはお前と同じくらいの情報量なのか?それともまだ持ってる?」
「持ってません!!」
⋯⋯持ってるな。
「なるほど、じゃあこいつを起こした方がいいな」
「っ!!違います!持ってないです!わ、私が喋ります!」
「おいおい。随分早口で喋りだすじゃないか。もう終わりかけの人間にご熱心なようで」
「か、身体で払えば⋯⋯」
「ははっ、何言ってる。そんなのは通り過ぎているだろう。交渉になってない」
「えっ?」
「自分の価値をいくらだと思ってるんだ。
あのだるま君、それ以上の価値を持ってる可能性がある。
なに、このご時世だ。
金さえあればいくらでも体を売る人間はいる。
強制した覚えはないぞ?
俺はただこのだるまを起こそうとしてるだけだからな。
お前がそんな状態なのも、逃げられないようにだからな」
さらっと色々やったのは癖だ。癖。
「ど、どうすれば」
「大丈夫」
「え?」
俺は、満面の笑みで言ってやる。
「忘れろ。お前に残された最後の慈悲だ」




