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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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32/221

黒いカード

 おはようございます。

 昨日は爆睡しまして、投稿をしっかり忘れました。

 ごめんなさい。なん──

ーーーー



 玄関からこちらを覗き込むように言ってくる。


 「伊崎さーん、外に黒い車が来ましたよー」


 「おー。もう来たのか」


 電話から三時間くらいか。

 家が何処だか知らないが、何か"用意"でもしてるのか?


 「石田──」


 「近くにある招待客の部屋っすよね?用意してます!」


 「お、おう⋯⋯」


 正直素直に感心した。


 というのもこの秘密基地。

 大体調べたところ、広めの公立学校の土地2,3個分くらいらしい。


 海の近くということもあり、そもそもの土地がそれくらいで⋯⋯プラス、港がある。


 ただ規模が通常の場所よりも狭いので、定義があっているかは定かではねぇけど。


 そんで、拠点入口からコンテナがドカドカと並べられた少し先辺りに拠点(メイン)

 その真向かいに、気を利かせてくれた同じような拠点が一つ。


 その拠点がいわゆる応接間⋯⋯ゲストルームと言ったほうがいいかな?


 来客が来ると分かっていても、しっかり掃除や準備をした上で報告まで済ませていた。   


 だから素直に感心したってわけ。

 向こうでこんな仕事が早いやつを見たことがない。


 ⋯⋯いや、それは言い過ぎか。


 褒めてる場合じゃねぇわ。そろそろ行かねぇと。


 「着替え着替え⋯⋯」


 今のところは、俺の正装はこの間買ったワイシャツとスラックスだ。


 シンプルでいいだろ?多分。


 向こうはお世辞にも服の目利きが良い奴がシンプルで良いモノを作らない奴しかいなかったから、自力でどうにかするしかなかったって感じだ。


 代わりに、宝石とか派手な方は向こうの方がいいが。






 石田に付いていき、招待客拠点の扉をくぐる。


 中に入ると、ソファには座らず、中を見渡しながら棒立ちの高そうなスーツを当たり前のように着こなす老人と眼鏡をかけた中年以降のスーツを着た男がいた。


 片方は多分──秘書か側近だろう。


 と、向こう側も俺達に気付く。


 「いやぁ!時間を割いてもらって」


 あの時とは別人のような生気に満ち溢れた口調に、歴戦の猛者を感じさせる皺と笑み。


 そして、一礼してから両手を差し出してくる立場を下げているという所作が、こちらを立てているという意思表示を感じる。


 それが逆に──日本人ぽくも感じ、本物の強者というのも、その時直感的にそう思った。


 「全く問題はないですよ。逃げられたらどうしようなんて思いましたよ」


 逆に──片手を差し出して上だと暗に言ってやる。

 世間知らずの中学生という意味でもという二重の意味を込めて。


 どちらとも取れるだろう?じいさん。


 一瞬驚いた様子を見せる。


 「っはは。まさか。私が約束事を違えるなんてまさかっ! なぁ?」


 「諸星の信念でございます」


 秘書の方を見ながら豪快に笑うじいさんと、ペコペコして合わせる側近。


 「さっ、諸星会長には大したものではないかもしれませんが、良ければ座ってもらって」


 対面に座り、少しの沈黙が流れる。

 すると。


 「お茶をお持ちしましたー!」


 「⋯⋯ん?」

 

 どう考えても石田の声ではない。

 扉の方を見ると、明らかに顔を赤くする石田と銀が居た。


 なんだ?

 と眺めていると、入ってきたのは馬鹿可愛い女の子数人だった。


 しかもスーツ。

 なんやこの美女共は。


 「あぁ、彼女達は是非今後昇進させようか迷っていたところの部署の人間だ。


 どうしようかと思っていたからな。

 今回は同行という形だ。あまり気にしないでほしい」

 

 ⋯⋯えっろ。

 ハッ!違う。


 「っあぁ、そうですね」


 一人はパンツ見えんじゃね?っていうくらいミニミニスカートの、胸囲はそこまでの短髪女。


 もう一人は眼鏡を掛けたいかにもな冷徹!って感じ。

 ただ、ナニとは言わないが冗談みたいなスタイルをしてる。

 

 わざとかってくらい見える。

 ギリギリ見せつけてるともとれる。


 最後の一人は優しそうで、穏やかな先生のようなオーラの女。


 「今日は何よりも大事な場なのでな。雰囲気だけでもと思ったのだ。無礼は承知だ。ガッハハハハ!」


 と、俺の後ろに三人が一礼しながら立った。


 「「「よろしくお願いします!」」」


 「勿論、よろしくどうぞ」


 顔なんて見てないなんて言えない。

 男の子だもんっ!


 「と、この場は口が堅い者しか居らん。この右腕の平野、そこの彼女らはどの道経営の特殊部署で様々な情報を集める者だから安心してくれていい」


 つまりポーションの事を言っても問題ないぞーって事を含めているってわけね。


 「そうですか」


 「それに、その口調──あの時とは違うのではないかな?」


 中々気が利くな。


 「はは。では普段通りにさせてもらいますかね」


 「平野」


 顎で呼びつけると、懐から大切そうにしまっていた封筒をスッと机の上に差し出される。


 数秒経ち、書類を前に視線を二人に向ける。


 見やると「どうぞどうぞ」と無言で封筒へと控えめに真っ直ぐ手を動かした。


 「こちらどうぞ〜」


 後ろで控えていたスタイル抜群女が笑顔でハサミを待ってましたと言わんばかりに差し出してくる。

 

 ⋯⋯俺が座っているせいで、見上げると絶妙な角度で柄物が視界にチラチラ映りこんでくる。


 ギリギリだしそれもうほぼ駄目だろ。

 なんで呼んだ?


 仕事じゃなかったらうちに置いておきたいね。

 出来ればそっちの方向で。


 「どうも」


 切って開け、中身を見ると。


 あら不思議。

 黒いカードよぉ。


 しかも、2枚。


 なんとなくは理解したが、視線を上げて尋ねる。


 「これは?」


 「ハハッ! 約束のブツはお気に召しましたか」


 会長がそう言うと、少し空気が変だ。

 特に、後ろの三人は。


 「限度額は?」


 「勿論──ありませんよ。2枚ともね」


 即答である。

 このじいさん。

 中々"俺の性格"を理解しているようだ。


 「俺がやばい使い方をするとは思わなかったのか?」


 「ハハハッ。だからあの夜⋯⋯尋ねたのでは?

 この日本で五本の指に入る資産がありながら──危篤だと世間が知っている唯一の人間な訳ですからなぁ」


 鋭いな。じいさん。


 「中々分かってる側だと助かる」

 

 「何に使うつもりですかな? 中学生だということが本当であれば、使い道などあまりないのでは?


 せいぜいお遊びでも億は使わないでしょうに」


 やる事なんざいっぱいある。

 じいさんが金持ちってくらいしか興味がないからな。


 「⋯⋯もっと大きな遊びをするつもりだ」


 すると目を輝かせてじいさんは前のめりだ。


 「何をやるつもりですかな?」


 「ふっ、ガキのお遊びに本気になる年寄りがいますかねぇ? 居ないと思いますよ」


 適当に返したつもりだが。 

 じいさんの眼光は20前後のギラギラとした獣みたいなモノだった。


 「⋯⋯ハッハハ!本気にもなりますぞ。

 何処までこの"遊戯"に参加出来るのか分からないままですからな」

 

 一人笑うじいさんはそう言って更に続ける。


 「ウチは建設が主な事業でなものですからな。必要とあらば、すぐに連絡を」


 紙切れを渡され、すぐにしまう。


 「事業関連でなくとも、必要なモノは別途用意致しましょう。

 

 それに──私の最も優れている武器は、人⋯⋯ですからな」


 そう言ってじいさんはもたれ。


 それからは世間話と軽い質問ばかりされた。

 大体二時間もないくらいだ。


 軽い質問と言ったが、ほぼ尋問だありゃ。

 ま、と言っても、聞けば熱い男だった。


 正直、なぜあそこまで大きくなれたかは理解できた。

 あの歳でギラギラ出来るのも一種の才能だからな。

 若い頃はあれよりも凄かったんだろうよ。


 あ、最後の方だけ女達とも会話をしたが、あの冗談みたいなスタイルの子──170cm⋯⋯しかも106って言ってた。


 うん。そっかぁ。

 金は増えること間違いなしだけど、下半身の野望は大きくなるばかりだなぁ。


 雄って大変。

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