表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「だから結婚は君としただろう?」  作者: イチイ アキラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/40

11 きちんと考えた。


 それは仕返しというよりも、事実を突きつける、が正しいかもしれない。




 アンドリューたちは、きちんと考えていた。

 ホンス家のこれからを。


 ホンス伯爵家を継げるのは――血は、プリシラとリリアラに。

 その他には……――。



 考えの一つ目は。

 プリシラが婿を、アンドリュー以外の男と結婚して、ホンス家を継ぐこと。

 これが一番、彼ら以外が納得し、平穏に終わる道だった。

 アンドリューが叫べず拳を――手のひらを自ら傷つけるほど堪えても。プリシラが夜ごと涙を流しても。


 考えの二つ目は。

 一つ目と同じくアンドリューが責任をとるため、二度と触れたくないリリアラ()を連れてホンス家を出るが、プリシラもまた出て――修道院に行こうと――ホンス家を縁戚のどなたかに引き継いでもらうこと。

 それは、プリシラもまた、アンドリュー以外の男に――だったから。

 これもまた、平穏に終わる道だったろう。

 二人の純愛の末に。



 考えの三つ目。

 アンドリューもまたホンス家から出るが、縁を切り、リリアラに新たに婿を迎えるように整えること。三年間の責任を果たしたのちに。

 ――そして……。



 そうして、彼らは三つ目を選ぶことにした。


 そちらがその気なら――責任などしったことか。むしろ責任をとったアンドリューの決意を踏みにじったのはリリアラたちだ。



 アンドリューとプリシラははじめは一つ目を、決意していた。

 やはり血統は大事だから。

 プリシラはホンス家を継ぐように育てられた。それは領民たちの納めてくれている税金や領地の収益によって。

 だから、罪なき彼らに苦労は……と。


 だけど親は、妹は、そんなプリシラではなく、自分たちがこのまま引き継ぐつもりであるという。


 確かに、リリアラもホンス伯爵の血統である。継ぐ資格は――ある。


 しかし、不意に気がついた……気がついてしまった。


 プリシラを嫁に――ホンス家から出すと言う彼らに。



 こいつらに引き継がせたら、逆に領に、民に迷惑なんじゃないか? 苦労かけるんじゃないか?



 と。

 それは、そう。

 家名に泥を塗り、王家にも縁あるフェアスト公爵家にも睨まれている。

 そんな家に、先はあるかというと。

 ……どうだろう。


 はじめアンドリューがそんな屈辱的な目に遭ったことを公表するのはと、フェアスト公爵家の皆は悩んだのだが――ホンス伯爵家のプリシラ以外の理解していない様子に、やはり怒りが勝った。

 アンドリュー自身の考えの元に。



 そうして。

 ホンス伯爵家のやらかしは、今や主だった貴族には知られることとなり。

 それにどうしたって結婚式直前に相手が変更になったことなど、噂にならない方がおかしい。

 フェアスト公爵家は「どうして?」と遠回しに尋ねられると、ただ正直に、ありのまま、やられたことを話した、だけである。



「――……と、いうわけで。リリアラは姉の婚約者を寝取った阿婆擦れと、未だ皆さまのご記憶に」


 そしてアンドリューとプリシラは、ただただ、被害者、と。


「そんな女に、まともな相手が現れるか……はてさて?」


 それがアンドリューの復讐であった。


 己がそんなことをされた屈辱的な目で見られることはある。

 相談した大伯父に「そんな肉を切らせて骨を断つどころかどっちも腐るような。もうちょっと冷静になりなさいよ」と呆れられた。確かにもっと上手いやり方があったろう。それができなかったのはまた、アンドリューの未熟さだろうか。


 実際に、かわいい方の妹が相手になってよかったね、何て慰めを――理解不能に揶揄ってくるものたちもいたが。「では貴方はその一度のためにかの薬を飲めるひと、なんですね」と。次の日より、そうした話が広まり、その相手たちは婚家や己の身内からも白い目を向けられるように。

 それくらいはやり返せるようになり。

 そもそも、王家にも縁があるフェアスト公爵家の息子に、よくもそんな口を聞けたものだ。


 リリアラは三年間、ろくに社交をしていなかった。させて貰えなかった、が。

 その間に自分がまさか。自分たちがまさか。そんな風に見られているだなんて。

「な、な……」

「そんな……」

「でもまぁ、事実でしょう?」

 事実、アンドリューに薬を盛って、寝取った。


 それは変えようもない、事実。


「そしてホンス伯爵家に婿入りしたら、かの薬を飲まされる……とも、何故か噂になっていますね」

 婿入りしたら、一度の交わりのために――種馬として、とんでもない目に遭わせられる。

 そんな噂がまことしやかに、貴族の男たちの中に広まっていた。

 それはアンドリューたちが流したわけではなかったから、聞いたときには驚いたが。アンドリューとマリスは……まぁ仕方ないよねと、放置している。まぁ仕方ない、仕方ない。本当かもしれないし。


「まぁ、私もホンス伯爵家には世話になりましたから」

 それは色んな意味で。

「そして貴方がたが遊んでいる間にきちんと、しておきました」


 きちんと。

 ホンス伯爵家の未来を考えて。


「伯爵家の跡取りを決めておきました」


 アンドリューの左手の人差し指にはめられた黄金造りの指輪がきらりと光る。

 それは王家より与えられている、ホンス伯爵家の家紋の印章が彫られた指輪だった。



 ――それは、プリシラより正式に譲られたもの。




 三年前に何かしてましたね、と。

 印章付の指輪は、このお話では指輪型の判子とでもイメージしてください。はんこポチポチ。


 今度は家族の体調悪くて…ぼちぼち…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ