十七 四十六人斬り その四
「そこの着流し君、ちょっと良いかな…………ヒーホォォォォゥッッッッッ!」
濃厚ガトーショ●ラをスクラッチする日畏怖が、チェキラチェキラとソーダ之助に声をかけた。
「えっ、あっ、はい。チョキラッッッッッ!」
「YO!無理に合わせなくて良いYO!あのスコヴィル臭いのブッ殺さないと、観念世界消えないんでヨ☆ロ☆シ☆クッッッッッ!ウェーイッッッッッ!」
「「「「「ウェーイッッッッッ!」」」」」
「うえ~い……やっぱそうか。だがなぁ……」
ソーダ之助はため息をついた。どう考えても残っている元スコヴィル藩士は……野比のび太より弱い。
「のび太さん……比較対照に出してごめんなさい」
謝罪はした。コンプライアンス的には……恐らく安心だろう。
「ここからが良いとこだZE!」
「「「「「ウェーイッッッッッ!」」」」」
チェキラチェキラうるさいの以外、全く悪い噂を聞かないチェキラ藩の人間だが、結構たいがいじゃないのかとソーダ之助は思った。
ーーそこのお前、俺らに憧れるな
「「「「「ヒィィィィィ」」」」」
チラリと見ただけで悲鳴の大合唱。
彼岸の島の鼠のが……今生き残る元スコヴィル藩士よりも勇敢だ。だってユ●ポンだけは守るんだぜ。
「弱い……弱過ぎる」
少し本気を出せば秒単位で終わるだろう。しかし。
ーー拳をほどけ、妬むな、辛いなら血みどろの小石を憎め
「おい、お前らああああああああああああッッッッッ!わかってんのかああああああああああッッッッッ!」
あまりにも弱過ぎて、逆にソーダ之助の方が耐えられないッッッッッ!
「「「「「降伏しますッッッッッ!」」」」」
「そうじゃねえだろッッッッッ!このクソラノベのタグにはなぁッッッッッ!『チャンバラ』って付いてんだよッッッッッ!」
そうなのだ。
ソーダ之助の言う通り、このクソラノベの大ジャンルは『その他』なのだが、タグに『チャンバラ』とあるのだ。
ーーそうだ、お前に愛と希望そして富を見せびらかす隣人は
「改心しろとは言わねえッッッッッ!」
絶対無理だろう。
「ハバネロ郎殿とちょっとしかチャンバラしていないんだぞッッッッッ!このままじゃ炎上するだろうがッッッッッ!せめて無駄な抵抗くらいしてくれええええええええッッッッッ!」
良いぞッッッッッ!もっと言えッッッッッ!
「「「「「無理ですッッッッッ!降伏しますッッッッッ!命だけはッッッッッ!」」」」」
ーー間違いなく心が渇いていて誰かを貶めなければ安心できないんだ
「どう考えても切腹は免れねえだろうがッッッッッ!」
「「「「「助けてぇぇぇぇぇ!わたくちたちはなにも悪いことしていませんッッッッッ!」」」」」
「嘘をつくなッッッッッ!」
「「「「「生意気な一般人に気合を入れたり、付け届けに根性入れさせたくらいしか罪悪感を感じる事はしていませんッッッッッ!正直、自分でも厳しい事言いましたが、心を鬼にして堪えましたッッッッッ!『殴る方の拳が痛い』のを堪えましたッッッッッ!落ち着いて考えると……罪悪感、全く無いわッッッッッ!わたくしたちは世界で一番善人で~すッッッッッ!」」」」」
「『悪い』どころか『おかしい』ッッッッッ!」
ーー同じだ、お前と、俺とは違うお前と同じなんだよ
「「「「「『おかしい』とは何事だ若僧ッッッッッ!目上には敬意を示せッッッッッ!」」」」」
「なんでこの立場で逆ギレできるんだよッッッッッ!」
ーー血で血を洗って生きて来た俺とは違う
「「「「「ヒィィィィィッッッッッ!」」」」」
「反論されたくらいでビビってんじゃねえッッッッッ!」
ーーお前たちは同じ仲間だ、友達でいてやれ
「もうアレだ。最低限チャンバラできるように鍛えっからよ……とりあえず一列に並べ」
「「「「「えっ、この状況で?」」」」」
「死ぬか、それとも鍛えるか選べ」
「アイタタタタ……すみません、盲腸です。病気なんで見逃してください」
「なんか痔が痛いんで……小石川の療養所に行って来ます」
「わたくしめは仕事のし過ぎで、どうにも目が悪くて……きっと他の方にぶつかったりして迷惑かかると思うんで、遠慮します」
「おで……あたま……わるい……むず、かしい、こと、わか、らない。なので無理です」
「どうにも運が悪くてねぇ~ガチャでクリームソーダ当たらねぇし。ちょっとオジサンにはムリかなぁ。アハハハハハハハハハハ……」
ーー友達だと信じて良いんだ
「三十五匹」
ーーいつか裏切りにあっても
「三十六匹」
ーー友達でいた事は無くならない
「三十七匹」
ーー友達がいなきゃ信用は得られないんだ
「三十八匹」
「並びますッッッッッ!並ばせてくださいッッッッッ!」
ーーそこのお前、俺に憧れるな
「素直に並べば良いんだよ……たくよぉ……」
「「「「「申し訳ありませんでしたッッッッッ!」」」」」
「まずは、歯を食い縛れや」
「「「「「は?」」」」」
「『は?』じゃねえんだよッッッッッ!てめえらの大好きな気合を入れてやるんだよッッッッッ!」
ーー心の中に渦巻く憎しみを押さえ付けて作り笑いをするのと
クリーム山の家に生まれた者は、不思議な事に体力に優れる。たいして鍛えなくても人類最強クラスのスペックを得るのだ。ソーダ之助に限ってはちゃんと鍛えています。
ーー心のままにウゼェ奴らを片っ端から殺して行くのはーー何もかも全くの別物
「オラァッッッッッ!」
音速を越えたビンタが命中ゥッッッッッ!
パァンッッッッッ!
ーー辛いなら血みどろの小石みてぇな俺を憎め
鎧武者の頭部が汚い花火になって、周囲に赤い染みを残した。
「……………………三十九匹」
サクッ。
「「「「「鬼かッッッッッ!」」」」」
「うるせえッッッッッ!『殴る方の拳が痛い』んだろうがあああああああッッッッッ!」
「「「「「おたすけえええええッッッッッ!」」」」」
「四十匹、四十一匹、四十二匹、四十三匹、四十四匹」
ーーメケメケメケメケメケメケ……
「くそがッッッッッ!着流しィィィィィッッッッッ!やってやんよッッッッッ!ブッ殺す、いやブッ殺したぁぁぁぁぁッッッッッ!」
残り二人の片割れが覚悟をキメ、刀を上段に掲げソーダ之助に特攻……したが。
ドテッ。
「がはっ」
転んで……その弾みで……刃が喉を貫く。
「嘘だろう……酷過ぎるぞ」
血の花が咲き乱れる中でのたうつ四十五人目を憐れんだソーダ之助。
「…………………………四十五匹。スコヴィルの若者は何でクーデター起こさなかったんだろう?」
いよいよ残りは一人。
元スコヴィル藩を更正できるアイディア、ありませんか~?
(注意 本当にアイディアを出してもらっても、ストーリーに一切反映されません。あしからず)




