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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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爛れてます

 あぁ⋯⋯甘い。

 俺の好きな匂いだ。


 「えへ、えへへへ」


 どこもかしこも柔らかーい。

 サイコー。


 「伊崎様、朝です」


 「んん⋯⋯あと10分⋯⋯」


 寝ぼけている俺は、どこも柔らかい世界で記憶が飛ぶ。


 「起きないとチューしちゃいますよー」


 「じゃあしてー」

 

 両手を上げて佐藤さんの柔らかーい感触を待っていたのだが。


 「起きてください、伊崎さん。まさか寝起きでこんなに機嫌がいいのを見るなんて」


 「⋯⋯夢が覚めた」


 「うわ。伊崎さん女で狂うタイプだ」


 入ってきた石田がドン引きしている。


 心外な。


 来なくなったオキニをどっかの貴族が買ったって聞いて、ムカついて家爆破させて生き残った奴と関わってた奴らを滅ぼしたくらいしかないわ!


 人をなんだと思ってる!


 「なんだ、お前も俺とチューするか」


 「はいはいご機嫌斜めですねー。朝食の準備が出来てますよー」


 「だってぇ⋯⋯佐藤さーん」


 隣でニコニコしている佐藤さん胸の中へ顔をうずめる。


 うずめて、首を振って柔らかい感触を味わって我ご満悦。


 「あら、もう朝から⋯⋯」


 「足りなーい! 足りなーい!」


 「あの子供はいかんなぁ。女を覚えさせるには早かったのでは?」


 「いや、大将はあんなんでいいだろう。やるべき事は全て完遂してる」


 遠くでなんか言ってるなぁ!


 「石田ぁ! お前警護以外何もしてないぞ!」

 

 「⋯⋯えぇ!それが俺の仕事ですからねぇ!」


 「銀はしっかり後輩の面倒見てるぞ!」


 「俺だって見てます!学校行ってる間にやってますぅ!」


 「なにぉっ!」


 と。柔らかい感触が増える。


 「あっ」


 「おはようございます⋯⋯伊崎様⋯⋯」


 「あはっ、おはよぉ」


 前からも抱きつかれちゃ大声出す訳にはいかないわ。


 「あの人マジで⋯⋯っ!」


 「石田、良いんだ。逆に大将がキレたらタダじゃ済まないんだから」


 「っ!それはそうっす」


 と二人はなんやかんや笑ってリビングの方へと向かう。


 居なくなった俺は二人と朝のチューをして、しばらく心地よい体温でぬくぬく温まったのであった。


 「伊崎様、こう見ると筋肉もありますね」


 「そうでしょ?意外とだけどね」


 着替えさせてもらいながら俺の視線はゴミ箱へ。

 その視線に気付いたのか、耳元で囁かれる。


 「そんなに見なくても──今日も夜が来ますから」


 あーんまい声で囁くこちらのオキニの女はどうやら新人らしい永井理沙ちゃん。


 年齢は23歳。

 ご自身の報告だと93・57・89だそうで。

 足も長く、普段はスポーツもやっているらしいよ。


 基本無機質で伏し目がち。

 抜けてるところも多々あるそう。


 でも喋るときはこっちを見て誘ってくる髪が掛かった時に謎めいた色気を発揮するのが彼女だ。


 「ね? そうくん。ゴミ箱が埋まるくらいまでイチャイチャしよーね」

 

 「そりゃ有り難たーいー!」


 「そんなにテンションが高いと、少し嫉妬します」


 下着付けて着替えている佐藤さんが少し顔を紅くしている。


 佐藤さんは29で、婚期を逃して裏で色々と言われているそう。

 でも、同じような体型で背中まで伸びている艷やかな黒髪は素敵よ。


 最悪貰うから安心してね。

 

 「これで私も見てください」


 と、頬に一回キスがやってくる。

 全然見ます!安心して!


 「もー!佐藤先輩色仕掛けしないでくださいー!」

  

 「あら、年上の特権よ?」

 

 と、ダラダラ会話して、外へと出たのはそこから40分後だった。




 石田はレンジをチンさせたまま震えた顔を隠していた。

 

 羨ましいだろう。

 君も結婚するといいよ!


 だがまぁ、ここまで素晴らしい生活ができるかは知らないがね!ゲッハハハハハハ!


 「石田さん料理のスキル高いですね」


 「こう見えても自炊長いんで」


 食べ始め、俺達は朝のニュースを確認。

 未だ震災の被害は取れるわけもないか。


 「朝からニュースが重い」


 「まぁまぁ仕方ないですよ。まだ時間1年も経っていないんですから」


 ニュースを見て、ハッと思い出す。


 「あっ、そうだ」


 「⋯⋯どうしました?」


 「いやさ、高校決まったんだっけ?」


 「はい。候補はありますが、有力なのが成応学園です」

 

 「へぇ〜」


 「ほとんどが社長令嬢などの有力な会社の子供です。

 ほぼ交流会みたいなものですね、未来の」


 意地でも繋げる機会を設けるためか。


 「なるほどなぁ。あとはなんかの推薦とか?」


 「そうです。金持ちか秀でてるかの二択です。伊崎様はどちらにも属しているとは思いますが」


 ⋯⋯確かに。


 「間違いないね」


 「否定しないのが伊崎さんらしい」


 そう微笑ましく朝食を食べ、夜。


 「ちょっと石田、車で行ってほしいところがあるんだ」


 「え?今20時ですよ?」


 「なんだよ。別にいいだろ。佐藤さん、廃材の現場の場所を石田に」


 「かしこまりました。同席しても?」


 「ん?全然いいよ。行こいこ」


 ⋯⋯と、俺は佐藤さんと親子みたいに手を繋ぎ、仲良く廃材の現場へと向かったのだった。

 

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