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十六 四十六人斬り その三

ここまで書いて思ったんですが、

若い世代は我々の世代を……

ーー昨日、刃、競り合って響き


「わーれーわーれーはー、わーかーもーのーのー」


 ドンと太鼓が鳴る。いったいどこから持ち出したのだろう?


「「「「「若者のぉぉぉぉぉッッッッッ!」」」」」


 他の鎧武者も合わせて叫ぶ。近所迷惑だ。


「ぼーうーりょーくーを、ゆーるーさーないー」


 ドンと太鼓が鳴る。


「「「「「許さなぁぁぁぁぁいッッッッッ!」」」」」


「えっ?えっ?」


 鎧武者たちの市民運動に、ソーダ之助はどう反応して良いのかわからなかった。






ーー非日常が日常の戦場で、股、踏み砕いて


「こちら、私どもが集めた署名です。残り二十六名が命をかけて署名しましたッッッッッ!」


 鎧武者の一人の市民運動家が、いつの間にか集めた署名をソーダ之助に差し出した。


「どうか受け取ってくださいッッッッッ!」


「「「「「受け取れぇぇぇぇぇッッッッッ!」」」」」


 署名に連なる名前は無駄に達筆だ。


「受け取らなきゃダメか?」


「私どもの平和への想いッッッッッ!軽んじないでいただきたいッッッッッ!」


「「「「「軽んじるなァァァァァッッッッッ!」」」」」


「えー。いや、お前らのどこに平和要素が?」






ーー喚いた虜囚、嘲笑った


「きーいーてーくーだーさぁーいーみーなーさぁーんッッッッッ!こーのーわーかーもーのーはッッッッッ!ぜーんーりょーうーなーわーたーしーどーもーがッッッッッ!チェーキーラーはーんーのーちょーうーしーにーのっーたッッッッッ!せーけーんーしーらーずーにッッッッッ!よーのーなーかーのールールーをーおーしーえーてーさーしーあーげーるーとーいーうッッッッッ!とーうーとーいーこーうーいーをーぼーうーりょーくーでーぼーうーがーいーしーよーうーとーしーてーいーまーすッッッッッ!」


「「「「「世間知らずのガキは大人しく私刑を受けろおおおおおッッッッッ!」」」」」


「ええ……」






ーー殴って、殴って、殴って、殴って、皆で嘲笑った


「ぼうりょくぅぅぅぅはんたぁあいッッッッッ!」


「「「「「暴力を振るう奴は皆殺しだあああああッッッッッ!」」」」」


「……やってみろ」


 ソーダ之助が一歩前に出た。その背後でプロレスラーは跳躍。何かを掴んでパイルドライバーッッッッッ!






ーーなのに俺は、俺たちは、お天道様敵に回して、勝ってしまって


「来ないでくださいッッッッッ!暴力反対ッッッッッ!」


「「「「「それ以上近付いたら、ボコボコにしてやんぞッッッッッ!」」」」」


「やってみろ」


 ソーダ之助は署名が書かれた紙を踏みつけ進む。






ーー生き延びて謳歌してしまって、ずっと目を逸らして見ぬ振りして


「おフランスの偉い人に訴えてやるザンスッッッッッ!」


 市民運動家はおフランスかぶれらしい。


「「「「「絶対に訴えてやるッッッッッ!それが嫌なら私刑を受けろッッッッッ!」」」」」


 おフランスは、フランスとは一切関係ありません。ご了承ください。






ーー生まれた子らは、争い、憎しみ、闇を知らず


「二十一匹、二十二匹、二十三匹、二十四匹、二十五匹……あれ?合ってるよな」


「ヒィィィィィッッッッッザンスッッッッッ!」


「ちょっと数えるから待ってろ」






ーー上手く大人になれて


「許してザンスゥ……ヒッ、腰が抜けて……」


「ええと、やっぱこれで二十六匹だな。二十六匹っと」







ーー社会は平和になって


「話し合いましょうッッッッッ!」


 ソーダ之助の次の標的になった鎧武者が刀を捨てた。


「戦うつもりがねえなら見逃してやる。奉行所の者が来たら、大人しくお縄につけ」






ーー殺し合いとか、豚みたいな犬死にとか、かつての地獄の話を聴きたがる


「えっ、あなた様のお力でか弱いわたしを無罪放免にしてくれるのでは?」


「夜中とは言え、これだけの大騒ぎだ」


 観念世界は別世界では無い。一体何事か、と近隣の住民は雨戸の隙間から覗いて、そこいらにある適当な何かをスクラッチしてチェキラしている。


「お前らは大人として、騒ぎの責任を取らなければならない。違うか?」


「ではあなた様が大人として責任を取る……と言う事で、一件落着ですね」






ーーYO!、YO!、YO!、YO!、YO!……


「お前、ふざけてんのか?」


「か弱いわたしはねぇ、生まれた郷土に人生を捧げて、スコヴィルを発展させたんですッッッッッ!」





ーーYO!、YO!、YO!、YO!、YO!……


「ふざけてるよな?」


「ずっと真面目に生きて来たんだッッッッッ!」






ーーYO!、YO!、YO!、YO!、YO!……


「ふざけてるんだな?」


「ちょっとくらいハメを外したって良いじゃないかッッッッッ!ホンのちょっとだッッッッッ!確かにチェキラの世間知らずは何人かあの世に勝ち逃げした。……ちょっとふざけたくらいでどうしたってんだよッッッッッ!」






ーーチェキラ!


「世間知らずのチェキラ野郎の代わりなんて、いくらでも……」


「二十七匹」






ーーだから俺たちの殿様は、もっと素晴らしい事をしようぜって先頭に立って汗水たらして


「おい若僧ッッッッッ!こんな事してただで済むと思ってるのでおじゃるか?」


「…………思ってるよ」


 またまた涌いてきた新たな鎧武者に、ソーダ之助はうんざりして言った。






ーーでも俺たちはどうしても着いて行けなくて、トシなんだと自分を蔑んで


「マロたちの背後には……味方がたくさんいるでおじゃるッッッッッ!」


 ソーダ之助は、自称マロの背後を見る。


「……ハーゲ●ダッツ」






ーー閉じたこの口、かたくなに他者を拒むようになった


 確かに自称マロの背後には、観念世界に生み出された巨大なハー●ンダッツが土嚢のように積まれているが。


「そう言う意味では無いでおじゃるッッッッッ!マロが一声かければ、日本全国津々浦々から無数の公家がお歯黒塗ってわんさか集まって来るでおじゃるッッッッッ!」


「ゼヒ、ミテ、ミタイデース」


「そうだな。異郷のプロレスラーにぜひ見せてやってくれ」


「コドモタチー、ヨロコヴィマース」






ーー役に立たないって、若者は冷めた目で見る始末


「ふざけるなァァァァァッッッッッ!公家を舐めるなあああああッッッッッ!」


「良いから呼べよ」


「ヨンデクダスァーイ」






ーー『殺してやりたい』血みどろの小石、見下すような視線で


「二十八匹……」






ーー嘲笑えるが、それで良いじゃないか?


「この南蛮人がァァァァァッッッッッ!」


 ソーダ之助には敵わぬと見た鎧武者がプロレスラーに襲いかかるが。


「HEY!ソーダノスケッッッッッ!ツープラトン、イクゼッッッッッ!」


「お、おーけー、掘った芋弄るなッッッッッ!」


 気高いプロレスラーは跳躍し、見えない何かを掴んで空へ向かってパイルドライバーッッッッッ!


 ソーダ之助と鎧武者は並んで星になったプロレスラーを見上げる。


「いや、これ、どうしろと……………………二十九匹」






ーー俺らが蔑まれれば


「マジで疲れて来たからさ……もう一斉にかかって来てくんない?」


 精神的な疲れで汗だくのソーダ之助は、チェ●オを食べた。


「バカな事を言うなッッッッッ!年長者を敬えッッッッッ!」


「「「「「そうだ、そうだッッッッッ!」」」」」






ーー奪う事しかしなかった俺らが蔑まれれば


「ンガングッ。いや……そんなに年長者年長者言うなら……口ばっかじゃなくて意地とか見せてくれよ」


「うるさぁぁぁぁぁいッッッッッ!ここから出せッッッッッ!」


「「「「「そうだ、そうだッッッッッ!」」」」」






ーー子らは誰かから奪おうとしないんじゃないか?


「もう面倒臭くなってきた……アイスとラッパーが邪魔だしな。ここから出るか」


「「「「「やったああああああああああ」」」」」


「(まあ一人ずつ追いかけるがな)……あれ?」


「「「「「おい!速く出せッッッッッ!アイスもラップもうんざりなんだッッッッッ!」」」」」


「どうやって出るんだ?」


「「「「「……」」」」」


「……」


「「「「「ふざけんなあああああああああッッッッッ!」」」」」


「三十匹、三十一匹、三十二匹、三十三匹、三十四匹……」

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